「かぐわしき植物たちの秘密」—香りとヒトの科学–2025年⒓月1日 吉澤有介

田中 修・丹治邦和 共著、ヤマケイ文庫、2025年10月刊  著者の田中さんは、1947年京都府生まれ、京都大学農学部卒、同大学院で博士(農学)。米スミソニアン研究所を経て、甲南大学理工学部教授、現在は名誉教授です。専門は植物生理学。著書は「植物はなぜ毒があるのか」(幻冬舎新書)、「雑草散策」(中公新書)など多数があります。丹治さんは、1969年京都府生まれ、神戸大学農学部卒、東京大学大学院農学系研究科で博士(医学)。米テキサス大学、MDアンダーセンがんセンターを経て、弘前大学大学院医学研究科脳神経病理学助教。「多系統萎縮性とオートファジー神経内科」(化学評論社)などがあります。2023年逝去されました。
自然の中で植物は、様々な「天然の香り」を漂わせています。その働きは実に多彩で、「ただもの」ではありません。香りは虫を呼び、カビや菌を抑えて、植物自身を守っています。本書には63種が、登場していました。その一端を挙げてみましょう。
・キンモクセイ 「秋の香」の原産地は中国で、江戸時代に到来しました。消臭によく使われましたが、近年は、オレキシンを下げて食欲を抑えるので、ダイエット効果が注目されています。しかし、日本には雄株しかないので、種子はできません。
・バラ 東西に原産地があり、交配で2万を超える園芸品種がつくられました。香りの成分は多く、「ゲラニオール」、「シトロネオール」、「リナロール」などで、クレオパトラも宮殿を飾って愛用しました。気持ちを明るくし、活力を生み出します。
・ローズマリー 地中海沿岸が原産地のハーブです。古代エジプトで、ミイラの防腐剤に使われていました。肉料理の香辛料で、抗酸化作用の「カルノシン酸」が腦神経系に有効とされ、「酢酸ポニエル」が、記憶力を高めることも確認されました。
・クチナシ 東アジアが原産で、コーヒーノキの仲間です。香りの主成分は「リナロール」と、ウメの香の「酢酸ベンジル」で、キンモクセイ、ジンチョウゲと合わせて「三大芳香花」と呼ばれ、心地よく官能的で、化粧品などに多く使われています。
・ユリ 北半球の各地が原産です。日本の代表「山百合」をシーボルトが持ち帰り、ヨーロッパで大人気になりました。1900年代の一時期には、日本の輸出量で絹に次ぐ2番手でした。オランダで交配され、優雅な香りのカサブランカが生まれました。
なお、ライラックは蚊が嫌うことが、2020年ワシントン大学で発見されました。日本原産のクロモジに、インフルエンザの予防効果があることが、愛媛大学や信州大学で確認され、養命酒がアメを発売しました。ヒノキには防虫抗菌効果があります。
香りは鼻から入るので、腦神経に直結します。経口薬では、脳神経に1%しか届きませんが、鼻から投与する薬は、5~10%も届くのです。認知症などの腦神経疾患に、大きな効果が期待されています。本書で、医学的研究や、疫学的な調査など、最先端の成果を紹介された丹治さんは、がんで急逝されました。まことに残念です。「了」

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