メールマガジン蔵前バイオ通信 第73号をお届けします。
コロナウィルスのオミクロン株による第6波もようやく落ち着いてきました。しかし、やはりしばらくは、対面での研究会などの活動は期待でないと思います。私たちの活動は、リモート会議を主体として、研究会、情報交換、個別案件の打ち合わせ等コロナ感染症対策をきちんと行い、積極的に進めています。
本号でも私たちの活動による、自然エネルギー利用の有益な情報をご案内いたします。ご利用ください。また、私たちの活動に興味をお持ちの方々の参加をお願いします。
*******************目次 ***************************
- 活動トピックス(編集部)
- 技術情報検討会(吉川)
- 事業化検討会(岸本)
- アルジェ研究会(廣谷)
- 熱エネルギー研究会(進藤)
- 林業システム研究会(篠崎)
- Kシステム開発プロジェクト(米谷)
- Kシステム普及プロジェクト(米谷)
- 竹林プロジェクト(篠崎)
- ホームページによる情報発信(編集部)
1.活動トピックス(編集部)
●2月例会後に勉強会を開催
演題 竹炭を混合させた土壌の屋上緑化への適用可能性
講師 千葉工業大学創造工学部建築学科 石原沙織准教授 博士(工学)
石原先生は東京工業大学で建築を学び博士号を取得、現在千葉工業大学准教授として活躍しています。研究テーマの一つに屋上緑化があり、その土壌軽量化にポーラス竹炭配合を提案したことで共同研究が始まりました。屋上緑化に関する設計上の注意点として①荷重設計②耐風設計③排水・防水設計、耐根性の確保などで、土壌として考慮すべき事項は、比重、保水・排水特性、PH,チッソリン等の栄養、土壌生物の多様性、施工性、耐久性です。実験的研究の結果、ポーラス竹炭を配合することは土壌軽量化など、これらの条件を満たし適用が可能であることが示されました。屋上緑化土壌へのポーラス竹炭の適用可能性・有効性が学問的研究で実証された意義は大きいものです。さらに、建築材料の漆喰にポーラス竹炭を配合することで良好な結果が得られるという研究結果の報告がありました。今回は、発表後活発な質疑が行われ、時間を延長しました。
2.技術情報検討会(吉川)
COP26で日本は2030年までに再エネ電力を36~38%まで増やす事を公表しています。具体的には、太陽光発電及び風力発電を大幅に増やす計画です。そこで、太陽光及び風力発電の増強に伴う問題点について検討しました。
急成長中の再エネ電力の主役である太陽光発電は、2020年度年間発電量が8.9%に達していますが、太陽依存のため稼働率が2021年度推定で13.1%と低く、常に変動することが、電力の安定供給上の大きな問題となってきています。既に一時的な出力抑制も実施されたと報道されています。
今後更に増強する計画ですが、発電量が年間13.1%を上回るようになると、理論上、日中ピーク時の定格出力が国内需要を全て賄える量となりますが、現状ではこの全量を受入れることは困難です。再エネ電力の政府の目標値を達成する為には、送電網の増強と大量蓄電設備の設置等が早急に必要でありますが、検討が始まったばかりのようです。今後に注目したいと考えています。
このほか、検討会では、DACやCCSに関する技術情報調査の報告や自動車業界の最近の動向に関する情報等を取り上げて検討しました。
3.事業化検討会(岸本)
最近のK-BETSの事業活動に関するトピック的なテーマ・案件は以下の通りで、多彩な議論がなされています。
・Kシステムの開発推進では、新年度に向け補助金を活用した開発推進を目指して現在検討を進めています。
・水と海に関する公開セミナーの本年秋から開催することが事業推進検討会で了解されました。K-BETSの対外発信活動の一環の公開セミナーとなる予定です。
・また、事業推進検討会の進め方についても、更なる効果的な事業活動の発掘・推進を今後検討していく予定です。
4. アルジェ研究会-(廣谷)
自動車についてCO2排出を削減するには、電気自動車(EV)に注目が集中しています。EVは走行中にはCO2を出さないが、CO2発生量は充電に使用する電源構成に依存します。現在、日本、中国では化石燃料がそれぞれ約80%、70%でありCO2を排出する火力発電が多く使われています。EUの電力は再エネが約50%に近く、それ以外は石炭、天然ガス等の火力発電および原子力が使われており、比較的CO2発生量の少ない電源構成です。また、自動車の製造時では、EV車では電池製造でのCO2排出量が多く、ガソリン車に比べ約2倍と言われています。CO2排出量は走行時だけでなく、ライフサイクルにおける評価も必要です。EU委員会は再エネを推進し、エンジン禁止、HV禁止、EVに集中と言う方針を出しています。日本の電源の現状では、ライフサイクルでみるとEVに比べ蓄電池の負荷が少ないHVの方がCO2排出量は少ない評価もあります。従って、現状での車の脱炭素のためには、EVと共にHV、その他バイオディーゼル等との組み合わせによる対応が望ましいと考えます
