蔵前バイオ通信 第67号 2021年3月15日
メールマガジン蔵前バイオ通信 第67号をお届けします。
2021年もすでに3月となり、気温が上がり春の到来を感じる季節になってまいりました。そんな中、緊急事態宣言が延長され、再延長の可能性もあります。まだまだ油断は禁物です。高齢者が多い私たちの活動もしっかりとして感染症対策を講じながら活発に進めています。
本号でも私たちの活動による、自然エネルギー利用の有益な情報をご案内いたします。ご利用ください。また、私たちの活動に興味をお持ちの方々の参加をお願いします。
*******************目次 ***************************
- 活動トピックス(編集部)
- 技術情報検討会(吉川)
- 事業化検討会(岸本)
- アルジェ研究会(廣谷)
- 熱エネルギー研究会(進藤)
- 林業システム研究会(篠崎)
- Kシステム開発プロジェクト(米谷)
- 竹林プロジェクト(篠崎)
- ホームページによる情報発信(編集部)
1.活動トピックス(編集部)
●チェーン式連続集材装置による集材作業終了
埼玉県秩父市大滝で昨年10月より続けて来た作業が、2月に完了しました。長期間にわたる作業で、これまでにない大きな成果を上げることができました。
●2月例会後に勉強会を開催
講師 荒川英敏氏(蔵前バイオエネルギー 理事)
タイトル「日本の家は何故寒い」
住宅内は、全体が同じ温度に保たれていることが望ましい。しかし日本の住宅は現状では、これが達成されていないケースが多く、浴室での高齢者死亡事故の多さなどにも表れています。住宅内の温度均一化について欧米先進国の住宅と比較しながら紹介しました。
●2月、3月例会後にリモート懇親会を開催
リモート会議による懇親会に習熟してきました。気軽に情報交換が行えるようになっています。その中で、私たちの活動の在り方、活動の範囲、活動の内容など多岐にわたり、活発に意見交換を行うことができました。
2.技術情報検討会(吉川)
政府は2050年を期限とする「脱炭素」目標達成に向け、温室効果ガスの排出量に応じて企業に負担を課す「カーボンプライシング」の検討を進めており、その手段として「炭素税」「炭素国境調整措置」「排出量取引」等が示されています。そこで、「排出権取引」について考察してみました。
既に始まっている J-クレジット制度は、省エネ設備の導入や再エネの活用によるCO2の排出削減量、或いは適切な森林管理によるCO2の吸収量を、クレジットとして国が認証する制度で、認証されたクレジットの創出者(中小企業、自治体、森林保有者等)はCO2排出量削減が必要とされているクレジット購入者(企業、自治体等)とクレジットを取引する事ができます。現時点での認証実績は624万t-CO2であり、2030年迄には1375t-CO2となる見込みですが、購入側の企業のCO2排出量は、2018年にトップが9,000万t-CO2を超え、5,000万t-CO2級の企業が続いています。この差は大きく、2050年温暖化ガス排出ゼロへの道は極めて厳しいと言わざるを得ません。
3.事業化検討会(岸本)
事業推進検討会では今までにお伝えしているように多くのテーマを俎上に載せ種々議論を行っています。
例えば最近ではポーラス竹炭の機能を活かした開発については、青果物のエチレン吸収剤の商品化では単に千葉県の竹を利用することだけではなく千葉県内の事業所と連携して商品化に結びつけるアイディアや、またポーラス竹炭の室内用調湿デバイスでは、特殊加工布シートを用いてさらに機能を高めるアイディアなどが提案され議論されています。これらの検討が何とか商品化につながるよう今後とも検討を継続していきます。
その他、例えばK-BETSが法人登録している横浜での活動を展開するために、横浜市の補助制度(横浜夢ファンド等)を利用する提案がなされるなど、これらについても検討していくことになります。
4.バイオジェット燃料有力手段;成廃木材利用FT合成(廣谷)
EUの委員会は2020年にジェット燃料10%をバイオジェット燃料(BJF)に変え、2030年には50%BJFに変える事に決めました。米国、アジアもそれに従おうとしています。20ヶ国は製造販売可能であり、アジアでも中国、インドは可能です。しかし日本はご承知のように製造販売現在は出来ずアジアの遅れた国となっています。
BJFは5種類の造り方があり、そのうち、FT合成はバイオをガス化し触媒と高圧高温で油を造るものです。事業化には競争力のあるコストの達成が必須で、そのためには安い大量のバイオがなければなりません。
