「里山資本主義の現場を歩く 日本と欧州をつなぐ里山資本主義」三浦陽一著2020年7月6日 吉澤有介

(有)リナ・エ・ジュンコ・インターナショナル2017年4月刊

著者は、慶應大学卒で丸紅に入社、ドイツ、イタリアなどに長年勤務した後、イタリアからの輸入事業で独立し、毎年欧州出張をしています、その間、藻谷浩介の「里山資本主義に共感し、ビジネスマンの視点で欧州と日本の現場を歩きました。本書はその中間報告です。

・木質バイオマスが世界を救う!?

著者はまずペレットストーブに注目しました。欧州で最も普及しているのがイタリアです。2014年の世界のペレット消費量は2,300万トンで、そのうちイタリアでは290万トン(約13%)、ペレットストーブも220万台が使用され、ほとんどが家庭用です。ペレットストーブの販売数量でも、イタリアは年間25~30万台とトップで、オーストリアの8~9万台、ドイツの4万台が続きます。しかしイタリアではすでに飽和状態で、欧州に170社あるメーカーは過当競争になっているようです。欧州でのペレットの価格は、重量当たりでみると28~30円/キロでした。輸入も含めて石油、天然ガスよりも安くて安定しています。

そこで著者は日本の青梅市の東京ペレットや福島の業者を訪問しました。2015年の日本のペレット生産量は⒓万トン、工場は170か所でした。(920トン/工場)。欧州では年産20万トン規模の工場を4人で操業しているので、とても比較になりません。日本の価格は60円/キロ、欧州の2倍です。しかも熱量は灯油の半分ですから普及しないのも当然で、年間のストーブ生産量も3000台止まりでした。これは打開策を考えなければなりません。

・木造高層建築-CLT(Cross Laminated Timber)は丈夫で長持ち!

石造建築の本場欧州でのCLT高層建築の急増は衝撃的でした。欧州最初のCLT建築は、2013年のミラノの9階建3棟124戸の集合住宅です。かつて住み慣れた街でしたが、実際に立ち入って驚きました。17,000m2の敷地に、まるで石造に見えながら触ると暖かい。強度や耐火性はコンクリートに劣りません。また2012年にはロンドン東部のハックニー地区では、木材ファーストを宣言して、世界最大の木造建築の高層住宅が続々と建設されています。著者の子息がロンドン在住の建築家ですので、2016年に現場を見学してきました。まるでロゴを組み立てるようで、9階建も9週間の工期だったそうです。コンクリートに比べて20週間の短縮になりました。しかも同サイズのコンクリート建築よりCO2の排出量が1/25になるといいます。7~8階建のCRT住宅は、コンクリートと見紛うばかりでした。

日本での取り組みはまだ始まったばかりのようです。福島県湯川村に、延べ床面積387m2の2階建共同住宅が2015年に完成していますが、建築基準法が2016年に改訂されたので、今後の普及が期待されます。日本CLT協会のウェブサイトに注目しましょう。

・ミラノでみた新たな潮流—ミラノは環境先進都市。日本は?

タクシーの3割がプリウスで、中国製の電気自動車のシェアリング使用が盛んでした。自転車のシェアリングも目立ちます。環境社会化が進んでいることを実感しました。日本でも雪室の活用など地道な活動が見られます。里山資本主義探求の旅のレポートでした「了」

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