蔵前バイオ通信 第65号 2020年11月15日

蔵前バイオ通信 第65号 2020年11月15日

メールマガジン蔵前バイオ通信 第65号をお届けします。
残暑も終わり、涼しさが戻ったのもつかの間、本格的な寒さの季節になってまいりました。今年は、例年のインフルエンザの流行に加えて、新型コロナという感染症の流行も懸念されています。最近はその第3波が来ているとして、感染症対策の強化が叫ばれています。そんな中でも、私たちは、安全安心を確保できる遠隔会議、現地活動などを組み合わせた効率的な活動展開しています。
本号でも私たちの活動による、自然エネルギー利用の有益な情報をご案内いたします。ご利用ください。また、私たちの活動に興味をお持ちの方々の参加をお願いします。
蔵前バイオ通信 第64号 2020年11月15日

*******************目次 ***************************
1. 活動トピックス(編集部)
2. 技術情報検討会(吉川)
3. 事業化検討会(岸本)
4. アルジェ研究会(廣谷)
5. 熱エネルギー研究会(進藤)
6. 林業システム研究会(篠崎)
7. Kシステム開発プロジェクト(米谷)
8. 竹林プロジェクト(篠崎)
9. ホームページによる情報発信(編集部)

1.活動トピックス(編集部)
●チェーン式集材装置(Kシステム)使用による間伐作業開始
集材現場はほぼ中央に尾根があり南、北にそれぞれ最大斜度約45度の斜面が広がる杉林です。地形、距離、斜度などを実測データに基づき計画し、現地調査を経て、Kシステムによる集材を開始することができました。文末画像参照
●10月例会後に勉強会を開催
講師 上村芳三 氏(蔵前バイオエネルギー 正会員)
タイトル:「私とバイオマス研究」
講師の鹿児島大学、ペトロナス工科大学における研究についてプレゼンをしてもらいました。バイオマスの熱分解による改質、燃料化、発生熱エネルギーの活用方法等幅広く学問的見地からの研究成果でした。
●11月例会後に勉強会を開催
講師 宮地利彦 氏(蔵前バイオエネルギー 常務理事)
タイトル:「Kシステムで日本の山を征服」 ― とても林業に適さないような地形に大量に植林された杉、桧を有用な資源に、本来の豊かな森林を復活 ―
10月末から始まった、Kシステムによる間伐集材作業の速報です。現地は、急傾斜、複雑な地形、といった日本の山の特徴をすべて備え、集材の困難さから、放置されてきた山林です。この地形で、Kシステムが以下に使われるか、林業家が編み出した、45度超の急傾斜におけるKシステム使用の滑落防止を達成した伐採方法など、臨場感あふれる画像、動画を中心に分かり易く報告しました。
●応援歌によるエール
吉澤会員がKシステム応援歌を作詞作曲してくれ、佳境に入っている秩父で行われている集材作業にエールを送ってくれました。

2.技術情報検討会(吉川)
内閣が代わって、菅首相は2050年までに温暖化ガス排出量をゼロとすると表明しました。ここで、日本の現状を見ると、自然エネルギー財団資料によると、2020年上半期に発電電力占める自然エネルギー比率が23%に到達としています。これは既に2030年度の政府目標値をほぼクリアしています。首相は30%以上に引き上げる意向のようですが、更に高く設定すべきではないでしょうか。
心配な情報もあります。経済産業省は「非効率石炭火力をできる限りゼロに」という方針を発表しています。ガス化複合発電及び超々臨界圧以外は非効率とし「該当する140基中の114基のフェードアウトを目指すとしています。しかし、省エネ法における発電効率の算出では「バイオマス燃料を混焼すれば、その分は燃料から差し引ける」また「発電時の排熱を有効活用すれば、その分発電量に加算できる」のです。つまり、燃料に木質チップを数%混ぜる、或いは熱回収温水の利用ができれば、低効率石炭火力も高効率と見做せ、フェードアウトの対象でなくなる事になります。日経エネルギーでは、これを「計算トリック!」と言っています。たしかにバイオ燃料の活用や排熱活用は重要課題ではありますが、低効率石炭火力の救済目的に使われるのは間違いでしょう。
現実的には大型火力の混焼への改造、排熱利用は簡単ではなく、この動きが実際に起きるのかどうか、今後の動きに注目する必要があります。

3.事業化検討会(岸本)
コロナ禍でしばらく休会していた事業推進検討会は10月より再開しました。現在事業推進検討会に登録されている案件/テーマ数はアイデア段階・提案段階を含めて30数件の多きに上っています。
最近では、ポーラス竹炭の”果物などへの鮮度保持(エチレン吸収)効果”や”室内の調湿(湿度吸収)剤としての効果”の実験報告や、Kシステム(間伐材集材装置)およびDECA2(伐採竹の竹炭製造装置)の洪水等の災害時の支援装置としての新規用途開発の提案など活発に議論が行われています。