米国では森林に放置された安い森林廃材をそのバイオとして使用することで成功しています。森林廃材は集めるシステムが出来ているので低コストです。Red Rock Biofuels(オレゴン州)は森林廃材をはじめ巾広い木質バイオマスを原料としていると言います。森林廃材で6万㎘(2016年)BJFを製造し、コストは102円/ℓです。The Bio Tfuels(EU)は仏5社、独1社の共同プロジェクトで森林廃材を原料としFT合成を行っています。製造は20万t(2020年)であり、武器は安さです。
日本森林には廃材があり、ダムには廃木材が集まっています。我々はチェーン式連続集材装置K-システムを開発しまた。有効に活用するナイスチャンスとなる可能性があります。
5.熱エネルギー研究会(進藤)
愛媛県内子町の地域密着型のバイオマス発電事業が、令和2年度の新エネルギー財団会長賞(地域共生部門)を受賞したとの報道がありました。事業は地域の未利用材によるペレット製造および熱電併給ガス化発電ユニット6基と発生熱を利用したバイナリ発電で約1MWを四国電力へ売電しFIT収入を得ています。約2年間の事業継続により地域活性化への貢献が評価された様です。この事業は、発電事業を通して、地元林業事業体からの間伐材等の搬出利用を促進し、林業の活性化・森林整備の推進に寄与していること、および木質ペレット製造に係る雇用創出等、地域の活性化へ取り組んでいることです。町の約8割を占める森林資源を有効活用する為に、発電事業による収入を林業および地元の活性化に還元している事例と言えます。
6.林業システム研究会(篠崎)
・2020年度を振り返って
①コロナ禍は必ずしも停滞ではなく、Zoom meeting活用で活動は活発に行われました。
②チェーン式連続集材装置の実用化が目前に見えてきました。
③ポーラス竹炭の技術を海外に広める機会が現れました。
④すべてに優先する安全確保の体制つくりを見直しました。
⑤「K-システムの歌」、「ポーラス竹炭の歌」という応援歌が生まれました
・2021年度の目標
①チェーン式連続集材装置の実用化達成
②ポーラス竹炭製造用大型炭化炉の販売開始とポーラス竹炭の商品開発
③海外支援の開始
④安全体制の見直し
7.Kシステム開発プロジェクト(米谷)
Kシステムを使用した秩父大滝での伐倒集材作業は2021年2月をもって終了しました。傾斜度40度を超える急斜面で、胸高径40㎝を超える大径木が多いなか伐倒と集材を同時進行で行う列状間伐という大変な作業でした。伐倒本数約500本、集材材積800m3の実績を上げることができました。
今回の作業では負荷の大きさからシステム構成機器に高い耐久性が要求されました。それに対して耐久性およびその信頼性の向上策を迅速に実施いたしました。また、伐倒作業でチェーンを使って滑落を防止しながら倒す方向をコントロールする方法、単純な牽引では引き揚げ困難な状況でも滑車でチェーンを動かして引き揚げる方法など新しいKシステムの使い方も生まれました。そして、「他の方法では出せないところでもKシステムを使えば出せる」とのコメントもいただいています。今回の現場での知見を活かしつつ、次の準備を進めてまいります。文末写真を参照ください。
8.竹林プロジェクト(篠崎)
・2020年度を振り返って
本プロジェクトの中に次の二つのサブプロジェクトを策定しました。
①Uプロ:飛び入り的に発生した本件にかなり大きいマンパワーを割きました。申請が公に認められれば、海外支援活動が生まれる最初の機会になります。K-BETSの技術が海外支援に役立つことになります。
②商品プロ:ポーラス竹炭の活用量はなかなか増えてきません。そこで自分たちで商品を開発して、ポーラス竹炭の利用を促進しようと考えました。今後の活動に期待しています。
③その他、次の事項に進展がありました。
・エコメッセ2020inちばにオンライン出展中で、高い評価を獲得しています。
・DECA2の開発を完了、今後は早く商流を確定してPR販売にこぎつけます。
・廃熱利用発電に成功しました。
・生態工学会と日本建築学会の年次大会に成果を発表しました。
(2)2021年度の目標
①前年度案件を継続し、発展させます。
②PR活動の充実を種々の場所で行います。
・学会発表 ・講演会の独自開催
・NPOとの連携拡大 ・活動資金の調達
9.ホームページによる情報発信(編集部)
主に会員吉澤有介が要約した一般図書。会員の評論・提言・主張および情報紹介です。
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特定非営利活動法人 蔵前バイオエネルギー(略称 K-BETS)(https://www.kuramae-bioenergy.jp/)
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秩父大滝でのチェーン式連続集材装置による間伐作業