「免疫革命」安保 徹著 2021年10月6日 吉澤有介

講談社、+α文庫、2013年4月刊(電子版)

著者は1947年、青森県生まれ、東北大学医学部出身で、アラバマ大学を経て新潟大学大学院医歯学総合研究科教授になりました。免疫に関する数々の大きな発見をしています。

医学界には常識とされていても、変えるべき課題があります。ストレスによる消耗の連続で起こった発がんなのに、患者から消耗の原因を取り除くのではなく、逆に抗がん剤の投与で、さらなる消耗を加える治療が行われています。また私たちの身体の組織が、ダメージを受けると、当然に身体がその部分に血流を増やして、修復しようとします。これが炎症です。ところが現在の医療は、この血流増加に伴う熱や痛みを嫌って、消炎鎮痛剤やステロイド剤を処方して、血流を止める治療を行っているのです。これは変えていかなければなりません。

医学部では現在でも分析的な研究が主流です。抗体についての研究が中心でしたが、最近はリンパ球と免疫の関係が見つかり、遺伝子の研究も進みました。しかしそれでも細分化された免疫学では、実際のガンの免疫や自己免疫疾患、アレルギー疾患の免疫などの現場の医療には、ほとんど役に立っていないのです。現場は対症療法に頼るばかりです。

著者は、医療の現場に役立つ、生体の働きを全体的に捉えた免疫学を目指して研究を進め、白血球の自立神経支配の法則を発見しました。免疫システムの全体像がつかめて、病気の本体が見えてきたのです。この研究には、新潟の福田稔医師らの多くの仲間が参加しました。

ガンのほんとうの原因は、ムリが祟って起こる病気でした。働き過ぎだったり、悩みや悲しみだったり、交通事故による大きなケガなど、その人を心身ともに消耗させるようなストレスが襲い掛かって発がんしていました。これまでの医学では、外部から何かが入ってきて遺伝子に作用したとみてきましたが、発がんの原因は、本人の身体の内部にあったのです。

現在ガンは、早期発見で外科的に切除するのが一番で、進行したガンでは抗がん剤や放射線で、ガンを物理的に小さくする方法がとられています。しかし身体にとっては衝撃的な組織破壊となり、全身的な免疫抑制を起こします。リンパ球の数が激減して顆粒球が増え、免疫の機能が失われてしまうので、もしガンが再発したらもうお手上げになるのです。

著者は仲間とともに、白血球の自律神経支配の法則によるガン治療に取り組み、多くの事例でガンの自然退縮を実現しました。リンパ球を活性化して、患者のストレスに寄り添い、不安を除いて免疫力を高めてゆくと、治癒率が上がって、何と6~7割が治っています。

現代医学は、確かに飛躍的な進歩を遂げましたが、慢性疾患の難病にはほとんど対応できていません。膠原病、ガン、アレルギー疾患、関節リュウマチ、腰痛などの患者は増えるばかりです。医師は対症療法として薬に頼ります。以前なら薬も弱くて、大きなダメージはなかったのに、今の薬は効き目が強すぎて、交感神経が過度に緊張し、活性酸素を出す顆粒球が増加して組織を破壊します。慢性痛は、筋疲労による疲労物質の蓄積が原因で起こる血流低下から始まります。ここに消炎鎮痛剤やステロイドを使うと脈が早くなり、心臓に負担がかかって心肥大が起こり、血管が閉じて身体がすごく冷えます。この状態を続けると危険になるのです。やはり入浴やマッサージ、鍼などで、血行を良くすることが正解でした。「了」

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