蔵前バイオ通信 第75号 2022年9月15日

メールマガジン蔵前バイオ通信 第75号をお届けします。
猛暑だった今年の夏も終わり、ようやく涼しくなって、活発な活動ができる時期になりました。8月約1か月間の休息で英気を十分に養いましたので、これからの活動にご期待ください。
私達の活動状況と、自然エネルギー利用の有益な情報をご案内いたします。ご利用ください。私たちの活動に興味をお持ちの方々の参加を期待しています。ホームページより連絡ください。

*******************目次 ***************************
1. 活動トピックス(編集部)
2. 技術情報検討会(吉川)
3. 事業化検討会(岸本)
4. アルジェ研究会(廣谷)
5. 熱エネルギー研究会(進藤)
6. 林業システム研究会(篠崎)
7. Kシステム開発プロジェクト(米谷)
8. Kシステム普及プロジェクト(米谷)
9. 竹林プロジェクト(篠崎)
10. ホームページによる情報発信(編集部)

1.活動トピックス(編集部)
●9月例会時に勉強会を開催しました。
演題 「バイオマス燃焼熱により駆動する冷房システム」
講師 上村会員
吸収式冷凍機は1種のヒートポンプであり、各種燃料の燃焼熱によって冷水を作り出せます。LiBr水溶液型は1930年頃から直焚きでの実用化が始まりました。このように古い技術であり、一時は電気駆動フロン圧縮型の陰で目立たない存在でしたが、近年「低温廃熱利用」という利点が注目されています。また、この吸収式冷凍機にバイオマス燃料を利用すると、バイオマス利用の2大課題(大量安定供給と安価な変換技術)が回避可能(小規模でそのまま燃焼)という利点があります。また、「冷房による昼間電気ピークの緩和」にも効果があり、昨今の電力事情(石炭は使用を縮小、原発は不透明、化石燃料は国際紛争リスクに曝される)から更にその必要性が高まることが予測されます。
バイオマス燃焼熱で駆動する吸収式冷凍機について、日本(2001-2007年)とマレーシア(2009-2019年)における講師の活動に基づいて発表がありました。

2.技術情報検討会(吉川)
今年、猛暑が訪れるとすぐに電力の需給逼迫注意報が発令され、政府から節電要請がだされました。太陽光発電が急増しているなかでどうしてだろうと、この疑問について検討してみました。
原因はいろいろ挙げられますが、直接的には脱炭素化政策の下で多くの旧式火力発電所が閉鎖されたためでした。2016年に施行された電力自由化の競争の激化と再エネ促進に後押しされた太陽光発電の普及が、稼働率が低く経済性が悪化した旧式火力を閉鎖に追いやり、結果として電力供給予備率を低下させていたことになります。
一方で、見過ごせないのが急増中の太陽光発電の、地域的に偏在し時間的に大きく変動する、という特性です。つまり定格発電能力が十分でも条件が満たされなければ需要に対応できないのです。この電力を活用し需給逼迫に備えるためには、地域的偏在には送電網の強化、時間的変動に対しては蓄電設備の増強が必要です。もちろん多大なコストが必要ですし、未解決の問題も残っています。
政府は電力不足を受けて、原発の再稼働と新増設に舵取りを変えつつあります。原発の必要性は以前から提唱されていた事ですが、国民の同意を得るための議論を避けてきたようなので、実現までにはまだ時間がかかりそうです。その間にでも取り掛かれる送電網の強化や蓄電量の増強にもっと注力すべきではないかと考えます。
7月の定例検討会では、製鉄業界の脱炭素化への取組みについても勉強しました。エネルギーを除く産業別では最も大きな問題です。

3.事業化検討会(岸本)
K‐BETSでは環境活動を行うNPOとして、対外的な情報発信や外部からの情報入手を目的とした活動も重要と考え活発に行っています。最近では以下の事例のような活動を行っており、これらが将来意義のある成果に結びつくことを期待しています。
・東工大のロボット技術および発酵技術関係の研究室の見学・情報交換の実施
・「水の歴史100選」(仮称)として、今秋より公開講座の開催準備活動
・2022年12月開催のエコプロ展への出展準備活動
・九州の森林関係団体からの依頼による、放置竹林関係の活動状況の講演予定
またK-BETS内部の最近の勉強会では、「木質バイオマスを燃料とした、吸収式冷温水機について」のテーマで講演がされ、活発な意見交換が行われました。

4. アルジェ研究会-アルコ-ルの種々の事業 (廣谷)
このリポ-トのアルコ-ルはエタノ-ルの事である。このアルコ-ルは種々の事業に活用されており、呑めるか如何かで範囲が決まる。原料が糖蜜、穀物等のバイオであれば呑めるが石油、化学製品の合成品等であれば飲めないと法で決まっている。バイオ発酵ブロスの水添蒸留(ス-パ-アロスバス)(メタノ-ル、ブタノ-ル、その不純物を7塔以上で除く)を通すと清酒添加アルコ-ルと甲種焼酎の基が出来、10万㎘生産量が有る。バイオでもイモ、ソバ、コメ等の発酵ブロスを単蒸留で実施すると乙焼酎の基となる。
バイオ(糖蜜、穀物、セルロ-ズ等)のアルコ-ル発酵ブロスの粗アルコ-ル蒸留(アルコ-ル濃度を上げる。水添蒸留前半工程のみ)を通すとエネルギーとして利用できるアルコールとなる。しかしエネルギーであるから安価でなければいけない。日本は各企業がガソリン10%添加に挑戦したが皆コスト低減に失敗している。アメリカはトウモロコシで10%、25%で成功し、ブラジルは10%、25%、100%で成功し、現在車の運転に利用され何の問題もない。蔵前OB会から紹介された某企業のコメのアルコ-ルのコスト低減について、K-BETSは良い低減を検討し提案した。現在は別の目的(清酒添加米アルコ-ル)もあり、存続する事を期待している。

