土屋 健著、ハヤカワ新書、2023年6月刊 著者は2003年、金沢大学大学院自然科学研究科を出たサイエンス・ライターです。科学雑誌ニュートンの編集者を経て、現在はオフィスジオ-パレオントの代表。「リアルサイズ古生物図鑑(古生代編)」や「生物ミステリー」シリーズなど多数の著書があり。2019年、サイエンス・ライターとしては、初の「日本古生物学会貢献賞」を受賞しています。
日本列島には、たくさんの化石が眠っており、研究者や愛好家、それに土木工事などによって、毎日のように発見されています。それらの古生物が、もし現代に生きたまま出現したら一体どのようなことになるでしょうか。西暦20XX年に、「時空を歪める霧現象」が発生して、今は絶滅した古生物たちが、突然に出現しました。もといた場所に出現したのです。
房総半島の「鋸山」の南に、フェリーの金谷港があります。この港にオットセイが出現しました。「イノウエオットセイ」という古生物です。アメリカやメキシコだけに近縁種がいます。太平洋を時計回りに、黒潮に乗って渡来したのでしょう。成田国際空港には、霧の中から突然「ナウマンゾウ」が出現して、空港が一時閉鎖されるという大騒ぎになりました。
銚子の「犬吠埼灯台」の下に、大型のアンモナイトがいました。それも異常巻きで「オーストラリセラス」という変種です。この仲間は、北海道にもいました。銚子には白亜紀前期につくられた琥珀も産出しています。虫が閉じ込められたばかりでした。一方、多摩川では丸子橋付近に、トドとアシカが現れました。後世のアザラシのタマちゃんの大先輩です。横須賀港でも、護衛艦の甲板に「ナウマンゾウ」が現れました。一般公開されたそうです。
関東平野では、富岡製糸場に「ヤべオオツノジカ」が、雨の中をゆっくりと歩いています。その近くを流れる神流川では、恒例の「鯉のぼり祭り」の最中に、15mもある「スピノサウルス」が出現しました。人々は逃げ周りましたが、大人しく、襲ってはきませんでした。
北海道は、古生物たちで賑やかです。旭川市の北にある中川町のエコミュージアムセンターには、身長2,6m の恐竜が住み着いています。「パラリテリジスサウルス」です。近くの天塩川では、11mもあるクビナガリュウも出現するといいます。また夕張市の石炭博物館には全長4mの「鎧竜」が居ついていました。むかわ町では、有名な「カムイサウルス」が出迎えてくれます。全長9mで穂別の街をゆっくり歩き、霧の中に消えてゆきました。また道東の阿寒摩周湖国立公園にあるオンネトーの湖面に、時おり小型のクジラが現れるそうです。
本州では、やはり福井県です。恐竜博物館には40体を超える全身復元骨格があって壮観ですが、足元にちょろちょろとネズミのようなげっ歯類が走り回っています。ゴキブリの仲間もいました。いずれも恐竜時代に繁栄した古生物です。「フクイサウルス」らの恐竜たちも目覚めたようです。とくに勝山駅に現れた「フクイプリテクス」は、始祖鳥に似た鳥類の祖先でした。また大阪市の長居公園では、「ナウマンゾウ」や「マチカネワニ」が遊んでいました。明石海峡には、「アケボノゾウ」に「ヤマトサウルス」も、出現したそうです。
皆さんの地元でも、古生物が出現しているはずです。もし見つけたら編集部までご連絡ください。各地の博物館がお手伝いしてくれるでしょう。どうぞよろしくお願いします。「了」
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