「バブルとデフレ」 2025年7月31日 吉澤有介

森永卓郎著、講談社現代新書1998年11月刊 著者は、1957年東京生まれ、東京大学経済学部卒、日本専売公社、経済企画庁、三井情報入発総合研究所、UFJ総合研究所を経て独立。経済アナリスト、エコノミスト。専門は計量経済学、労働経済学。後に獨協大学教授。タレントとして活躍して。本年1月死去しました。享年67才。多数の著書がありますが、本書は41才、初の経済学関係の著作でした。私は1999年2月にたまたま出会って、強い印象を受け、この著者に注目し続けてきました。当時の読書記録をもとにざっとご紹介しましょう。
1.バブル経済のメカニズム 人々を熱狂させる原則がある。
①借入に深入りすると働くテコの原理
②一見新しく見える投資対象
③もっともらしい理論。
人間が狂気に陥るのは、一定レベルの刺激がある「安楽」の状態から。刺激の強い「快楽」を求めたくなる。そこにはスリルと興奮があり、同時にリスクがある、そこでまた「安楽」を求めるようになる。このサイクルを繰り返すのだ。
これをソルテッドナッツシンドロームといい、既存の経済学は使えない。
2.うたかたの日本神話 日本的経営の実体をみると
高度成長期に成功した日本企業には、内部に次のような仕掛けがあった。
①実力伯仲のデッドヒートに持ち込むため、僅かの格差をつけた。
②既得権を与える。学歴などを終身有効とした。
③敗者復活をさせない 敗者には冷たい烙印を押す、降りられない仕組みだ。
④外界との交流を遮断した 自社を客観的に見られると困るから。
⑤カリスマが存在して、会社がすべてと思わせた
3.バブルはまだ終わっていない 戦後経済体制が残っている 年金など。
平成バブルは、まさに高度成長の再現であった。懐かしさに飛びついたのだ。
その実行犯の主力は団塊の世代で、一つの世代の幕引き役になっていた。
4.デフレと恐慌の原理 恐慌型デフレ突入には3原則がある、1937年に似ている
①生産調整の進行→雇用調整→雇用不安 cf価格調整→賃下げ→一時の我慢
②もっともらしい理論の登場、エコノミストが悲観論、預言者ぶることに快感
③日本人自体が経済の悪化を内心楽しんでいる。不幸もまた快感、演歌の世界
5.日本は立ち直れるか
アングロサクソン型経営は万能ではない。金融では適応しても、モノづくりでは日本型チームワークが重要なのだ。
知的創造型組織への、両者の使い分けが、立ち直りへのカギとなるだろう。了

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