「鳥たちが彩る日本史」—武将・文人と交わる8種類の鳥-2025年12月3日 吉澤有介

大橋弘一著、山と渓谷社、2025年10月刊 著者は、野鳥写真家。1978年早稲田大学法学部卒、日本楽器製造(現ヤマハ)勤務を経て45才で独立。図鑑、書籍などに作品を提供し、新聞、テレビ、ラジオ、自然誌などで、野鳥の魅力を発信しています。著書は「鳥の名前」(東京書籍)、「庭や街で愛でる野鳥の本」(山と渓谷社)、「日本野鳥歳時記」(ナツメ社)、「野鳥の呼び名事典」(世界文化社)、などがあります。日本鳥学会、日本野鳥の会会員。-鳥の名前には、人と鳥の関わりの歴史が秘められています。本書では、歴史上の人物と鳥との関係が、エピソードを交えて楽しく語られています。-
「ホトトギス」は、「万葉集」に最も多く登場しています。何と153首もありました。第2位が「雁」の66首、第3位「ウグイス」が50首ですから断トツです。ところが「記紀」には全くみられません。これは意外なことでした。確かにホトトギスの鳴き方は、鋭く響き渡ってその初鳴きは季節を知らせます。万葉歌人の大伴家持が、特に好んで「花鳥風月」の主役に取り入れました。家持の歌だけで64首もあります。その影響でしょうか、清少納言も、ホトトギスをべた褒めしていました。枕草子第41段の「鳥は」にあります。またその足指が、前後2本ずつの対趾足のために、四手から死出を連想して、柴田勝家が辞世の句を詠みました。托卵は古くから知られていましたが、捉われてはいなかったようです。
「ハト」は、源氏に深い関わりがありました。源氏の守り神の八幡宮の使いとされていました。石橋山で敗れた頼朝の洞窟を、平家方の梶原景時が見つけながら、ハトがいたから人はいないと味方を騙して、頼朝を助けたといいます。源氏のことあるたびにハトの吉兆がありました。鎌倉の銘菓鳩サブレーの由来です。
「ウグイス」は、鳴き声を江戸時代までは「ウー・グイス」と聞こえていました。平安時代の和歌に、自分の名を人に告げているとあります。その声を「ホー・ホケキョ」としたのは、室町時代の浄土真宗中興の祖、蓮如でした。ウグイスの声を「法を聞けよ」と聞いて法華経と結び、激動の世を諫めたのです。また「ひとくひとく」と聞いた「古今和歌集」の歌もありますが、どうやらエゾムシクイの声をウグイスと聞き違えたようです。江戸時代は「法・法華経」でした。
「セキレイ」は日本では太古から夫婦円満を伝える御神鳥とされてきましたが、戦国時代の伊達政宗に逸話があります。秀吉から一揆を扇動したと疑われ、政宗は白装束で出頭しました。証拠の密書を見せつけられましたが、花押の鶺鴒の目に針穴がないのは偽物だとして言い開きをしました。政宗の大芝居でした。
本書では、「ウソ」を愛でた菅原道真の故事が、現代まで「鷽替えの神事」として伝わっていることや、芭蕉が「雉の声」の句で亡き父母を偲んだこと、滝沢馬琴が、小鳥を飼うことに熱中していたこともあって、楽しい一書でした。「了」

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