蔵前バイオ通信 第79号 2023年6月15日

メールマガジン蔵前バイオ通信 第79号(2023年6月15日)をお届けします。
5月に新型コロナが5類に指定され、コロナ禍が収束の形となりました。まだまだ油断はできませんが、戸外の活動、対面での活動が戻りつつあり、社会全体の活動が活気を呈してくることでしょう。私達の活動も例外ではなく、これまでの4年間と比較し活発化してまいります。
今回も、私達の活動状況と、自然エネルギー利用の有益な情報をご案内いたします。ご利用ください。また、私たちの活動に興味をお持ちの方々の参加を期待しています。ホームページより連絡ください。

*******************目次 ***************************

  1. 活動トピックス(編集部)
  2. 技術情報検討会(吉川)
  3. 事業化検討会(岸本)
  4. アルジェ研究会(廣谷)
  5. 熱エネルギー研究会(進藤)
  6. 林業システム研究会(篠崎)
  7. Kシステム開発プロジェクト(米谷)
  8. 竹林プロジェクト(篠崎)
  9. ホームページによる情報発信(編集部)

1.活動トピックス(編集部)
5月24日に通常総会をオンラインで無事開催できました。総会では、3つの議案が審議されすべて承認されました。また、総会に先立つ理事会において、人事案件として、理事全員の再任、小林氏の理事新任が決定されており、報告されました。
総会で承認された「2022年度貸借対照表」および「2022年度事業報告書」をホームページ「私たちの情報」「公告・定款・パンフレット・蔵前バイオ通信バック№」で閲覧できます。

2.技術情報検討会(吉川)
政府は太陽光発電の増強を重要な政策の一つとして掲げていますが、太陽光発電は時間帯によって発電量が大きく変動するため電力の需要と供給の調整が課題となっています。政府はこの問題に対して、送電網の強化や電力の貯蔵などの対策を挙げており、送電網の強化についての方針は既に公表されています。しかしながら、もう一方の電力貯蔵についてはあまり取り上げられていないようです。
そこで、この問題に対する主対策の一つとなると考えられる揚水発電について調査しました。日本には、現在42ヶ所、2700万kW以上の大規模な揚水発電所がありますが、稼働率は概ね3%と非常に低くなっています。これらの発電所はもともと原子力発電所に紐づけて建設されたものであり、深夜電力が過剰になることを見越して作られたものです。しかし、時代の変化に伴い原発の稼働率が大幅に低下した事と深夜電力対策が進んだ事により、揚水発電の必要性が低下したのです。今後この揚水発電所を再生可能エネルギーの増加に伴って生じる過剰電力の調整用に活用することが検討されています。揚水発電所は、電力の一部をロスしながら電力の緊急貯蔵を行う方式であるため、直接的な利益を得ることはなく貯蔵コストだけが発生します。電力貯蔵用に使用するためには設備面への投資だけでなく、貯蔵に伴う電力ロスなどのコストを補填できるような制度面の対策も必要です。政府もこの点を考慮しながら検討し始めているようです。
上記の話題以外では、J-クレジットの解説と最近の情報や話題のチャットGTPなどを取り上げ、検討しました。AIの実用化へのスピードには驚かされます。


3.事業化検討会―木質バイオマス資源の利用技術について―(岸本)
前回に引き続き、木質バイオマス資源等の利用技術について、今回は一般的な木質ペレット以外のトレファクション燃料、ブラックペレット、バイオコークスの燃料化技術の紹介です。
1.トレファクション燃料
トレファクションと呼ばれる半炭化技術による燃料を森林総合研究所などが開発を行っています。バイオマスをチップ化し、半炭化・粉砕・ペレット成型することで重量当たりの熱エネルギー密度が増し輸送効率やハンドリング性が向上したトレファクション燃料が製造できます。今後石炭火力発電における石炭との混焼によるCO2削減が期待されます。
2.ブラックペレット燃料
出光興産㈱は、通常の木質ペレットを半炭化することで揮発成分・水分が減少し、木質ペレットに比べて燃焼時に発生する熱量が大きいとされるブラックペレットの開発をしています。火力発電所でCO2の発生量減少を目的として、ブラックペレットと石炭の混焼の実証実験を行っています。
3.バイオコークス燃料
近畿大学は木材や廃材などを、圧縮・加熱・冷却のプロセスにより、炭化ではない圧縮固形化したバイオコークス燃料の開発を行っています。最近、住友商事マシネックス㈱はこのバイオコークス燃料を電気炉や キュポラで使用されている石炭コークスの代替として使用し、CO2の削減事業を進めると発表しています。

