蔵前バイオ通信 第80号 2023年9月15日

メールマガジン蔵前バイオ通信 第80号(2023年9月15日)をお届けします。
コロナ禍収束後の、夏を皆様どのように過ごされましたか、花火大会のような様々な行事が復活して、充実した夏であったことと思います。私たちは7月の活動の後、8月は充電期間としておりました。9月から対面、オンライン、現場と多様な、エネルギーに満ち溢れた活動を展開して参ります。
今回も、私達の活動状況と、自然エネルギー利用の有益な情報をご案内いたします。ご利用ください。また、私たちの活動に興味をお持ちの方々の参加を期待しています。ホームページより連絡ください。

*******************目次 ***************************

  1. 活動トピックス(編集部)
  2. 技術情報検討会(吉川)
  3. 事業化検討会(岸本)
  4. アルジェ研(廣谷)
  5. 熱エネルギー研究会(進藤)
  6. 林業システム研究会(篠崎)
  7. Kシステム開発プロジェクト(米谷)
  8. 竹林プロジェクト(篠崎)
  9. ホームページによる情報発信(編集部)

1.活動トピックス(編集部)
・公開講座「水と環境」第2回を7月29日にオンライン開催しました。
(1)台湾の農業用灌漑施設「嘉南大圳(カナンタイシュウ)」はどう作られたか
講師 宮地利彦 蔵前バイオエネルギー 常務理事
工期10年、1930年竣工、15万ヘクタール(香川県に匹敵する面積)の広大な平原であるが灌漑施設がなく、不毛と言われた台湾南部の土地を、肥沃な農地に変えた土木工事と人物に関する講演  残念ながら、知らない人が多かった。
(2)私の琵琶湖疏水
講師 河野通之 蔵前バイオエネルギー 理事
京都市を復活させた、明治期の一大土木工事であった琵琶湖疏水の開発の講演
上記2件のプレゼン資料をHP「公開講座  プレゼン資料」に掲載しましたのでご覧ください。
これまでで、ほぼオンライン講座の技法を習得・確立することができました。今後、さらに改善・充実して参ります。

・バイオマスセミナー開催
コロナ禍により中断を余儀なくされていたバイオマスセミナーを KVS主催、当NPO共催で開催の運びになりました。会場は2023年11月7日 東工大蔵前会館1階「ロイアルブルーホール」(東急大岡山駅前)及び、オンライン配信(Zoom使用)です。
詳細は「バイオマスセミナー開催案内」をご覧ください。また、このサイトから参加申し込みを行なえます。

2.技術情報検討会(吉川)
東京証券取引所は、10月から常設の排出量取引所を開設すると発表しました。新しい取引所では、透明性の高い市場取引を導入して参加者を増やし、企業による温暖化ガスの排出量削減を後押しすると説明しています。排出量取引とは、再生可能エネルギー設備(太陽光や風力など)の新設や森林保全プロジェクトなどに伴う二酸化炭素(CO2)排出量の削減分を売買する仕組みであり、これによって自社だけでは減らしきれない分を、企業が購入することで相殺できる仕組みです。
日本の排出量取引は、欧州連合(EU)などと比べて数量が少なく、取引価格も大幅に低くなっています。この差異の理由は、カーボンプライシング政策の違いにあります。カーボンプライシングは、温室効果ガスの排出に対して価格を設定することで、排出者の行動を変える政策手段です。具体的な手法としては炭素税や排出量取引があります。日本の温暖化対策税は、他国の炭素税に比べて水準が低く、また企業の排出量取引もまだ義務付けられていません。企業への炭素税の引き上げや排出量取引への参加の義務化、排出枠の厳格化などは、排出権取引価格に影響を与える要因となります。これらの環境政策の強化や企業の取り組みによって、排出権市場は変動することになりますが、その結果として低炭素社会への移行が進展することが期待されています。
検討会ではこの他、下水処理場の脱炭素化へ向けての自治体の動きと、自働車メーカーの全固体電池への取組みに関する情報を取り上げ、議論を交わしました。

