松村一男著、角川選書ビギナーズ、令和7年11月刊 著者は、1953年千葉県生まれ、東京大学大学院人文科学研究科で博士。和光大学名誉教授。著書に「神話思考」全3巻(言叢社)、「神話学入門」(講談社学術文庫)、「はじめてのギリシャ神話」(ちくまプリマー新書)など多数があります。
人類は、腦を大きく発達させて、集団の知恵によって狩猟の効率を上げ、時間的な余裕が生まれました。言葉が生まれ、さまざまな知識を共有するようになります。
その赤ん坊は、まだ腦が大きく発達しないうちに生まれるので、大人の世話を受けて周囲の刺激を学習しながら成長してゆきます。人類は、こうして本能を超えた新しい知識を獲得することができるようになりました。未知を予測し、危険を避けてゆくための情報は、文字のない長い間、記憶によって代々伝えられてきたのです。
記憶には、二つの技法が有効です。一つはリズムに乗せることで、日本の七五調や、韻律で覚えます。もう一つが情報を物語にすることでした。人類は、自らのはじまり、世界のはじまりを、自然現象の謎とともに語り合いました。神話の誕生です。
世界の人々の話の筋道は、具体的にまとまってゆきました。その多くが天から舞い降りた白鳥などの、異種の動物との婚姻から始まり、失敗に終わるという「異種婚姻譚」でした。しかし「王家の始まり」だけは例外で、祖先が神と人の交わりから生まれたとして、支配の正当性を示したのです。「古事記」の日本神話はその好例でした。
また、始まりという「過去」があるなら、終わりという「未来」もあると考える人々も出てきました。「世界の終わり」がある。その代表が「洪水神話」です。世界は、洪水で滅びたといいます。しかしそれでは私たちは存在していません。少数の選ばれた人たちが生き延びて、再び新しい世界をつくりました。それが今の世界だというのです。神話には、始まりと終わりが対応する、「折り返し構造」がありました。
天地のはじまりにも、世界には共通の神話がありました。日本では、すべてが泥水であり、ギリシャでは巨大なカオスから世界が生まれました。インドでは、まず水があり、そこに卵が出現したと言います。宇宙卵型神話です。ゲルマン民族では、太古には海も大地もなく、ただ奈落の口だけがありました。そこに霜と熱風がかち合い、雫となって滴ると巨人が生まれ、その身体からさまざまなものが生じました。巨人型神話です。中国では、はじめは影だけあって形はなく、深くて暗い混沌の中から陰気と陽気が分離して、人や万物が生まれました。旧約聖書では、闇が混沌の海にあり、神の霊がそこに言葉をかけ、6日で世界を創造しました。土で人形をつくりました。
人のはじまりには、神による創造のほかに、北米では、人間は動物から進化したとありました。火と食物のはじまりの神話もありました。文化のはじまりです。
人間は、自分たちの世界のほかに、別の世界があると考えました。異界訪問譚では、浦島伝説があります。時間も異なる、死や不死の哲学のはじまりでした。「了」
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