蔵前バイオ通信 第70号 2021年11月15日

メールマガジン蔵前バイオ通信 第70号をお届けします。

暑かったり寒かったり変化が多かった10月が終わり、冬の到来を感じさせる11月に入りました。コロナの新規感染者数が劇的に低下し、世の中は平穏を取り戻しつつあります。この状況の下で、私たちは、コロナ禍再来の可能性を見据えて、緊張感を維持しながら、当面はリモート会議スタイルの活動です。しかし、2021年エコプロ展出展など、徐々に現場へ出向く活動も拡大してまいります。
本号でも私たちの活動による、自然エネルギー利用の有益な情報をご案内いたします。ご利用ください。また、私たちの活動に興味をお持ちの方々の参加をお願いします。

*******************目次 ***************************
1.活動トピックス(編集部)
2.技術情報検討会(吉川)
3.事業化検討会(岸本)
4.熱エネルギー研究会(進藤)
5.林業システム研究会(篠崎)
6.Kシステム開発プロジェクト(米谷)
7.竹林プロジェクト(篠崎)
8.ホームページによる情報発信(編集部)

1.活動トピックス(編集部)
●10月例会後に勉強会を開催
「森林・林業に関する政策」 講師 米谷氏 (K-BETS理事長)
①令和3年6月に改訂された「森林・林業基本計画」の概要
平成28年5月に策定された前計画「は衰退してきた林業・木材産業の成長産業化を目的に、大規模化、機械化、間伐・路網整備、木材需要の創出などの推進でしたが、大規模化は未だ途上、機械化、間伐・路網整備は進み原木生産量は増加しました、しかし再造林は進まず、林業の経営基盤の改善は見られません。また、公共施設の国産材利用は増加するも、大規模建築用のCLTの実績は上がっていません。
これに対し、今年改訂された「森林・林業基本計画」では、「グリーン成長」と名づけて、「林業・木材産業の持続性を高めながら成長発展させて2050カーボンニュートラルを見据えた豊かな社会経済を目指す」とし、ドローンや自動化などのイノベーション技術、森林環境譲与税などを活用して実現する、となっています。
②林野庁令和3年度予算と令和4年度概算要求  Kシステムとの関連
改訂された「森林・林業基本法」に基づき、令和3年度の「林業成長産業化総合対策」の名称が令和4年度では「森林・林業・木材産業グリーン成長政策」に変更になりました。予算額としては123億円から224億円に増額しています。主な増額項目は、「レーザー計測等による森林資源デジタル管理の推進」「早生樹等の種苗生産推進」「ドローン等を使った先進的造林技術推進」などです。林業機械については変わらず、対象事業は「自動集材機」「自動走行フォワーダ」「リモコン式伐倒作業車」などの実証事業となっています。
我々が開発しているKシステムにおおいに関係している「戦略的技術開発事業」は無人化・自動化など最先端の開発を対象としているので、Kシステムのような狭い所で有効なベーシックな技術については国ではなく、県や市町村による支援の対象であるとのことです。我々は日本の森林・林業に最適な、ベーシックな技術こそ林業の成長産業化に要求されていると考えています。
③森林環境譲与税の使用状況
令和元年開始された森林環境譲与税の、全都道府県、市町村の使用状況が公表されました。秩父市のように積極的に使用している自治体がある中、検討中のところが多く、50年100年先に持続可能な森林・林業の育成に役立てるような活動に使用されることが望まれています。
2.技術情報検討会(吉川)
英国グラスゴーで開催されたCOP26で、日本は脱炭素社会の実現に向けて一段と高い決意と約束を迫られました。しかしながら、日本の目標設定は国際的には高い評価を得る事は出来なかったようです。しかも、この目標すら達成は極めて難しく厳しい現実を見据えた具体的な政策の実施が急務である事は言うまでもありません。
このような状況の下で技術情報検討会では、前回取り上げた地熱資源の活用の追加検討に加え、今回は森林の荒廃への対応に関する情報を取り上げました。
日本の人工林は木材の産業競争力が低下し続けているため、全体として伐採や再造林が遅れたままで高齢化が進んでいます。このような手入れされない放置林は台風などの災害に弱い上に、国際的には二酸化炭素の吸収源としても認められないのです。林業の再生は一筋縄ではいきません。伐採や植林やその後の手入れは数十年単位の事業です。単に木材資源の活用だけでなく、防災や脱炭素といった社会的有用性の視点からSDGsの一環として取り上げる必要性を強調したいと思います。

3.事業化検討会(岸本)
最近行われた事業推進検討会で討議された内容を一部紹介します。
・ 横浜夢ファンド申請の検討 K-BETSが法人登録を行っている横浜市のNPO助成制度「横浜夢ファンド」への申請を目的として 現在小メンバーで調査・検討を行っています。候補として挙がっているテーマは、家庭生ごみ・食品ロスの 削減、家庭生ごみの水分削減、家庭から出される剪定枝等の有効利用(剪定枝を資源として現在の ポリ袋を植物由来のエコ袋化するなど)となっています。今後さらに精力的に調査・検討を進めます。
・ ポーラス竹炭の開発について、袋に入れたポーラス竹炭は、果物や野菜の鮮度維持に効果がありますが、最近 K-BETS 会員の試験で風呂に入った時の入浴感向上の効果や、浴湯の清浄化の効果もあるのではとの声のある一方、竹炭粉が浴槽に流れ出る 現象やバスシステムへの影響も調査すべきなど、侃侃諤諤の議論がなされています。

