「融けるロボット」–テクノロジーを活かして心地よいくらしを共につくる13の視点— 2026年9月12日 吉澤有介

安藤 顕著、NPO法人ミラック、2025年3月間 著者は、三重県生まれ43歳のロボット開発者。早生だ大学先進理工学研究科で博士(工学)。早稲田大学理工学部、大阪大学医学部の研究者を経て、パナソニックに入社、ロボットの要素技術から事業化までの責任者、グループ全体の戦略構築を行う。一貫して人と共存するロボットの研究開発、社会実装に従事。日本機械学会ロボット部門技術委員長、大阪工業大学客員教授などを務め、文科大臣若手科学者賞、経産大臣ロボット大賞他多数を受賞。
本書は、ロボット・テクノロジーを実社会に実装して、顧客に鍛えられ、成熟して人に融け込んでゆく様子や、理想の社会像を目指し、挑戦する現在と未来の可能性を論じています。
産業用ロボットは、自動化による省力化、省人化、遠隔操作などで大きな成果を挙げました。工場で活躍する産業用ロボットは、基本的に一定の形状をした硬い金属部品を扱います。速く、正確に働くことが重要でした。そのロボット技術が、サービス産業に注目され、新たな市場が生まれたのです。物流、飲食店、病院、介護、オフィスや家庭用などの分野です。
1999年にアメリカで、手術用ロボット「ダビンチ」が生まれ、遠隔手術を行いました。世界で年間2千台が導入され、利益率は産業用を超えています。すでに特許が切れ、競争が始まりました。2016年中国で生まれた配膳ロボットは、数年で世界を制覇しました。物流業界でもロボット活用が本格化しています。中国は、ロボット産業のトップになりました。
しかし、ロボット活用が、なかなか進まない分野があります。著者の手がける介護分野などで、対象が柔らかく、不定形で、個体差があるため、特別のアプローチが必要なのです。
ここで注目されたのが、RX(Robot Transformation)で、技術革新だけでなく、業務、事業、社会を本質から変えることでした。ロボット以外も含めた全体最適化を目指すのです。
豆腐メーカー相模屋食料は、従来、水槽で冷やした豆腐を、人手で掴んでトレーに乗せ、梱包していました。この作業の自動化は極めて困難です。そこで作り立ての熱い豆腐を、そのままトレーで受け、ロボットがそのトレーを掴んで梱包することにしました。豆腐は熱いままの方が、衛生的でしかも美味しい。水で冷やしていたのは、人が掴むからでした。熱いまま梱包することで、消費期限は5日が15日と3倍になり、販路が遠くまで広がりました。気象協会と連携、需要予測もして、年商32億円が、7年後には327億円になりました。
ロボットには、開発者にとって想像以上の魅力があり、その「魔力」に襲われると、時には冷静な判断ができなくなります。開発側は課題に対して、ついあらゆることを自動化によって解決したいと思ってしまうのです。対策としては、まず徹底的に現場を分析して、アナログによる改善を進め、ロボット化にはこだわらないことです。病院の事例がありました。
ある調査によると、介護従事者の8割が腰痛に悩んでおり、その主因が、ベッドから車椅子への移乗作業にありました。ここで問題の本質を探った結果、移乗ロボットではなく、ベッドの一部が車椅子に変形する「リショーネ」が開発されました。移乗作業を無くしたのです。ロボットは目的ではなく手段です。当面の課題に対し、「圧倒的当事者意識」を持って顧客の想いを受け止め、ウェルビーイングを目指す、多くのヒントがここにありました。「了」

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