蔵前バイオ通信 第78号 2023年3月15日

サクラの開花宣言が出て、いよいよ薫風香り春が到来しました。コロナ禍もようやく収束しつつあります。戸外での活動もできるようになってまいりましたので、私たちの活動の範囲を広げてまいりたいと思っております。

今回も、私達の活動状況と、自然エネルギー利用の有益な情報をご案内いたします。ご利用ください。また、私たちの活動に興味をお持ちの方々の参加を期待しています。ホームページより連絡ください。

*******************目次 ***************************

  1. 活動トピックス(編集部)
  2. 技術情報検討会(吉川)
  3. 事業化検討会(岸本)
  4. アルジェ研究会(廣谷)
  5. 熱エネルギー研究会(進藤)
  6. 林業システム研究会(篠崎)
  7. Kシステム開発プロジェクト(米谷)
  8. 竹林プロジェクト(篠崎)
  9. ホームページによる情報発信(編集部)

1.活動トピックス(編集部)
公開講座「水と環境」第1回を開催しました。
(1)「多摩川の水」 ~これまで と これから~
講師 伊達知見氏 建設技術コンサルタント、技術士:上下水道部門
(2)「電機技術者から見た水の半世紀」
講師 滝田正人氏  蔵前バイオエネルギー 会員
1件目は身近な多摩川の水の日常生活との関わりを、水量、水質、法制度、下水処理、今後のありかたなどについて分かり易い講演でした。2件目は、1件目と関連し、水の扱いを技術面で支えた通信、制御、監視、細かい制御ができるインバーター機器類の開発などの講演でした。そして、現在なおさらなる高みへのチャレンジが続いているのです。
講演の内容は、整理してHPに掲載する予定です。次回は6~7月頃を予定しています。

2.技術情報検討会(吉川)
脱炭素化社会の中で世界の電気自動車(EV)の生産台数も急増しています。それに伴いEVの心臓ともいえる蓄電池の技術開発競争は激しくなっています。中でも「次世代電池の大本命」とされてきたのが全固体電池で、日本はこれに賭けてきたと言っても過言ではないと思います。ところがこの開発が遅れ気味だとの情報がありました。
背景には大きく3つの技術的な課題があり、まだ解決できていないとの事です。3つの課題として、固体の熱による膨張収縮の僅かな違いで正極や負極と固体電解質とが離れ性能が落ちる事と、固体中のイオン移動速度が満足できる電解質がまだ決まらない事、有望視されている硫化物系電解質には故障時に有毒ガスを発生する可能性がある事が挙げられています。このため、商用化が更に遅れるという見方があります。日本のメーカーが全固体に注力している間に 中韓の企業が従来電池の技術改良や価格競争力で日本を大きく逆転している現状があります。LFPなど旧来の技術を使った液系電池の進歩は著しく、これからの全固体との競争も予断は許されないようです。経産省も技術の見直しが必要だと考え支援を検討しているようです。
検討会では、リチウムイオン電池の旧いリン酸鉄系(LFP)技術の改良についても調査してみました。そのほか、CO2回収装置の新しい技術情報や最近の燃料価格の高騰などを検討しました。

3.事業化検討会―木質バイオマス資源の利用技術について(その2)―(岸本)
前回に引き続き、事業推進検討会で調査した木質バイオマス資源利用技術の現状についての紹介です。下記の2点の技術は、それぞれ課題は抱えていますが今後に期待ができるバイオマス利用技術です。
1.小型ガス化発電装置
現在国内では、欧州メーカーを中心とした小型ガス化発電装置(2MW以下)が300台程度設置されています。燃料として木質チップまたはペレットが使用され、発電効率は20~30%、熱利用を含めた総合効率では75%以上と言われています。小規模バイオマス発電は、地域のバイオマス資源を利用したエネルギーの地産地消として今後の重要なテーマです。
2.吸収式冷温水機システム
吸収式冷温水システムとは、電気によりポンプなどの装置を作動させずに冷暖房を行うことができる装置で、電力をほぼ使用せずにガスや燃料を燃やして冷暖房を行うことができるシステムです。矢崎バイオエネルギー㈱の木質ペレットを燃料にする空調システム(バイオアロエース)は、現在国内で業務用として百数十台ほど設置されており、今後とも増えることが期待されます。

4アルジェ研究会 (セルロ-ス分解とSAF)(廣谷)
セルロ-スは木材等の構成する成分であり、その分解は難物でした。それをエネルギーとして利用するにはその為の形式、成分を変えて利用出来るようにしなければなりません。従来はセルロ-スをセルラ-ゼで分解し糖類にし、イーストで発酵しアルコ-ルにしていました。ところが、コリネ菌(バクテリア)の遺伝子組み換えにより一挙にアルコ-ルが出来るようになりました。日本製紙と住友商事が本格的にアルコ-ルをバイオジェット燃料にし、SAFに乗り出す様です。
もう一つのセルロ-スの挑戦は昭和シェルと東北大の挑戦です。セルロ-スからヘキセンを造り(化学的、生物的かは不明)、ヘキセンはガソリンの一部になっていて、それをバイオジェット燃料の長鎖分岐炭化水素に出来るのに近いです。どちらも期待される方法です。

