ゲッチョ先生の「うんこいろいろ探検記」 2025年8月11日 吉澤有介

盛口 満著、木魂社、2025年6月刊  著者は、おなじみのゲッチョ先生です。1962年千葉県生まれ、千葉大学卒、飯能市にある「自由の森学園」の理科教員。5年後退職して沖縄に移住。現在は沖縄大学人文学部こども文化学科教授。多数の著書があり、そのいくつかはご紹介しました。
2020年の2月、著者が出張授業で上京すると、20年前に勤務した自由の森学園の仲間が、池袋で飲み会を開いてくれました。この学園は、教員も生徒も、教員同士もフラットな関係で、いまだに深いお付き合いをしていたのです。生き物屋の仲間たちはそれぞれがユニークな活動をしていました。その一人、長野に住む生き物写真家のYさんと、翌日懐かしい飯能の森を歩きました。Yさんは、「生まれたよ!ナナフシ」などの昆虫写真絵本を出して好評でした。今は、うんこの写真図鑑を企画しているといいます。そういえば長崎に住むFちゃんからも、今年うんこの年賀状がきていました。著者にも、知り合いの編集者から、うんこの絵本の提案がありました。「うんこ」の大波がきていたのです。そこで、飯能の里山歩きはうんこ収集の場となりました。
まずNさんの家で、ヤギのうんこを採集し、S沢に入るとアナグマの巣では、粘土みたいなうんこを撮影しました。よく見るとオオセンチコガネのカケラが入っています。意外な大発見でした。タヌキのため糞にはよくあるけど、これは珍しい。
沖縄に帰ると、日常が始まります。当時著者は、学長に選任されていました。会議が終わるとうんこの採集です。ヤモリのうんこ、オオコウモリのペレットを拾い、長野のYさんに宅配便で送りました。次いでヤンバルクイナ、そしてヌマガエルとカタツムリのうんこを採集、これもYさんに送りました。Yさんからもコウモリのうんこが届きました。うんこ交換会です。うんこの中身は実体顕微鏡で確認しました。
この頃、新型コロナ禍で、大学の授業はオンラインになっていました。しかし、仲間との交流は盛んです。Tくんからの便りは、いま大学の水産学部の修士で、竜涎香の問い合わせでした。調べてみると、竜涎香はマッコウクジラの腸管にできるもので、腸内で見つかったり、海岸に漂着したりするが、金と同じ価値があるといいます。竜糞とも呼ばれ、沖縄の海岸によく漂着した記録があり、最大92㎏もありました。蝋のような暗褐色か灰黄色の物質で、松脂のように柔らかく、独特の香がする。不老長寿の薬として、琉球王朝から徳川幕府に献上されていた特産品だったのです。
著者は小学校教員養成課程の授業で、うんこを取り上げました。ウサギのうんこでは、植物繊維の消化吸収で、巨大な盲腸に微生物を共生させていますが、消化しきれずに排出したうんこをもう一度食べて、丸くて繊維質の硬糞として出していました。
うんこの調査は続きます。イモムシやゴキブリのうんこ、タヌキの溜糞、イリオモテヤマネコのうんこ、そしてそこに集まる昆虫たちです。著者はそれぞれのうんこを樹脂で固めて、アクセサリーにしました。世界はうんこでできているのです。「了」

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