蔵前バイオ通信 第68号 2021年6月15日
メールマガジン蔵前バイオ通信 第68号をお届けします。
2021年もすでに6月、梅雨入りし、雨の日が多くなっています。コロナ禍は変異ウイルスの影響もあり、緊急事態宣言が再延長されました。ようやくワクチン接種が進み始め収束への道筋が見えてきたところでしょうか。会員の中にもすでに接種を受けた人も出てきています。しかし、しっかりとした感染症対策を講じながら活動を進めることに変わりはありません。リモート会議が主体ですが、その会議の運営もスムーズに進むようになり、活発な活動が行われています。
本号でも私たちの活動による、自然エネルギー利用の有益な情報をご案内いたします。ご利用ください。また、私たちの活動に興味をお持ちの方々の参加をお願いします。
*******************目次 ***************************
- 活動トピックス(編集部)
- 技術情報検討会(吉川)
- 事業化検討会(岸本)
- アルジェ研究会(廣谷)
- 熱エネルギー研究会(進藤)
- 林業システム研究会(篠崎)
- Kシステム開発プロジェクト(米谷)
- 竹林プロジェクト(篠崎)
- ホームページによる情報発信(編集部)
1.活動トピックス(編集部)
●通常総会開催報告
第16回通常総会は、5月19日にオンライン会議で開催しました。27名の正会員の方から事前に議決権の書面表決と委任状が提出され、当日はウガンダからの宇都宮さんも含めて17名の出席でした。第1号議案の事業報告および第2号議案の決算報告は異議無く可決され、第3号議案の監事の選任では提案通り深田智久氏が再任されました。総会に引き続き説明会があり、2021年度の人事体制、事業計画、各事業の予算が報告されました。その後の交流会では、会員を増やすことや活動資金の獲得など様々な意見交換がありました。まだまだコロナ騒ぎで大変な年になりそうですが、これに負けずに活発に活動を進めてまいりたいと思います。よろしくお願い致します。(米谷理事長)
なお、総会で報告した「2020年度貸借対照表」および「2020年度事業報告書」をホームページ\私たちの情報¥公告・定款・パンフレット・蔵前バイオ通信バック№ にアップしてありますのでご覧ください。
- 4月例会後に勉強会を開催
講師 河野 通之氏 (K-BETS理事)
演題 :「プラスチックによる物流改革とそのリサイクル」
ILOによる労働環境の改善要求に対して、ビール会社は作業者の腰痛対策の一環として、木製でかなり重量があったビール運搬用コンテナーのプラスチックによる軽量化を進めました。三菱油化がこれに応え、5年保証の厳しい条件をクリアし実用化しました。また、このコンテナー材料は大量のビールコンテナハンドリング用木製パレットに替えてプラスチックパレットとしてリサイクルして使用できました。その結果、50年の使用できる材料として、プラスチックの適用範囲が拡大し、物流における労働環境等の改善に寄与しました。 - 総会後にリモート懇親会を開催
今回は2回目のリモート懇親会で、参加者の硬さがなくなって気軽に懇談できるようになりました。我々の事業の進め方に対する議論のあと、コロナ禍に関連したワクチン接種情報の地域別の対応の違いなど、会員のお互いの現在の生活の情報交換を行い、親睦を深めました。
2.技術情報検討会(吉川)
低価格でクリーンな水素が入手出来れば、産業界の脱炭素化は一気に加速するようです。電力は水素ガス発電、製鉄は水素還元製鉄を視界に入れています。都市ガスでもクリーン合成メタンを使う研究を始めていますし、自働車業界はクリーン合成液化燃料 e-fuel の開発を進めていることを発表しています。
そこで、供給側の見通しについて考えてみましょう。水素の製造法と云えば、現状では水の電気分解と化石資源(褐炭、天然ガス等)の水蒸気改質ですが、製品がクリーンと云えるためには、前者では再エネ電力の使用、後者では製造過程で発生するCO2の分離と地下貯留(CCS)設備の併設が条件となります。再エネ電力は、当分、電力需要を賄うので精一杯だとすれば、クリーン水素の命運はCCS技術に懸っていると云っても過言ではないかもしれません。資源が乏しく、貯留に適した地下岩盤が少ない我が国がどう対応して行くべきかが問われています。
3.事業化検討会(岸本)
事業推進の観点から学会報告および助成金獲得活動をご紹介します。
◆学会発表活動について
竹林プロジェクトでは、その成果を今までもその都度学会発表を行っていました。今回K-BETSとして、ポーラス竹炭およびKシステム関連などをまとめて8件の発表を生態工学会で行います。こうした学会活動を通して対外的な交流を深め、新しい展開を期待しています。
◆助成金獲得活動について
一般的にNPOはその活動資金が不足しており、K-BETSもその例にもれません。竹林プロジェクトはこれまでも民間団体等の助成金を得て有効に活用してきました。今年度も地方銀行の助成金の申請をしています。採択されれば今年度大いに貢献すると見込まれます。Kシステムプロジェクトについても今後の事業活動の継続・発展のために、現在種々検討・調査を行っています。
