蔵前バイオ通信 第83号2024年3月15日

蔵前バイオ通信 第83号2024年3月15日
メールマガジン蔵前バイオ通信 第83号(2024年3月15日)をお届けします。
今冬は、暖かい日があったり、急激に寒くなったり気候が安定しません。気候変動に対する対処の必要性と、我々の活動の重要性を感じています。
今回も、私達の活動状況と、自然エネルギー利用の有益な情報をご案内いたします。ご利用ください。また、私たちの活動に興味をお持ちの方々の参加を期待しています。ホームページより連絡ください。

*******************目次 ***************************
活動トピックス(編集部)
1.技術情報検討会(吉川)
2.アルジェ研(廣谷)
3.熱エネルギー研究会(進藤)
4.林業システム研究会(篠崎)
5.Kシステム開発プロジェクト(米谷)
6.竹林プロジェクト(篠崎)
7.ホームページによる情報発信(編集部)

1.活動トピックス(編集部)
各研究会の活動を行ったが、さらに、この時期は、各プロジェクトリーダーを中心に、次年度活動について、現状の課題の分析、活動の内容の立案、そしてそのための準備活動を進めています。

2.技術情報検討会(吉川)
JERAの武豊火力発電所において、1月31日に爆発事故があり火災が発生しました。この発電所は1960年代に石炭火力として建設され、一時は老朽化のため停止の予定だったようですが、大震災よる浜岡原発の停止対応に伴い再稼働し、その後バイオマス混焼に改造したとのことです。
この火災が発生する前に、バイオマス発電において火災事故が相次いで発生しているとの記事が、日経Xテックに掲載されていました。記事によれば、2020年10月以降9件の事故が報告されており、そのほぼすべてが大型の混焼発電設備の木質ペレット又はチップの貯蔵、搬送設備での事故です。原因は以前から知られている木質燃料の自然発火と粉塵爆発によるとされています。
これらの大型バイオマス発電は国のFIT制度を背景に急増しており、特に石炭との混焼は温暖化ガス削減対策をとっていると見做され「石炭火力の廃止」を当面逃れることができます。大量の木質燃料は海外から輸入に依存しており、品質のばらつきが事故の大きな理由とされています。とはいえ理由にかかわらず火災事故は容認できるものではありません。早急に安全基準の見直しが必要であると考えます。
検討会ではこの他に、化学合成でCO2から糖を作る研究の紹介や電力会社が太陽光発電に対して行う出力抑制の状況等を取り上げて議論しました。

3.FT合成によるSAF製造現状 アルジェ研(廣谷)
FT合成はドイツが第一次世界大戦中に開発した技術で、石炭を高温、高圧にし、途中CO、H2を経由して、最終的に炭化水素を造ります。そして自動車、飛行機に使用していました。当時ドイツは英国、米国に石油を抑えられていたので、石炭に頼るしかなかったのです。戦後、米国、英国は戦勝国の戦利品としてFT合成技術を取得し、その後その技術を研究し、原料を石炭に替えて木材、都市ゴミとできる技術を開発しました。そしてバイオジェット燃料(BJF)、SAFを完成しました。
米国ではRed Rock Biofuels(オレゴン州Lakeview)が森林廃材等巾広いバイオマスを原料とし、FT合成でBJFを造っています。Fulcrum BioEnergy(ネバタ州Reno郊外)は家庭ごみの埋め立てゴミを原料として使ってFT合成を行いSAFにしています。
英国に関してはSolena Fuels Corporation(米国)がロンドン郊外で都市ゴミ利用してFT合成でSAFを造っています。それにVelocys社(英国)が貢献しました。
日本のFT合成はどうなっているか。少し前から、中部電力、三菱日立パワ-システム、東洋エンジが中心になって実施し、三菱重工業、産業技術総合研究所、富山大がサポ-ト的に動いていました。グル-プ的に動いています。2020年にSAFの許可を貰う計画でありましたがそうは行きませんでした。日本は木材が高いし、都市ゴミも検討していると思います。日立パワ-システム、産業技術総合研究所、富山大がリタイヤしました。中部電力は子会社のJERAに替わり、伊藤忠が加入しました。2024年に結論を出すと言っています。成功を期待します。
持続可能な航空燃料