5.熱エネルギー研究会(進藤)
欧州企業が南米チリで再生可能エネルギー由来の「グリーン水素」の製造に動き始めています。チリでは大規模な太陽光発電の適地があり、水素製造に必要な発電コストが安いからです。例えば、フランスの大手企業はチリのグリーン水素プロジェクトに投資し、2025年までに北部の砂漠地帯で太陽光発電による水素製造プラントを稼働させ、施設の大型化を目指しています。チリ政府は、水素製造の発展が産業育成や雇用創出につながるので海外企業と連携し、製造された水素は世界中に輸出する計画を進めています。輸送の液化水素運搬船は川重が建造していますが、水素の圧縮・液化時には大きなエネルギーが必要となり、サプライチェーン構築が課題になります。
6.林業システム研究会(篠崎)
2021年度の活動を総括しました。
①生態工学会誕生の主役である大政謙次東大名誉教授を高崎健康福祉大学農学部に訪問
②その結果生態工学会年次大会で合計8件のNPOセッションを開催することに成功
③エコメッセ2021ちばオンライン出展し、視聴数・評価数はいずれもトップ
④建築学会大会にポーラス竹炭の応用を発表:屋上緑化を篠崎が、漆喰を石原先生が発表
⑤エコプロ2021に出展:第72号に掲載したとおりで、会員募集写真も撮影・活用中
⑥商品開発中の物件多数:集材システムの実用化推進、ポーラス竹炭活用商品の試作など
7.Kシステム開発プロジェクト(米谷)
Kシステムのさらなる改良を進めるために、令和4年に実施予定の林野庁関係の助成事業への応募を検討しています。これまでの国の助成金は大規模化、自動化、無人化などが主な対象でしたが、今回は、Kシステムの狙いである小規模、安全性、実用化などが対象になってきているので受託の可能性が出てきています。
8.Kシステム普及プロジェクト(米谷)
飯能の山主が、所有する山林を寄付したいとの話が出てきている。贈与税を削減するために取得者は森林の整備や利用を行うことになる、小規模で急斜面の山林が多いのでKシステムが使用される作業が増えることが期待される。
9.竹林プロジェクト(篠崎)
①炭化炉の販売:代理店候補事業者が着々と準備を進めています。コロナ明けに関係者の初顔合わせを企画します。今まで個々の会合はありましたが一同に会することはありませんでした。
②商品開発:企業との共同開発を初めて手がけましたが、解決すべき点が明確になり中断中です。
③ビジネスアイディア:日本財団への提案が引き続き検討されています。
④JICA再挑戦に助人:国連で活動した人から5項目の有用なアドバイスを得ましたので、来年度に向けて着実に前進する所存です。
⑤その他商品化の可能性が芽生えたものがありますが、資金難のため進めません。新年度は助成金などの資金調達を達成したいと思っています。
10.ホームページによる情報発信(編集部)
主に会員吉澤有介が要約した一般図書。会員の活動報告・評論・提言・主張および情報紹介です。
サロンの話題・調査・活動報告 (ダブルクリックでリンク先情報が表示されます)
- 「雪と人生」中谷宇吉郎著、角川ソフィア文庫、令和3年12月刊 2022年3月7日 吉澤有介
- 「イヴの七人の娘たち」ブライアン・サイクス著大野晶子訳、河出文庫2020年2月刊 2022年3月5日 吉澤有介
- 「犬はあなたをこう見ている」-ジョン・ブラッドショー著、西田美緒子訳、河出文庫2016年5月刊 2022年3月1日 吉澤有介
- 「地球外生命」小林憲正著、中公新書2021年12月刊 2022年2月16日 吉澤有介
- 「ウィルスと共生する世界」フランク・ライアン著、多田典子訳、福岡伸一監修、日本実業出版社2021年11月刊 2022年2月1日 吉澤有介
- 「刀伊(とい)の入寇(にゅうこう)」関 幸彦著、中公新書、2021年8月刊 2022年1月25日 吉澤有介
特定非営利活動法人 蔵前バイオエネルギー(略称 K-BETS)(https://www.kuramae-bioenergy.jp/)〒108-0023東京都港区芝浦3-3-6
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