蔵前バイオ通信 第61号 2020年2月15日

本格的冬到来ですが、暖かい日もあり、気候変動を身近に感じる季節となっています。私たちの活動状況と自然エネルギー利用の有益な情報をご案内いたします。また、私たちの活動に興味をお持ちの方の参加をお願いします。
蔵前バイオ通信 第61号 2020年2月15日

*******************目次 ***************************
1.活動トピックス(編集部)
2.技術情報検討会(吉川)
3.事業化検討会(岸本)
4.アルジェ研究会(廣谷)
5.熱エネルギー研究会(進藤)
6.林業システム研究会(篠崎)
7.Kシステム開発プロジェクト(米谷)
8.竹林プロジェクト(篠崎)
9.ホームページによる情報発信(編集部)

1.活動トピックス(編集部)

  • 米谷理事長 新年の挨拶
    明けましておめでとうございます。 昨年は国内外で大規模な自然災害が発生しました。積極的な地球温暖化対策が急務だと思います。再エネの主力電源化、FIT制度の大幅見直し、森林環境贈与税の実施など政府の施策も少しずつですが進められています。これらの施策で日本の再エネの利用が進み国土の70%の森林が持続可能な状況で再生できるか、無駄に補助金だけが使われて再エネ利用は進まず、森林は大規模発電に皆伐され丸裸になるのか、竹林の被害拡大に歯止めが架けられなくなるか、この2~3年が正念場と思っております。
    正に、バイオマスのエネルギー利用を技術的に支援する事を目的にスタートした我々が活躍する時です。
    10年かけて開発を進めてきたKシステムは市場への展開の山場となります。そして、竹林整備はポーラス竹炭の需要先開拓が必須です。そのほか、小規模木質バイオマスの熱利用、藻類のエネルギー利用などへの問い合わせへの対応や、バイオマスセミナーなどの啓蒙活動、政府の政策への提言など、活躍の場が広がってきています。
    幸いに、最近K-BETSに入会される方が少しずつですが増えて来ています。
    是非積極的なご参加をお願いいたします。
    本年がK-BETSのさらなる発展の年になる事を、そして会員皆様のご健勝とご多幸を祈念いたします。
  • 1月例会後に勉強会を開催しました
    講師 荒川英敏 氏(蔵前バイオエネルギー 理事)
    タイトル:「イギリスと日本の違い」
     講師は1970年以来、イギリスに関わりを持ち、イギリス滞在中に子育て、住宅購入、本人や家族の入院、冠婚葬祭や自治会への参加、そしてイギリス企業勤務、納税等と選挙権以外はイギリス人と同じ生活を送りました。その体験から、日本の様々な事象についてイギリスとの比較を行いました。日本とイギリスの歴史、文化、経済の違いが表れていて興味深い比較文化論でした。
  • 2月例会後に勉強会を開催しました。
    講師 廣谷 精 氏(蔵前バイオエネルギー 理事)
    タイトル:「遺伝子の話」
    遺伝子組み換え、遺伝子編集と遺伝子が注目を集めています。その遺伝子について基礎的な知識を得る良い機会となりました。遺伝子分子の構造、遺伝子の歴史、生物の歴史、遺伝子組み換えの安全性、組み換えの種類、アメリカ・イギリス・日本の現状等についての概説でした。遺伝子の話題の理解が深まると期待します。
  • Kシステムの林業家による試用実施
    2月9日~13日に、秩父市大滝の傾斜約30~40度の斜面で、実際に住宅に使用される樹齢50~70年の杉材の集材という実作業に、地元の林業家に試用していただき、十分使えると評価されました。
    また、今回の作業時に、角仲林業の山中会長の紹介で埼玉県秩父農林振興センター林業部から6名、地元製材会社の方、住宅建設会社の方が見学に来られました。Kシステムの実力を実際に見学した皆さまから高い評価をいただくことができました。これからの本システムの完成、普及に向けて自信を深めました。実施の詳細は「Kシステム開発プロジェクト」をご覧ください。

2.技術情報検討会(吉川)
2016年6月に蔵前工業会主催、当NPO共催で実施した蔵前バイオマスセミナーで「セルロースナノファイバー」を紹介しました。当時「次世代の新素材」として注目されていたあのCNFは、あれから3年、今どうなっているのでしょうか。
昨年12月に開催されたエコプロ展で調べて見ると、CNFがいろいろな形で商品化している状況が展示されていました。その多岐にわたる特性を生かした製品は、化粧品、シューズ、スピーカー、菓子、食品添加物、紙おむつ、タイヤ、生コン圧送先行剤、漆喰、卓球ラケット等で、既に商品化、市販されています。さらに鉄より強く、軽さが5分の1という特性を活かした自動車用構造部材としての実用化も、多くのメーカーが試作品を展示しており、あとは時間の問題かと思われます。ここまで来れば需要も大幅に増え本物だと云えましょう。

3.事業化検討会(岸本)
1).ポ―ラス竹炭の市場開発調査および商品開発活動について
ポーラス竹炭の市場開拓先として、現在園芸や農業用の土壌改良材、屋上緑化の土壌基盤材 などの検討を進めていますが、このたび横浜市の造園業社に対してサンプル販売を行うこととなりました。 また、 牛や豚の畜舎の敷料はおが粉などが使用されているが、竹炭や竹チップ等も代替材料としての 可能性があることが分かり、今月千葉県畜産総合研究センターを訪問し、情報等を収集することとなりました。