3.事業化検討会―(岸本)
現在国内でJクレジット制度による、CO2量の削減・吸収が進んでいます。今回はこの内容について簡単に紹介します。
Jクレジット制度は、省エネ設備や太陽光発電設備の導入や木質バイオマス燃料使用による石油系燃料のCO2の排出削減をしたり、また森林管理により吸収されたCO2量(t-CO2単位)を認証し、「クレジット(証券化された権利)」を発行したりする制度です。この制度により、自らも排出削減に努めているがさらに排出削減したい者への売買が可能となります。このような売買による市場メカニズムにより、地球温暖化対策の資金を循環させ、社会全体で最適に配置させることが目的となっています。
Jクレジットの認証制度の2023年6月現在の実績では、クレジットの認証回数は1,053回、認証されたCO2量は全体で895万t-CO2で、継続して増えています。その内訳としては、太陽光発電(487万t-CO2、全体の54.4%)、木質バイオマス(135.4万t-CO2、全体の15.1%)、その他コジェネレーション導入等となっています。
森林管理の分野では主として地方の森林組合や私有林を持つ企業等による植林活動および再造林活動による、CO2の吸収量と排出量の差を定められた手順に従い算定され認証されています(19.2万t-CO2、全体の2.1%)。森林管理によるJクレジットの取引価格は、現在、他の太陽光発電等の他のクレジットの取引価格より3倍程度は高く、その意味では森林管理によるCO2の吸収・削減活動が市場から評価されていると考えられます。
(上記に記載した数値等は、みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社 J-クレジット制度事務局 2023年6月のJクレジット制度について(データ集)より引用。)

4.アルジェ研 ゲノム編集による脱炭素  (廣谷)
 生物には、人間も微生物も木材も遺伝子があります。その遺伝子は糖の紐が有り、染色体の核が付いています。その種類は4種類でA(アデニン)、T(チニン)、C(シトシン)、G(グアニン)です。その核は人間も微生物も木材も同じものです。遺伝子はその核の数と順列が異なるだけで、生物としての違いが出て来ます。他の種類から核の塊を移植すると遺伝子組み換えであるが、同じ遺伝子で核を捨てる、あるいは並び替える事をゲノム編集と言います。欧米は美味しい物を造ったり病気を治したり実績を出し、ノーベル賞を取りました。日本政府は慌てて会社、団体に相談に乗り出しました。
日本製紙は、学会でSDIシステムを発表しました。遺伝子の安定した場所にセルラ-ゼの汚染した土壌菌を付けます。そしてセルラーゼは木材チップとなった時にセルロ-スを分解し、やがてアルコ-ルにし、やがてSAFにし、旅客機を飛ばすのです。遺伝子の安定な場所は染色体核を捨てる事によりスペ-スが出来ました。つまりゲノム編集です。汚染された土壌菌は肥料と共に根から入り、木の細胞に入り、安定的にくっ付き、その時を待つのです。

5. 熱エネルギー研究会(進藤)
資源循環型の社会形成においては、廃棄物を単純焼却せず、資源としての活用が、CO2排出削減において重要になると考えられます。その事例として、キューピー(株)が実施しているメタン発酵によるバイオマス発電の仕組みを検討しました。同社は、多種のマヨネーズ製造の切替え時で残渣となる食品廃棄物を家畜の排泄物と混合してメタン発酵させ、発生ガスをバイオマス発電に利用しています。発酵残渣は有機肥料として利用します。施設は茨城県の2工場の他、神戸工場等5カ所に拠点があり、年間980トンのCO2削減になるとのことです。
メタン発酵によるバイオガス発電の原料は、地域で発生する生ごみや家畜の糞尿などの廃棄物であり、これらは年間を通し調達可能なので、太陽光発電の様な日照変動は無く、酪農施設内など地域での電力供給が可能となります。これは地産地消型の資源循環活用と言えます。