4. 熱エネルギー研究会(進藤)
 電力を位置エネルギーとして貯蔵する「重力蓄電」について調査・報告しました。原理は揚水発電と同じですが、「ブロック」をクレーンにより持ち上げ、電気が必要な時に落下させて発電する仕組みです。
太陽光や風力発電は変動電源であり出力制御により余剰電力が生じます。系統網接続が無い場合は、電力の貯蔵設備が必要になります。現状ではリチウムやNAS電池などによる大規模蓄電池が一部設置されています。これに対しブロック利用の重力蓄電は、発電コストの安さ、耐久性、建設期間の短さなどの利点が提唱されています。事例として、スイスEnergy Vault社は、スイスにコンクリートブロックとクレーンを使った重力蓄電システムの実証設備を開発しています。更に、米DG Fuelsが米国ルイジアナ州で大規模太陽光発電システムの平準化に、この重力蓄電500MWh規模の商用システムを稼働させる計画です。この計画では、昼間の電力で、ブロックを巨大な自動倉庫型の建物に格納し、夜間にはブロックを順次落下させる制御により地域電力を供給する設備です。
重力蓄電は設備規模が大になると思われますが、変動電源による電力を貯蔵・利用する地域自立型のエネルギー供給システムの一つの事例と言えます。

5.林業システム研究会(篠崎)
(1)昨年暮れに開催されたエコプロではK-システムの改良モデルを出展しましたが、その後の活動も大事です。名刺交換して入手したメルアドを「水と環境」講演会などの案内時に使わせてもらいます。
(2)K-システムは実用化がもう少し先のようで、早期の実用化が待たれます。その活用の具体的提案も重要だと考えています。
(3)ポーラス竹炭は新しい特性をさらに追い求める必要があります。考えられるすべての特性を把握したら、思いもよらない活用方法が見いだされるでしょう。
(4)早生桐は竹と比較的近い性質があり、その可能性を探しています。まずは生育状況の把握です。1年に1m内外の樹高になりました。急峻な山奥に植林しても作業が安全になされそうです。林業の事故発生率が他の業種の10倍ほど高いと言われていますので、その軽減に役立つでしょう。

6.Kシステム開発プロジェクト(米谷)
・南都留森林組合関係
1月に南都留森林組合を再度訪問しました。Kシステムを使う予定の山林の下見をおこないました。緩斜面のところは従来の方法で引き出すが急傾斜のところでKシステムを使う予定です。作業道の開設と伐倒・集材を行う業者と4月に現地で作業道の入れ方やKシステムの設置位置の検討などの打合せを行うことにしました。4月には工場でKシステムを説明し使い方についての実習を行います。実際にKシステムを使うのは8月以降です。
・新滑車類の開発状況

改良を重ねてきた新滑車と外止め付きフックの試作品は2月に製作しました。構造が単純で軽量な滑車の試作品は製作中です。いずれも4月に工場でテストを行い、結果によっては8月の南都留での作業で試用の予定です。
・まだまだ荒廃が進む森林の再生や森林資源の利活用にご関心のある方は是非ご参加ください。

7.竹林プロジェクト(篠崎)
(1)ポーラス竹炭の熱伝導率と電気伝導度を測定しました。比較材の窯焼き竹炭とは値が予想以上に大きく異なりました。今後はこの特性の違いを利用して権利化や利活用を推進したいと考えます。利活用には販売網を先に決めるのが最適です。
(2)ポーラス竹炭の融雪剤への活用方法の最終段階として屋根への活用方法を実験していますが、当地は雪が降らないので実用化が捗りません。軽井沢の友人頼みです。
(3)他の活動は経費精算が複雑で時間を取られ、進展していません。当NPOは資金不足で活動が制限されています。来年度は成金や寄付金の獲得が必要です。

8.ホームページによる情報発信(編集部)
主に会員吉澤有介が要約した一般図書。会員の活動報告・評論・提言・主張および情報紹介です。
サロンの話題・調査・活動報告 (ダブルクリックでリンク先情報が表示されます)
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「ヒルコ」—捨てられた謎の神—2024年2月20日 吉澤有介
「生きものたちの眠りの国へ」  2024年2月18日 吉澤有介
「進化生物学者、身近な生きものの起源をたどる  」2024年2月5日 吉澤有介
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「生きている」とはどういうことか」—生命の境界領域に挑む科学者たち–2024年1月17日 吉澤有介
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