2).工場・研究所見学会の開催について
この度、会員相互のコミュニケーション強化および情報収集活動の一環として工場・研究所見学会を K-BETS会員を対象として、年3~4回程度の工場・研究所等の見学会を実施することになりました。 第1回の見学会については、3月をめどに実施する予定であり、見学先としては電力中央研究所(横須賀市)、 川崎バイオマス発電㈱(川崎市)、J-Power磯子火力発電所(横浜市)などが候補となっています。 見学会の案内は追ってK-BETS会員にされる予定です。

4.アルジェ研究会 バイオジェット燃料現状(廣谷)
2020年からEU上空を飛ぶ時、バイオジェット燃料を10%使わなければいけない規則となっている。EU各国は実施していると思われる。ロンドンのヒースロー空港には米国のSolena Fuels社、Velocys社が独自の技術で協力して用意している。その原料は都市ゴミをガス化し、FT合成した油である。Shell、BAが資金を出し協力している。EUで既に利用されているHEFA(廃食油等の水素化精製油)を改良したと推定されるバイオ燃料がノルウェイのオスロ空港に大量に用意されていて利用出来る。
日本では(株)ユーグレナが実証設備での125KL/年の生産があるが商用化には至っていない。世界の国でバイオジェット燃料を製造出来るのは20ケ国でありインドも入っている。しかし日本はその中に入っていない。EUの委員会は、2030年には50%バイオジェット燃料にすると言っている。アジア、米国も10%を2020年に、自主的に始めている。ロサンゼルス空港にはバイオジェット燃料が用意され、又中国東方航空はHEFAを使いだした。
バイオジェット燃料製造を計画している企業は期限を2026年、又は2030年としている。種々の資金が出ている。NEDOはバイオのFT合成、藻培養、ATJ(アルコールからのジェット燃料)、HEFAを支援している。外国がやっているので日本で出来るはずだ。問題はコストと量、そしてスピートだ。日本はその燃料に餓えていると思われる。

5.熱エネルギー研究会(進藤)
再生エネ導入に送電線の空き容量不足が問題との報道があり、経産省は電力大手に対し見直しに着手とあります。一方、地産地消の観点から「マイクログリッド」の構想があります。マイクログリッドは大規模発電所の電力供給網に頼らず、地域の小規模発電所の電力を地域内の電力ネットワークで使う分散型電源利用の仕組みです。分散型電源は太陽光、風力、バイオマス発電など元来、エネルギー源は地域に分散している電源です。但し、太陽光や風力は変動電源なので、地域での需給バランス調整が必要となり、情報技術による適正な制御管理や蓄電池の利用が課題となります。実用化にはコスト面などの問題が残ります。マイクログリッドのメリットは送電ロスが少なく、発電規模も小なので建設費用も安価と言われています。今後も実例などを調査し検討したいと考えています。

6.林業システム研究会(篠崎)
本研究会では間伐材集材と竹林問題の二つのプロジェクトを主な議題として検討しています。前者であるチェーンシステムによる集材方式であるKシステムの開発ではほぼシステムが確立され、今後は取扱企業の選定と各地でのデモンストレーションが主な作業になります。後者の放置竹林問題への対処もほぼ同様の経過をたどっています。さらに、活動の場が国内にとどまらず、海外をも視野に入れる必要が出てきました。両者とも活動成果が問われる段階になって来ました。加えて、我々に相応しい次の開発テーマを探します。

7.Kシステム開発プロジェクト(米谷)
2月10日から13日の4日間、秩父市大滝の 間伐集材にKシステムを使っていただきました。奥行100m弱、幅約50m、斜度約30度~40度、樹齢50~70年の杉林における50%間伐の引上げ作業で、実作業は全て、地元で自伐式の集材にチャレンジされている山口林業の山口代表と、奈良で集材作業をされているベテランの伐木士、東京都日ノ出町の森のお仕事(株)の2名、秩父地域おこし協力隊1名、と多士済々の方々が行いました。チェーン駆動装置の操作、チェーンの分離・連結など簡単に基本作業の練習したあと、チェーンラインの設置、引上げ作業、すべて作業者の方々が楽々と行ないました。チェーンの移設作業は1時間、最後の撤収は30分と短時間で出来、Kシステムの特徴が発揮されました。さらに、皆さまの協力を得て、新開発のデバイスのテストを行い、実用化の見込みを得られた事は大きな収穫でした。
参加された方々からは、こんな小さい機械なのに牽引力が強いのにびっくりした、ワイヤーに比べて安全で安心して牽引作業が出来る、操作が簡単だ、と大好評でした。山主の角仲林業の山中会長、社長から、今後予定されている急斜面の集材に是非Kシステムを使いたいので見積もりを出してほしいとの話になりました。基礎的な実験から開発をはじめて10年でやっと実用に供するところまで来ました。感無量です。 

8.竹林プロジェクト(篠崎)
放置竹林問題の解消のために必要なハード-ポーラス竹炭製造の炭化炉-関係の開発がほぼ終わり、次の課題であるポーラス竹炭の商品開発に勢力を注いでいます。多様な用途を洗い出して、それに適したユーザーを探します。これは大変地道な作業になりますが、これをしないと問題解消になりません。多くの会員の叡智を結集する必要があります。直近ではウガンダからバイオ炭製造に関する引き合いがあり、前向きに検討しております。また、商品流通についても具体的な検討を開始しました。これらは未知の問題に対する対処法です。私たちは商品を技術開発しますので、それを販売して下さる相手を探しています。

9.ホームページによる情報発信(編集部)
主に会員吉澤有介が要約した一般図書。会員の評論・提言・主張および情報紹介です。
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「どんでん返しの科学史」小山慶太著 2020年2月3 吉澤有介
「ダムの科学」(社)ダム工学会、近畿・中部ワーキンググループ編 2020年2月10 吉澤有介

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