4アルジェ研究会 (SAFとコリネ菌)廣谷)
 コリネ菌は協和発酵工業(社)の木下グル-プがグルタミン酸を生産する菌として見つけた菌です。今世界の国で約200万トンのグルタミン酸ソーダが生産され、消費されています。また、協和発酵工業は菌の改良を行い各種のアミノ酸を製造出来るようになりました。廣谷はリジン塩酸塩の生産性を高める事に貢献しました。
地球環境産業技術研究機構(RITE)はコリネ菌に遺伝子組換えを行い、RITEバイオマスプロセスを開発しまし。その菌体は発酵増殖するのではなく触媒としてバイオマスに作用するもので、バイオジェット燃料となるイソブタノ-ル、アミノ酸のアラニンとバリン、その他のものとしてコハク酸、ブタノ-ル等が出来ます。それらは皆SAFの必須成分になっています。それはグリン・アース・インスティチウ-ト(GEI)で実用化されつつあります。

5.熱エネルギー研究会(進藤)
企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)やリモートワークの普及が進み、サーバーを稼働させるデータセンター(DC)の需要が増大しています。さらに米中摩擦が激化するにつれ、外資系企業は経済安全保障の観点から中国とのデータのやりとりを敬遠し、日本のDCを選ぶ動きも出始めています。千葉県印西市では東京ドーム7個分に相当する巨大DC建設が進み、利用が開始されています。3~5年後には東京圏のDC規模は約2.3倍になると予測されています。
一方、DCは冷却を含め電力消費量が大きく、資源エネ庁の発表では、2020年の総消費電力量に占めるDCの消費電力は2.1%(約190億kWh、発電量換算で約260万kW)にもなっています。そこで、政府のグリーン成長戦略では、「DCは2040年までのカーボンニュートラル」が目標として定められ、DC事業者は、脱炭素化も並行して進める課題があります。例えば、NTTグループでは、オンサイトおよびオフサイトの太陽光発電による再エネ調達(PPA)により脱炭素化を進めています。

6.林業システム研究会(篠崎)
 第186回、第187回の研究会を開催しました。
間伐材搬出装置の開発研究では滑車の改良が進められ、近く実試用される見通しが立って来ました。これが完成すると本格的なPRを展開することができることになります。
新規に竹を用いたアルコール飲料の施策がなされ、タウン誌にも掲載されました。今後は工業的な試作を行うべく、協力企業を探すことになります。現在はその仕様を確立する作業を行っています。
群馬県ではポーラス竹炭の林業への応用が試みられており、徐々にその効果がまとめられつつあります。落葉樹を対象にすると落ち葉の量やドングリの実の量など、あるいは土壌の変化などからマルチングの効果が判明しつつあります。

7.Kシステム開発プロジェクト(米谷)
懸案のV滑車の改良案は設計図が完成し現在製作費の見積もり中です。
山梨の森林組合様から、Kシステムは簡便で安全に牽引出来るので間伐の集材に使える。また積極的に進められている造林・植林の作業は重労働だが、苗木や機材の運搬にKシステムを使うことを検討したい、との提案があります。
また、相模原の急斜面の森林の間伐・集材作業を行っている林業業者様から、対象の森林面積が広いので、今度Kシステムを使って集材を行うことを検討したいとの話が有ります。これからも、Kシステムの需要先の拡大を積極的に進めていきます。

8.竹林プロジェクト(篠崎)
この2か月の活動は生態工学会年次大会対応と外部からの提案に対する応対が主でありました。ポーラス竹炭の下部組織の調査で吸水性とガス吸着性能を説明することができ、加湿器の開発や土壌改良材としての応用が理論的に支持されました。融雪効果の発揮原因は黒色に加えてClの含有があるため、木炭よりも融雪効果が大きいことが実験的にも確認されました。
対外的には竹の家畜飼料への応用、またポーラス竹炭の燃料としての応用のアイデアが検討され始めましたので、今後の大量使用によって放置竹林問題が促進されると考えられます。

9.ホームページによる情報発信(編集部)
主に会員吉澤有介が要約した一般図書。会員の活動報告・評論・提言・主張および情報紹介です。
サロンの話題・調査・活動報告 (ダブルクリックでリンク先情報が表示されます)
「元素で読み解く生命史」  2023年6月10日 吉澤有介
「新薬という奇跡」—成功率0,1 %の探求—2023年5月30日 吉澤有介
野鳥物語 冬ー初春編 2023年6月2日 宮地利彦
「美食地質学入門」–和食と日本列島の素敵な関係–2023年5月25日 吉澤有介
「鳥マニアックス」–鳥と世界の意外な関係—2023年5月15日 吉澤有介
「海の地政学」–海軍提督が語る歴史と戦略—2023年4月21日 吉澤有介
「人事の古代史」-律令官人制からみた古代日本- 2023年4月23日 吉澤有介
「古代への情熱」 2023年4月12日 吉澤有介
「歴史は実験できるのか」–自然実験が解き明かす人類史—2023年4月7日 吉澤有介
「宇宙と宇宙をつなぐ数学」—IUT理論の衝撃—2023年4月4日 吉澤有介
公開講座「水と環境」資料2月25日
「昆虫学者はやめられない」  2023年3月15日 吉澤有介

特定非営利活動法人 蔵前バイオエネルギー(略称 K-BETS)
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