蔵前バイオ通信 第69号 2021年9月15日

メールマガジン蔵前バイオ通信 第69号をお届けします。

2021年9月に入りました。暑かったり、長雨が降ったりと天候不順の8月が終わり私たちも活動を本格的に始めました。相変わらずコロナ禍の収束は見えませんが、新規感染者数は減少傾向にあります。緊急事態であることは宣言のあるなしにかかわらず変わらないと思います。しっかりとした感染症対策を講じながら活動を進めることに変わりはありません。リモート会議が主体ですが、その会議の運営もスムーズに進むようになり、活発な活動が行われています。
本号でも私たちの活動による、自然エネルギー利用の有益な情報をご案内いたします。ご利用ください。また、私たちの活動に興味をお持ちの方々の参加をお願いします。

*******************目次 ***************************

  1. 活動トピックス(編集部)
  2. 技術情報検討会(吉川)
  3. 事業化検討会(岸本)
  4. アルジェ研究会(廣谷)
  5. 熱エネルギー研究会(進藤)
  6. 林業システム研究会(篠崎)
  7. Kシステム開発プロジェクト(米谷)
  8. 竹林プロジェクト(篠崎)
  9. ホームページによる情報発信(編集部)

1.活動トピックス(編集部)
●9月例会後に勉強会を開催
講師 岸本氏 (K-BETS理事)
演題「土偶を読む」晶文社 竹倉史人著 の紹介
筆者は考古学の専門家ではありませんが、縄文時代に制作され現在国宝や重要文化財に指定されている土偶が何を表象しているかを、従来の説(地母神説、安産祈願説等)とは全く異なる立場で土偶を解説しています。著者は、土偶は縄文人が食用としていたクリ・トチノミ・サトイモなどの食用植物の精霊を表象していると主張しています。例えば“ハート形土偶”の顔はオニグルミの断面によく似ていることを形状的に、またオニグルミの植生分布まで調査して結論付けています。著者の説は現時点では考古学会などでは認められてはいないようですが、興味深い主張で、活発な質疑が行われました。

2.技術情報検討会(吉川)
地熱発電は太陽光や風力のように天候に左右されることのない安定な電力であり、年間稼働率も70%を超えています。熱源コストが安いので運転寿命が長いほど発電コストは安くなります。
日本は環太平洋火山帯の中にあり、地熱の潜在資源量は世界第3位と言われていますが、発電への利用率は諸外国に比べて大幅に遅れているのが実情です。理由として開発費、建設費の高さが発電コスト増に繋がることが挙げられています。もう少し考えてみると、山間部が多いとか熱源となる井戸を掘りあてるリスクが問題とされていますが、これらについては諸外国と大差があるようには思えません。太陽光や風力に比べると差は小さい方ではないでしょうか。むしろ国内の諸規制による縛りやそれに関連するコスト増が開発意欲を削いでいるのではないでしょうか。政府はこれらの事情を概ね認識しており、規制緩和や地熱関連の予算増の動きが活発になっています。地熱調査の助成金も着実に増えています。今後の動向に注目したいと思っています。

3.事業化検討会(岸本)
1.ポーラス竹炭の屋上緑化の土壌改良資材としての千葉工業大学石原准教授との基礎試験結果が、建築学会において報告されました。昨年に引き続き2回目の報告です。このような基礎試験の積み重ねにより、ポーラス竹炭が今後屋上緑化資材として使用されることが期待されます。
2.Kシステムは間伐材の搬出に優れていることは、今までの試験で確認されていますが、Kシステムの新たな用途開発のアイディアが出されており、事業推進検討会で情報提供・議論が行われました。①林業関係では地拵えや苗木搬送用途、②災害関係ではガレキの処理用途、③その他ダムに堆積している流木の処理用途、などです。これらの用途開発に今後ともアイディアの創出や検討を進めていきます。

4.アルジェ研究会 ―水素車の勧め(廣谷)
菅首相は2050年にCO2をゼロに、そして2035年には全ての新車販売を電動車にするという方針を打ち出しました。ガソリン車などが、街の中にCO2をまき散らされるのを危惧したのでしょう。しかし、EVに関してはライフサイクルでの評価も考慮しなければなりません。EVが増えれば電力必要量がそれだけ大きくなり、その電力は、現在は、日本は80%化石燃料、中国は70%石炭で発電していて、発電所ではCO2を排出しています。EUの電力は、50%以上は再エネなどですが、それ以外ではCO2を出す石炭等の様な物もあります。また、EVに使われる大型リチュウム電池を造る時大量の電力を消費します。EVの電力は再エネなどを増やし可能な限りCO2フリーの電気を供給する事が今後の課題となります。
一方、水素をエネルギー源とする車については、日本ではトヨタ、マツダが水素エンジンを開発しています。これはCO2でなくH2Oのみ排出します。水素は現在、石油から造られるのが多いのですが、今後は太陽電池等のCO2フリーの方法で製造量を増やすことが必要です。

