丸田 勲著、光文社新書、2011年4月刊 著者は、1940年広島県生まれの写真家、文筆家です。日本大学芸術学部写真学科卒業後、2年間にわたり世界を放浪、帰国して雑誌やテレビなどの海外取材などで活動しました。江戸文化に造詣深く、近年は江戸史評論家として各地を取材しています。
江戸は幕府が置かれた政治都市で、後期になると人口は100万人を超えていました。その内訳は、町人60万人、武士や寺方で65万人でした。当時は、パリやロンドンでも人口は60万人ほどでしたから、江戸は世界第一の大都市だったのです。
「大江戸八百八町」と言われました。しかし農地が50%もあり、武家地は25%、寺社地が5%でしたので、町屋は僅か10%。そこに60万人が暮らす超過密都市でした。それでも水道などの都市機能は、完備されていました。糞尿は、近郊の農家が買い取って肥料にする循環型社会で、町内は清潔に保たれていたのです。
本書では、その江戸の最盛期、文化・文政期(1804~1829)の諸物価について解説しています。江戸の貨幣制度は、金・銀・銭と複雑なので、ここではすべて円に換算してみました。まず住居ですが、殆どの庶民は長屋暮らしでした。裏店で約9,7平米の1Kです。火事が多いことが前提なので、みな安普請で家具は最低限、家賃は1万円前後でした。職人の最高給取りは大工で、年収は317,6万円(日給18000円)でした。畳職人は日給5340円、小商いの棒手振りの実収入は1日1万円でした。コメ(白米)は、10キロ1万円前後で、コメ騒動では一時5倍にもなりました。3人暮らしの年間食費は70万円くらいで、エンゲル係数は約46%(現在は約23%)でした。大家の収入には、家賃のほかに長屋10所帯分で糞尿代年間25,6 万円がありました。
商家への奉公は、⒓才で無給の小僧、7~8年で手代になり、年収は38万円から10年後で約90万円、ここで一たん退職して、再契約で番頭になると、年収は250~400万円、大店の番頭は、1200万円を超えました。一方、下女は32万円くらいでした。
武家は、経済発展で物価が上がっても石高は一定で、家計は困窮してゆきました。札差に借金を重ねたので、幕府は再三借金棒引きを強行しました。最下級武士は3両1人扶持で、60万2400円。大工の年収の5分の1以下でした。苦しいわけです。
庶民は、家財道具は大体「損料屋」のレンタルを利用しました。また4文銭(80円)の百均ショップが盛況でした。主な物価は、蕎麦820円。寿司1貫160円。居酒屋の飲代1000円前後。鰻蒲焼1皿4000円。茹で卵1個400円。木綿の古着2000円。藁草履120円。銭湯120円。口紅12,8~25,6 万円。煙草200円。医者の診療代は2~3万円。芝居小屋桟敷席7万円。貸本480円。富くじ最高額1,3億円。花魁の揚げ代12,8万円。不倫の慰謝料96万円。旅籠の宿賃1泊2食3~5000円。お伊勢参りは往復28日28,4万円で、無尽講が盛んでした。寺子屋は千軒以上あって、月謝は4000円。子供たちの9割が通い、識字率は70%以上で、断突の世界一でした。「了」
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