見るだけだった都市の樹林を、「材」として活かす時代へ2026年1月15日 湧口善之著、築地書館、2025年3月刊 著者は、東京都生まれ、大学では西洋美術史を専攻、建築設計事務所に勤務して世界各地を訪れ、建築と都市を研究して独立しました。木造建築、木材活用をテーマに、飛騨高山で修業し。現在は、東京で都市森林(株)を設立して代表取締役。さらに一般社団法人「街の木ものづくりネットワーク」の代表理事を務めています。
著者は、東京の街の木に着目して、都市林業を始めました。これまで全く木材として活用されてこなかった伐採現場で、多種多様な樹種と取り組み、製材や加工を行って、有効に活用するノーハウを確立し、都市で育った豊かな緑を循環させています。
街には多くの樹木が植えられています。しかし、それらは長い年月を経て、敷地の都合や、倒木の危険などで、やがては伐採される場合が出てきます。よく伐採反対運郷が、話題になりますが、やむを得ない事情があるのです。その樹木は、木材としては活用されることなく、可燃ごみとなるばかりでした。厄介者だったのです。
一般に街の樹木が、木材に利用されなかったことには、理由がありました。多くは内部が腐朽しています。繰り返される強剪定で、人間でいえば、爪や髪を切る盆栽などの手入れとは違って、毎年腕を落とされるようなダメージを受けているのです。
また樹形が不揃いでクセがあり、製材には向きません。電話1本で、市販のまっすぐな丸太が届く時代です。プロが見向きもしないのは当然のことでした。樹種の多さも難題でした。規格品にはなり難いのです。しかし著者は、時代に合わないことを承知の上で、伐採された街の樹木を、木材として活用する事業に取り組みました。
特別に思い入れのある木だから、木工品にして喜ばれるというケースもありますが、やはりきちんと採算がとれるように工夫しなければなりません。厄介者の「負債」を、価値ある「資産」に変えることを目指しました。伐採の企画提案から、樹木の診断、伐採、製材、乾燥、デザインや設計、製作、造園や施工まで、コストを考えながら、地域の人々を巻き込んで、進めてゆきました。実際には、小さな体験イベントから始めましたが、相手を喜ばせることで、おカネにもなり、地域に特別な施設や空間が出来てゆきました。一番、喜ばれたのは小さな木のスプーンづくりでした。クセのある木も、テーブルや椅子になりました。サクラの端材は、最高の燻製のチップになります。マテバシイやスダジイのドングリを食べる会もやりました。アク抜きをしなくても食べられます。緑地に親しむ良い機会になりました。材にならない丸太でも、キノコの栽培で喜ばれています。樹皮染めも人気がありました。都市林業は、「住民参加」から「住民主体」に変えてゆきました。「伐採・造材ワークショップ」が定着し、南町田の再開発では、伐採・活用から、苗木づくりまでの、都市森林の循環が実現しました。学校林も絶好の教材になっています。都市林業は感動的でした。「了」
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