5.熱エネルギー研究会(進藤)
大阪府大東市にて、TJグループが都市の公園や街路樹の剪定枝および建設現場からの廃材に着目し、自前でチップに加工して発電をし、廃材排出元である企業や地域自治体に売電する事業を実施しており、その仕組みについて検討しました。大東市のバイオマス発電では、年間約6万トンの都市の木質廃棄物の燃料を使い、5千kWの発電をし、大東市役所、主な公共施設と小中学校20校に供給しています。大東市では、2030年度目標のCO2削減(13年度比40%減)を、20年度に49%減に到達し、10年早く目標を達成したとの事です。近畿2府4県で発生する木質廃棄物は年間80~90万トンあり、TJグループでは奈良県生駒市に1万kW規模のバイオマス発電を2025年に稼働する計画もしています。
神奈川県でも茅ケ崎や横須賀に、剪定枝や建設廃材を利用した都市型のバイオマス発電所があります。この様な都市近郊の木質資源を活用して、発電した電気を地域で使う地産地消型のバイオマス活用の進展が期待されます。

6.林業システム研究会(篠崎)
①補助金や助成金を申請しましたが、今のところ採択されておりません。
②学会発表は生態工学会と日本建築学会の両方で実施しました。
③竹イノベーション研究会のセミナーでPR紹介し、熊本県から講演依頼が届きました。
④今年もエコプロ展に出展するため、出展者オンライン説明会に参加しました。
⑤コロナ禍のためフィールド作業がほとんどありませんが、コロナに感染しないよう気を付けています。
⑥林業研は8月の夏休みを除いて毎月開催し、報告と検討を重ねています。

7.Kシステム開発プロジェクト(米谷)
これまでの湯河原や秩父での使用状況からKシステムの普及拡大に必要な、チェーンを途中で持ち上げる特殊滑車の改良と無線操作の距離の延長について検討を重ねてきました。現在改良案の部品を製作中で、改良の効果を確認するユーザーの選定を進めています。
また、活動資金確保のための助成金等の応募先については当面適当な案件が見当たらないため、これから出てくる応募案件の調査・検討を進めていきます。
急増している豪雨による土砂災害の防止や、国際情勢の急激な変化による化石燃料不足への対応のため、これまで放置されてきた森林の手入れと利用拡大促進の動きがでてきています。狭くて急峻な日本の山林の集材に適したKシステムの改良・普及の活動を積極的に進めていきます。

8.Kシステム普及プロジェクト(米谷)
飯能の山主・林業業者・製材業者・飯能市森つくり課を訪問し、西川地域の森林の整備や利用についての活動状況をお聞きしました。地域全体としての活動が少しずつ進んでいる様子でした。Kシステムの普及も兼ねて、飯能へのコンタクトを進めていきます。

9.竹林プロジェクト(篠崎)
今年度の活動方針に対する現状の進捗は以下の通りです。
①活動資金獲得のため助成金申請を行う。➡いまだ成功せず。
②DECA2販売を実現する。➡代理店を1社決定し、販売手続きを精査しています。
③資金を得てポーラス竹炭の特性究明を推進(ガス吸着挙動、微量元素定量分析)➡ガスの吸着挙動が助成金未獲得のため未実施です。
④各種竹炭商品開発の推進・販売(調湿・脱臭器、新鮮保持剤、入浴剤、融雪剤など)➡学会発表をしたが、商品としては未完成なので、鋭意努力中です。
⑤「Ugandaプロ」の再挑戦(有用な情報を多数入手)➡ウクライナ侵攻により食料事情が悪化し、危険性が生まれたので、当面は活動停止状態です。
⑥「林プロジェクト」の遂行・継続➡林氏の再加入により開始します。
⑦NPO、学協会、企業との連携の継続➡企業との連携が未完成です。
⑧商標登録(初企画)➡未実施
⑨展示会出展(費用は林業研)➡エコプロとエコメッセちばの準備中です。
⑩新規➡竹イノベーション研究会セミナー発表の成果として、九州で11月に講演予定

10.ホームページによる情報発信(編集部)
主に会員吉澤有介が要約した一般図書。会員の活動報告・評論・提言・主張および情報紹介です。
サロンの話題・調査・活動報告 (ダブルクリックでリンク先情報が表示されます)
「日本の分水嶺」堀 公俊著、山と渓谷社 2000年9月刊 2022年9月3日 吉澤有介
「生命海流」–GALAPAGOS–福岡伸一著 2022年8月25日 吉澤有介
野鳥物語(美しい地球・・・・)  2022年7月10日宮地利彦
「南極の氷に何が起きているか」–気候変動と氷床の科学—
杉山 慎著 
2022年7月2日 吉澤有介
「エシカルフード」山本謙治著  2022年6月15日 吉澤有

特定非営利活動法人 蔵前バイオエネルギー(略称 K-BETS)
(https://www.kuramae-bioenergy.jp/)
〒108-0023東京都港区芝浦3-3-6
キャンパスイノベーションセンター801号室
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