4.アルジェ研究会 FT合成の原料についての提案(廣谷)
 今コロナで揺れていますが、それが解決出来れば次は温暖化の問題になります。日本が一番遅れているのはバイオジェット燃料(BJF)の問題と思います。EU委員会は2020年に燃料の10%をBJFにするように指導している。又20ケ国が造っている(5万㎘以上)が、日本はまだ極少量しか出来ていない、2020年には、本来63万㎘造るのでないと世界に付いて行けない。 BJFは4種類の方法が有ります。FT合成、ATJ(アルコールからBJF)、HEFA(廃油再生)、藻による油製造の4種です。そのなかで大量製造可の方法、低コストの方法(政府目標100円/ℓ)であるべきです。儲かるものではなくが、人として行わなければいけない仕事です。
 今回はFT合成を取り上げます。バイオを高圧高温でガス化し、触媒使用で油脂を造る方法です。FT合成の条件は種々有りますがDOEが1例を計算1)して103.8円/ℓと計算している。国状の違いを考慮しなければなりませんが参考になるデータです。
日本で、この原料であるバイオとして何を使うかが課題です、大量かつ安価なバイオは存在していません。あらたに探し出す必要があり、通常木材チップを使う場合が多いが、は高価です。Red Rock Biofuels(米国)は廃木材を利用してBJFのコスト目標を発表1)(101.7円/ℓ)しています。企業が発表する事は自信があるからです。ロンドンでは都市ゴミを使ったBJFを50万㎘に増やそうとしています。日本では、政府が検討している段階です。稲わらは、昔は田にすり込んでいましたが、優秀な有機肥料の使用ですり込む人は居ません。有効なバイオでBJFの安い原料となります。
各企業(中部電力、三菱日立パワーシステムズ、三菱重工、産業技術総研、TEC、JAXA等)が協力して頑張っていますが、2020年に飛行許可を取ろうとしていますが、まだ結論は出ていません。低コストを目指して廃木材利用、都市ゴミ、稲わら利用について検討していただきたいと思います。
注 1);JPECリポート

5.熱エネルギー研究会(進藤)
アンモニアNH3を水素エネルギーキャリアとする実証検討がなされています。サウジアラムコ(サウジ国営石油会社)と日本エネルギー経済研究所、三菱商事などは、脱炭素燃料アンモニアをサウジで生産し、日本に運送する実証事業に着手しています。サウジでは油田随伴の天然ガスから水素を製造してアンモニアをつくり。このシステムは副生のCO2は分離・回収して地中に圧入し、余剰はメタノール製造の原料とするCO2を系外排出しない構成です。アンモニアは日本に輸送し、発電用のガスタービンにて燃焼試験を実施します。サウジと日本では実証データを基に、アンモニアの大量生産および日本やアジアに運ぶサプライチェーンを整備し、30年代の本格利用につなげる計画です。

6.林業システム研究会(篠崎)
(1)Kシステム関係近況報告(米谷):秩父での活動実施状況が報告された。引揚作業は問題なくできることが確認された。
(2)エコメッセちば(篠崎)➡11月1日に開催開始され、高評価を受けている。
(3)JICA第2回コンサルテーションの結果報告(宇都宮千亜希さん):申請に向けて担当者が一生懸命になっています。
(5)DECA2販売のための商流検討:ほぼ同意が得られたので次の理事会に諮る。
(6)熱発電(篠崎):部材加工完了。資金難が問題。実験は11月21日に実施。
(7)河川基金応募(河野):種々検討したが今回は申請を見送ることにしました。
(8)千葉県の畜産(岸本):畜産環境整備機構畜産環境技術研究所 研究総括監 道宗直昭氏の農業博@幕張メッセで講演を聞いた。「畜産の敷料の臭気対策について」道宗直昭氏と名刺交換する際に「竹炭はいいですね」と言われました。
(9)吉澤氏作詞・作曲の『Kシステムの歌』の練習をした。初めてのことです。

7.Kシステム開発プロジェクト(米谷)
10月から秩父大滝の45度を超える急斜面の杉の人工林においてKシステムを使った列状の伐倒・集材作業が開始されました。対象は、平均胸高径40㎝、樹高28mの杉1200本という本格集材です。これは従来の集材用機材では、経済的な集材が困難とされていた現場です。
伐倒時の滑落が懸念された急傾斜ではKシステムのチェーンを使って滑落を防止しながら牽引方向に伐倒する事ができ、本システムが集材だけでなく、伐倒作業にも適用できることが明らかになりました。さらに、途中に崖や岩などがある約45度の斜面の引き上げでは、グラップルやウインチと連携することで、お互いの機能の相乗効果で効率的集材が可能となり、単独の機材ではできない作業も連携することで可能となり、Kシステムの利用の幅が広がって来たといえるでしょう。
今回の集材作業は、これから耐久性などの検証をしながら約3ヶ月続けられます。

8.竹林プロジェクト(篠崎)
(1)JICA申請準備に注力しています。海外支援そのこと自体重要でありますが、その成果は日本にも良い影響をもたらします。申請書の締め切りが迫っているのでプロジェクトマネージャー、国内調整員兼技術専門家、国内会計員、および専門家(計測)の最後の頑張りどころであります。コロナ禍での応募であるので、採択されても実施時期に影響が出ることは予想されます。
(2)河川基金などの助成金応募も事前準備不足で進捗できずにいます。その他の助成金を含めて調査中です。

9.ホームページによる情報発信(編集部)
主に会員吉澤有介が要約した一般図書。会員の評論・提言・主張および情報紹介です。
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