横森 剛著、集英社インターナショナル新書、2026年6月刊 著者は、埼玉県生まれ、1998年慶応義塾大学理工学部機械工学科卒業、同大学院理工学研究科解放環境科学専攻博士課程で博士(工学)。東北大学流体科学研究所産学官連携研究員、日本学術振興会特別研究員、プリンストン大学航空宇宙・機械学科研究員を経て、現在は慶應義塾大学理工学部機械工学科教授。専門は反応性ガス力学、燃焼計測技術などです。
「燃える」という現象は、私たちの日常では、あまりにも当たり前なので、目の前にある炎をみても、そこで何が起きているのかを、意識することはほとんどありません。しかし、燃焼とは、物質とエネルギーが関わる複雑な現象でした。そこには化学反応、熱、流れというさまざまな要素が相互作用しています。火は人類の歴史とともに発展してきました。
ギリシャ神話でも、主神ゼウスは火を神のものとして、人間から火を取り上げます。それに対して、プロメテウスが火を奪い返して人間に授け、文明を創造させました。「プロメテウス」は、「先見の明を持った神」で、この話は「プロメテウスの火」と呼ばれています。
人類が火を使い始めたのは、今からおよそ180万年前のことらしい。原人の胃腸や歯が小型化して、火による調理の形跡がありました。150万年前の遺跡では、焼かれた骨や高温で熱せられた石などが、見つかっています。火を利用して氷河期を生き抜いてきたのです。
火は山火事などから得たことでしょう。やがて自分で火を起こすようになりました。火の利用は、調理、暖房、明かり、防御、土器製造、青銅器や鉄の精錬に発展してゆきました。
燃焼とは、多量の発熱を伴う化学反応があって、そこで発生したエネルギーや中間的な化合物が、その反応を自発的に継続し、進行してゆくことです。燃えるには、燃料、酸化剤、熱という三つの条件を必要とします。燃料には気体、液体、個体があって、触媒も大きな働きをします。温度は状態、熱は量で、熱とは移動して伝達するエネルギーのことです。
燃焼は発光を伴います。物理的な発光と、化学的な発光があり、華麗な花火が生まれました。しかし火事は困りものです。冷却や除去、窒息などの技術で対応しますが、状況は複雑で、消火は困難を極めます。危険な爆発現象もありました。とくに粉塵爆発は要注意です。
爆薬の発明に次いで、エンジンが開発されました。蒸気を利用した外燃機関が考案され、燃焼ガスを直接使う内燃機関に発展して、1900年頃に自動車で実用化されました。航空機エンジンも、ガスタービンからターボジェットエンジンへと開発が進み、ファンを利用したターボファンエンジンで、効率を高めました。ロケットエンジンは、燃料と酸化剤の両方を使って、強力な推進力を発揮します。燃料は液体と固体、それぞれに特長がありました。
燃焼の速度、濃度、温度を「見える化」するために、シミレーションが活用されています。
燃焼は、厄介な環境問題でもあります。そこで水素とアンモニアが注目されました。アンモニアはそのままでは発熱量が低いので、化石燃料と混焼する実験が進められています。
二酸化炭素を燃料にする技術があります。合成燃料e-fuelで、水素を加え、触媒で再構成した炭化水素系燃料には、電池よりエネルギー密度が、格段に高い利点もあるといいます「了」
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