5.熱エネルギー研究会(進藤)
2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、岡山県真庭市が地元資源を活かし、バイオマス発電で地域のエネルギーを賄う分散型電源の街に変容した事例を検討しました。真庭市は、豊富な森林資源があり、CLTなどの建材生産でも知られていますが、エネルギー自給を目指し、バイオマス発電所(出力1万kW)を2015年に稼働させ、市役所や小中学校などの公共施設や民間施設に電気を供給して、自給率は20年度で32%に達しています。燃料は、山林に放置されていた未利用材のほか、産業廃棄物として処理されていた製材端材、樹皮や枝葉などもチップ化して使用しています。発電の年間売上高約23億円のうち約14億円は燃料購入費として木材生産業者に還元されています。更に森林の持続性を維持すべく、山林所有者に植林のために搬送1トン当たり500円を別途支給しています。この様に、木質資源を全て有効活用する仕組みをつくることで地産地消のエネルギー自給を可能にし、地元に経済効果をもたらしています。

6.林業システム研究会(篠崎)
(1)6月25日(金)の生態工学会年次大会において、独自のオーガナイズドセッションを形成し、合計8件の発表を行いました。発表はアフリカからも行い、初めての海外からの発表だと注目されました。発表はオンライン形式で行われました。この発表により蔵前バイオエネルギーの活動をPRして、世の中に警鐘を鳴らしました。年次大会発表論文集を購入しました。K-BETSの活動成果を来年も発表したいと考えています。
(2)今年も12月初旬に東京ビッグサイト東ホールで開催されるエコプロダクツ展に出展します。オンライン説明会に参加しました。テーマはKシステム開発プロジェクトと竹林プロジェクトの予定です。
(3)SDGsに叶う企業やNPO法人と連携して活動を行います。連携を御希望の方は蔵前バイオエネルギーのホームページ(下記)を通して一声おかけ下されば幸いです。

7.Kシステム開発プロジェクト(米谷)
 秩父での作業では急斜面での有用性が確認されましたが課題も明確になりました。今後のKシステムの普及のためには課題解決の開発が必要です。7月に林野庁の技術開発の支援内容を確認してきました。「現在スマート林業を対象としたAIやITを使った自動化や無人化の技術開発が対象で、Kシステムは県や市町村の支援対象」とのことでした。
現在、最重要課題の牽引時に障害物を避けるための特殊滑車を試作することにして設計中で、模型実験や3DCADを使って完成度の高い試作を目指しています。
また、集材に、Kシステムを使ってみたいという問い合わせが増えてきており、これらに的確に対応していく予定です。

8.竹林プロジェクト(篠崎)
(1)バイオ炭のメリットを世界に発信する最初のプロジェクト提案はJICAが不採択となりましたが、11月締め切りの2021年度募集に再挑戦する予定です。
(2)昨年に続いて建築学会に千葉工業大学との共同研究成果をオンライン発表しました。タイトル名は「屋上緑化用竹炭混合土壌の含水率変化と繰り返しの雨水排水特性」です。これを基にしてポーラス竹炭の屋上緑化への適用をPRして行きたいと考えています。(3)竹炭や竹粉の商品開発を鋭意進めています。そのうちに紹介いたします。

9.ホームページによる情報発信(編集部)
主に会員吉澤有介が要約した一般図書。会員の評論・提言・主張および情報紹介です。
サロンの話題
「コーヒーかすブリケットで淹れたコーヒーを飲む」 2021年9月11日 宮地利彦
「食べられないために」ギルバート・ウオルドバウアー著  2021年9月8日 吉澤有介
「山を買う」福崎 剛著 2021年9月1日 吉澤有介
「人生のことはすべて山に学んだ」沢野ひとし著 2021年8月27日 吉澤有介
「蝶はささやく」ウェンデイ・ウィリアムズ著、的場知之訳、2021年8月25日 吉澤有介
「生態学者の目のツケドコロ」伊勢武史著、2021年8月20日 吉澤有介
「私の顔はどうしてこうなのか」溝口優司著 2021年8月15日 吉澤有介
[多様性]-人と森のサステイナブルな関係-池田憲昭著 2021年8月12日吉澤有介
「江戸町奉行所物語」堤淳一著、2021年8月12日 吉澤有介
「自然という幻想」エマ・マリス著 2021年7月18日 吉澤有介
「ウンチ化石学入門」泉賢太郎著  2021年6月29日 吉澤有介
「民族世界地図」浅井信雄著 2021年6月12日 吉澤有介

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