「嘘で満ちていく社会」—データで読み解くフェイク時代の構造—2026年8月30日 吉澤有介

山口真一著、朝日新書、2026年6月刊 著者は、1986年東京生まれ、慶應義塾大学経済学部卒、同大学院経済学研究科で博士(経済学)、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター主任研究員を経て、現在は教授。専門は計量経済学、社会情報学、情報経済論。NHKや日本経済新聞などのメデアに出演。受賞歴多数。主な著書は「スマホを持たせる前に親子で読む本」ほかがあります。
フェイク情報には、ほとんどの人が誤りに気づかないまま、受け止めてしまう恐ろしさがあります。「自分は批判的思考ができている」と自信を持つ人ほど、引っ掛かりやすい。しかも善意で、役に立つかもしれない」と、拡散してしまうこと少なくありません。スマホで、つい「これ知っている?ネット見たけど」などと、軽い気持ちで家族や知人に送る、ごく日常的な操作だけで、フェイク情報がたちまち社会に広がってゆくのです。
しかも最近は、生成AIの登場によって、さまざまな情報が、文章だけでなく、画像や音声まで簡単に生成できるので、「本物」と「偽物」の判別が難しい状況になってきました。フェイク情報は、ある一部の人が騙されるだけの問題ではありません。災害、選挙、詐欺、陰謀論などで、社会の基盤を揺るがし、民主主義や人間関係を損なう危険があるのです。
災害時には多くのデマが飛び交いました。2016年の熊本地震では、「動物園からライオンが逃げた」という投稿が拡散して、大きな騒動になりました。実際は事実無根で、投稿者は「偽計業務妨害の疑い」で逮捕されています。能登半島の地震でも、東日本大震災の映像が繰り返し流用されて、恐怖と不安を煽りました。救助要請を装ったデマまで流れたのです。
選挙のたびにSNSの大量の怪しい情報が流れます。典型的なのは「切り抜き動画」による印象操作です。現実を捏造して数字を誇張し、いかにももっともらしく見せるのです。

外国からの介入も大きな問題です。2016年の米国大統領選でも、指摘されていました。
詐欺の事例では、偽広告が急速に広がっています。著名人を装った投資詐欺は多くの被害者を出しました。生成AIが加速したのです。巨大プラットフォームの利益構造と深く結んでいました。厳格な本人確認にはコストがかかります。規制には限界があるのです。
陰謀論が、社会を揺るがしています。ある出来事の裏には、見えない黒幕がいるという、荒唐無稽な噂でも、人々に不安や不信の空気が濃いときには、次第に信憑性が出てきます。安倍晋三元首相の銃撃事件では、「真犯人が別にいる」という説が、ネットに溢れました。

米国では「Qアノン」という、政府やメデアが「闇の政府」に操られているとした話が拡散して、トランプ氏を救世主とする熱狂的支持者が、連邦議事堂に乱入しました。
フェイク情報を、人はなぜ信じてしまうのでしょうか。ハーバードの心理学者は、不確実性が高まるほど、人は不安を和らげる情報を求め、真偽を確かめずに飛びつくと指摘しています。感情を刺激する情報は、拡散しやすく、記憶にも残りやすい。訂正情報が出ても「継続影響効果」で、最初の印象を優先するのです。インターネットは、私たちに世界中の多様な情報を届けるはずでした。しかし、検索サービスには偏りがあります。デイープフェイクへの対策に正解はありません。一呼吸置いて、周囲と検証、吟味することでしょう。「了」

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