5.熱エネルギー研究会(進藤)
ペロブスカイト太陽電池の事例を検討しました。この電池は軽くて曲げやすい特徴を生かし、従来の太陽光パネルでは難しかった壁面などの様々な場所への設置に利用拡大が期待されています。最近、積水化学工業はNTTデータと共同で建物の外壁に貼る実証試験を2023年4月から2年間、大阪の積水化学開発研究所の建物と品川のNTTデータ棟で実施する予定を報道しました。この実証試験は、設置方法やモジュールの固定方法の確立、外壁面(垂直面)での発電効率の予測値と実績値の比較検証、都心建物での施工性検証、発電した再エネのデータセンター内利用など実現に向けた実施検証です。今後NTTデータは、本実証に基づいた設置方法により全国の自社ビルへの展開を進め、既存建築物の外壁への再エネ導入手法を確立することで、自社だけでなく都心部建築物の脱炭素化の貢献を目指しています。

6.林業システム研究会(篠崎)
①エコプロ単独出展で入会者と提携希望企業が現れました。
②当研究会とくに竹林プロジェクトの活動に大いなる成果をもたらした福島巌特別顧問が2月に逝去されました。3月には新しい埋葬方法である樹木葬が執り行われ、一昨年他界した奥様の横に埋葬されました。
③この自然埋葬法は当NPO法人だけでなく、生前に親しかった多くの方々から問い合わせや特別顧問への弔意が寄せられました。時節柄お通夜は割愛されましたが、告別式、初七日、四十九日、納骨(樹木葬)という一連の仏事が完了しました。
④福島特別顧問は奥様とも一緒になってポーラス竹炭の性質を実験的に究明され、学会や竹炭シンポジウムで発表されました。その成果は当NPO法人の活動の大きい指針の一つになっております。ここに、皆様とともに感謝の気持ちをささげ、ご冥福をお祈りします。合掌

7.Kシステム開発プロジェクト(米谷)
V滑車の改良については、現在のV滑車を改造した滑車を製作し、1月に2日間かけて山梨の工場内で評価試験を実施しました。牽引荷重、滑車の高さ、水平方向の角度、滑車を2連にした場合、など多くの条件で試験をした結果、改良内容の効果が確認できましたが問題点も明らかになりました。現在これらの知見を取り入れた改良滑車を設計・製作中です。
2月に山梨県の南都留森林組合の杉本組合長様(以前北都留森林組合様がKシステムを試用したときに見学にこられた)から造林作業に使用する事を検討したいとのご提案があり、Kシステムの需要先の開拓と合わせて進めていく事にしました。

8.竹林プロジェクト(篠崎)
今年度の活動方針に対する現状の進捗は以下の通りになりました。
①活動資金獲得のため助成⇒金申請を行う。成功せず。
②DECA2販売を実現する。⇒販売が1台完了しました。
③資金を得てポーラス竹炭の特性究明を推進(ガス吸着挙動、微量元素定量分析)?ガスの吸着挙動が助成金未獲得のため未実施です。自費で計画中
④各種竹炭商品開発の推進・販売(調湿・脱臭器、新鮮保持剤、入浴剤、融雪剤など)⇒学会発表実施 新しくニーズを絞り込む作業を開始、目標が二、三見えてきしました。
⑤「Ugandaプロ」の再挑戦⇒ウクライナ侵攻により当面は活動停止状態です。
⑥「林プロジェクト」の遂行・継続⇒林氏が再加入してくれましたが活動停止状態です。
⑦NPO、学協会、企業との連携の継続⇒企業との連携を鋭意努力中で、来年度の目標です。
⑧商標登録(初企画)⇒決め手がなく未実施
⑨展示会出展(費用は林業研)⇒エコプロは完了、エコメッセちばは自費公開中です。
⑩新規1⇒熊本で招待講演を実施し、講演料を当NPOに寄付しました。
⑪新規2⇒千葉県茂原市在住の農家高貫清一氏(賛助会員)から真竹の処分を依頼され、ポーラス竹炭を製造しました。約半分は販売でき、利益の一部を寄付しました。

9.ホームページによる情報発信(編集部)
主に会員吉澤有介が要約した一般図書。会員の活動報告・評論・提言・主張および情報紹介です。
サロンの話題・調査・活動報告 (ダブルクリックでリンク先情報が表示されます)
「ストーンヘンジ」—巨石文化の歴史と謎— 2023年3月12日 吉澤有介
「つながりの哲学的思考」自分の頭で考えるためのレッスン 2023年3月5日 吉澤有介
「禁断の進化史」—人類は本当に「賢い」のか— 2023年2月25日 吉澤有介
「菌類が世界を救う」キノコ・カビ・酵母たちの驚異の能力 2023年2月12日 吉澤有介
「とれない痛みはない」 2023年2月6日 吉澤有介
「デジタル時代のアーカイブ系譜学」2023年2月1日 吉澤有介
「チェコに学ぶ「作る」の魔力」 2023年1月28日 吉澤有介
「見えない絶景」—深海巨大地形—2023年1月23日 吉澤有介

特定非営利活動法人 蔵前バイオエネルギー(略称 K-BETS)
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