4.アルジェ研究会 ―都市ゴミからバイオジェット燃料(BJF)(廣谷)
現在、飛行機は主として石油からのジェット燃料で運行していますが、EU委員会はバイオジェット燃料(BJF)を2020年に10%、2030年に50%と決め、米国、アジアも従うことにしています。現在、20ヶ国がすでに生産出来ていますが日本は残念な事であるがまだ商用化は出来ていません。欧米は安さを満たすものの一つとして都市ゴミを選び成功しています。都市ゴミを過熱高温にしてCO+2H2とし、次には触媒を使いFT合成を実施しBJFを造るのです。
成功例としてSolena Fuels Corp.(米国)はロンドン東部に工場を造り、都市ゴミを利用し、独自の技術で高温プラズマガスとし、FT合成が得意なVelocys社(英国)に渡しBJFにしています。生産量実績は2017年に12万トン、現在は増産が行われており50万トンになっていると思われます。Fulcrum BioEnergy(米国)はネバタ州で都市ゴミをガス化し、FT合成を経てBJFを造っています。その生産量は3.8万㎘です。
日本でも産総研などが都市ごみからのBJF技術開発に取り組んでいますが、早期の実用化が急務と思います。
5.熱エネルギー研究会(進藤)
政府は2050年カーボンニュートラルを見据え、電力の5~6割を再生可能エネルギーとする目標を掲げています。この実現には種々の課題があるので、まずは蓄電池について検討しました。再エネの主流である太陽光や風力は変動電源であり、これらを主力電源にするには、電気をためて出力調整する蓄電池の役割が大となります。2050年には国内で約1000万kW(原発10基分)相当の蓄電池が必要との試算もあります。この蓄電池は定置用で良く、レドックスフロー(RF)電池が見直されています。RF電池は、酸化還元反応により充放電するので電解液を増やせば容量は大となり、リチウム電池に比べて長時間にわたり大量の電気が蓄えられるのが特徴です。RF電池と並んで実用化されているのがナトリウム硫黄(NAS)電池です。硫黄とナトリウムイオンの化学反応で充放電するので、リチウム電池で懸念される資源の問題はありません。課題はコストで、企業は電池の性能向上や量産化により、30年を目標として約4分の1へのコストダウンに取り組むとしています。
6.林業システム研究会(篠崎)
(1)6月25日(金)の生態工学会年次大会において、独自のオーガナイズドセッションを形成し、合計8件の発表を行います。発表はアフリカからも行い、初めての海外からの発表だと注目されています。
発表テーマは①ポーラス竹炭はトマトを甘くする、②ウガンダにおけるバイオ炭の状況、③竹粉の発酵と応用、④世界の水紛争、⑤群馬における竹林整備状況、⑥竹炭製造時廃熱で熱発電、⑦山林に炭を撒く、⑧間伐材の新集材システム開発の8件です。発表はリモート参加のオンライン形式で行われます。この発表により蔵前バイオエネルギーの活動をPRして、世の中に警鐘を鳴らします。
(2)12月初旬に東京ビッグサイト東ホールで開催されるエコプロダクツ展に今年も出展します。テーマはKシステム開発プロジェクトと竹林プロジェクトの2件です。
7.Kシステム開発プロジェクト(米谷)
秩父での伐倒・集材作業が終了し、作業された方々から良かった点、問題点など多くのご意見をいただきました。問題点を改善し次の拡販を進めていきます。
Kシステムの知名度も少しずつ上がってきています。東京都日の出町の業者の方から、急斜面の伐倒・集材作業の募集があるのでKシステムを使って作業することで応募したい、との連絡がありました。受託されれば秋に1~2か月の作業となります。また、静岡県天竜市の山主の方で放置している山林から材を出したい人がいるので、Kシステムについて概略説明したら興味を示された、との連絡があり、Kシステム紹介DVDを制作して対応しています。こういった要望に的確に応え、Kシステムのさらなる高度化とその普及を進めてまいります。
8.竹林プロジェクト(篠崎)
(1)バイオ炭のメリットを世界に発信する最初のプロジェクト提案はJICAが不採択となりましたが、再挑戦する方針を協議決定しました。必ず成功させます。
(2)竹炭や竹粉の商品開発を進めています。詳細な内容は公開の段階ではありませんが、ポーラス竹炭や竹パウダーのメリットを生かせるものを検討しています。
(3)SDGsに叶う企業やNPO法人と連携して活動を行います。連携を御希望の方は蔵前バイオエネルギーにホームページを通して一声おかけください。百戦錬磨の強者が応対いたします。
9.ホームページによる情報発信(編集部)
主に会員吉澤有介が要約した一般図書。会員の評論・提言・主張および情報紹介です。
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特定非営利活動法人 蔵前バイオエネルギー(略称 K-BETS)(https://www.kuramae-bioenergy.jp/)
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