4.熱エネルギー研究会(進藤)
都市部の廃棄物である街路樹や公園の樹木などから発生した剪定材を燃料として再利用し、バイオマス発電により電力を供給可能とする事業が実施されています。その事例として、茅ヶ崎市のバイオマス発電所を見学してきました。
燃料は茅ヶ崎他、近郊の鎌倉、藤沢、大磯などの庭木や公園・街路樹からの剪定枝・伐採木が主体で、自治体関係者や造園業者などが発電所に持ち込む仕組みです。発電出力は約2MWの小規模ですが、燃料は隣接する工場でチップ化し、ストーカボイラー燃焼による蒸気タービン発電です。この様な剪定材を主な燃料とした発電所は横須賀市他にもあり、これまで廃棄物として焼却処分されていた資源を有効活用する都市型バイオマス・エネルギー供給と言えます。

5.林業システム研究会(篠崎)
(1)今年も12月8日~10日に東京ビッグサイト東ホールで開催されるエコプロダクツ展に出展します。ブースはF-10です。テーマはKシステム開発プロジェクトと竹林プロジェクトの予定です。その準備のために、数人による準備委員会を立ち上げ、Zoom meetingで内容や方法を検討しています。出展者紹介の内容を久しぶりに改定して、外国人たちのブース訪問者にも喜んでもらえるようにしたいと考えています。
(2)Kシステム開発プロジェクトでは前回に続きプラモデルを用いたチェーンシステムを紹介しますが、これは若人たちに随分と人気がありました。
(3)竹林プロジェクトではビデオによる開発炭化炉の紹介とポーラス竹炭製の開発商品を展示します。
(4)展示会の様子を「蔵前ジャーナル」など種々の場でPRして、会員募集を行いたいと考えています。また、連携してくれる団体や企業が現れることを期待しています。

6.Kシステム開発プロジェクト(米谷)
林野庁を訪問しKシステムを紹介し、林業機械の開発支援事業の内容について話を聞きました。これについては勉強会の内容を参照してください。
森林環境譲与材は狭くて急峻で伐採集材の採算性が悪い所を市町村が伐採・集材を実施するのに使用されるので、Kシステムを使用するのに適した森林が多いと予想され、秩父市の関係者と検討する事を進めていく予定です。
一方、様々な作業現場の状況に応じて、Kシステムを効率的に使用するための各種デバイスの開発を進めています。

7.竹林プロジェクト(篠崎)
(1)バイオ炭のメリットを世界に発信する最初のプロジェクト提案はJICAが不採択となりましたが、2022年度募集に再挑戦する予定です。
(2)建築学会に千葉工業大学建築家石原沙織准教授との共同研究成果をオンライン発表しました。タイトル名は「屋上緑化用竹炭混合土壌の含水率変化と繰り返しの雨水排水特性」です。石原先生には来年2月度の勉強会にて講演していただく予定です。これを基にしてポーラス竹炭の屋上緑化への適用をPRして行きたいと考えています。
(3)ポーラス竹炭や竹粉の商品開発を鋭意進めています。12月8日~10日のエコプロ展でその一部を紹介いたします。
(4)ボルト締結式開放型炭化炉の販売体制がまとまりました。これからは代理店からの販売が期待されます。

8.ホームページによる情報発信(編集部)
主に会員吉澤有介が要約した一般図書。会員の評論・提言・主張および情報紹介です。サロンの話題
「遊動論」柄谷行人著、文春新書2014年1月刊 2021年11月12日 吉澤有介
「宇宙が始まる前には何があったのか」ローレンス・クラウス著  2021年10月31日吉澤有介
「歴史を変えた自然災害」ルーシー・ジョーンズ著、大槻敦子訳、2021年10月14日 吉澤有介
「日本史の探偵手帳」(その2)磯田道史著 2021年9月29日 吉澤有介
「免疫革命」安保 徹著  2021年10月6日 吉澤有介
「ドラえもんを本気でつくる」大澤正彦著、PHP新書、2020年4月刊  2021年10月3日 吉澤有介
「日本史の探偵手帳」磯田道史著、文春文庫、2019年1月刊 9月29日吉澤有介
「京大式へんな生き物の授業」神川龍馬著、朝日新書、2021年3月刊 2021年9月23日 吉澤有介
「日本人だけが知らない砂漠のグローバル大国UAE」加茂佳彦著 2021年9月20日 吉澤有介
「樹木土壌学(Arboricultural Soil Science)の基礎知識」堀 大才著  2021年9月10日 吉澤有介

特定非営利活動法人 蔵前バイオエネルギー(略称 K-BETS)(https://www.kuramae-bioenergy.jp/)
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