 6.林業システム研究会(篠崎)
(1)松枯れに続いて「ナラ枯れ」が日本列島を襲っています。東大千葉演習林の林長の講演を聞いてよく解りました。ただし、その機構と対策に関しては疑問が残ります。松枯れの場合と同様に、原因と結果が逆ではないかと感じられたので、メールで質問したが、本件に関しては回答が届いていなません。
(2)松枯れに対して竹炭散布・埋設が有効であることは広島大学ですでに研究されていますが、ナラ枯れに関しては途に就いたばかりです。被害の著しい群馬県の山林において研究が進められています。そして、ポーラス竹炭の散布効果が見えてきたので、学会発表を行っているところです。拡大防止活動にはKシステムの活用が有効であると考えられるので、実際の山で検証してみたいと考えています。
(3)早生桐の活用に着手しました。6月末に苗を購入し、種々の場所に植えてその成長を観察しています。直近の成長状況を観察し、写真撮影しています。成長度は①蜜柑園>②庭>③グランド>④鉢植えの順です。①ではすでに1.5m程度に成長しましたが、④では0.3m程度です。早生桐もバイオ炭としての活用が期待されます。

7.Kシステム開発プロジェクト(米谷)
集材ライン途中に置いて、障害物の回避等の目的で使用する滑車の改良については、最終試作品設計を完了し、その製作先を調査中です。現在まで、数社調査しましたがまだ確定していません。一方、集材をチェーンに掛けるフックについては、実際に集材作業にKシステムを使用した業者からの要望が強い外れないフックについて設計完了しました。これから製作先を検討してまいります。
現状では、Kシステムの使用実績を出す活動が重要です。これから、実作業に使用してくれる業者を探索していきます。まずは森林・林業の活性化を進め始めた飯能の訪問から開始します。

8.竹林プロジェクト(篠崎)
(1)「竹精」はクラフトビールにおける風味の添加で開拓が可能と思われましたが、相手の都合で中断しました。しかし、この方法は可能性を秘めていると考えられるので、今後も継続します。なお、日本酒路線は困難で可能性が低いと判断し撤退することにしました。
(2)ポーラス竹炭の農業への活用は徐々に広まってきていますが、工業的活用は緒に就いたばかりです。ポーラス竹炭の種々の特性を睨みながら、工業的生産、つまり大量生産の可能性を探っています。
(3)ポーラス竹炭の製造現場の写真が各地のFacebookに掲載されるようになってきた。ただし、作業方法をよく観察すると危険が感じられます。火を扱うのに半袖上衣で作業をしていたり、火に近づいて短く切った竹を投入したりしていますが、火の粉の飛び散りで火傷や延焼の危険性があります。Facebookでは「いいね」をしながらも警告しました。林業は他の業界よりも10倍以上の危険性を伴うことを熟知して作業をしてほしいものです。

9.ホームページによる情報発信(編集部)
主に会員吉澤有介が要約した一般図書。会員の活動報告・評論・提言・主張および情報紹介です。
サロンの話題・調査・活動報告 (ダブルクリックでリンク先情報が表示されます)
「荘 園」(しょうえん)—墾田永年私財法から応仁の乱まで—2023年9月12日 吉澤有介
「ココロ」の経済学 2023年9月12日 吉澤有介
はじめての動物倫理学   2023年8月28日 吉澤有介
スパコン富岳の挑戦 2023年8月23日 吉澤有介
超遺伝子(スーパージーン) 2023年7月31日 吉澤有介
エイリアン 2023年7月18日 吉澤有介
生き延びるための流域思考 2023年6月28日 吉澤有介
世界史の針が巻き戻るとき 2023年6月25日 吉澤有介

特定非営利活動法人 蔵前バイオエネルギー(略称 K-BETS)
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