蔵前バイオ通信 第88号2025年2月15日
メールマガジン蔵前バイオ通信 第88号(2025年2月15日)をお届けします。今年の冬は、ことのほか寒く、またインフルエンザや新型コロナが流行し、外出を控える向きも多いかと思います。私達は、Zoomによるオンライン会議を主体に活発に活動しています。私達の活動状況と、自然エネルギー利用の有益な情報をご案内いたします。どうぞ、ご利用ください。また、私たちの活動に興味をお持ちの方々の参加を期待しています。ホームページより連絡ください。
*******************目次 ***************************
- 活動トピックス(編集部)
- 技術情報検討会(吉川)
- アルジェ研究会(廣谷)
- 熱エネルギー研究会(進藤)
- 林業システム研究会(篠崎)
- 地熱研究会(清田)
- Kシステム開発プロジェクト(米谷)
- 竹林プロジェクト(篠崎)
- ホームページによる情報発信(編集部)
1.活動トピックス(編集部)
・公開講座「水と環境」第8回
「製紙業における水との関わり~王子グループのサステナブルな水資源活用~」講師 王子ホールディング株式会社代表取締役会長 加来 正年 を2025年2月6日にZoomにて開催しました。主な内容は製紙業での水の関わり、 製紙工場設立と水資源、王子グループの水関連事業、王子の森と水源涵養、王子ホールディングス150年の軌跡そして未来などです。製紙業における水の重要性、王子グループの取り組みが理解できました。今回は参加者数が過去最多を記録しました、プレゼン資料をホームページに掲載しました。
・「2024年度 蔵前工業会バイオマスセミナー」開催
「持続可能な脱炭素社会への取り組み」をテーマとして蔵前工業会主催、蔵前バイオエネルギー共催で2025年2月20日、Zoom Webinarによるオンラインで開催します。「バイオエコノミー社会の実現を目指したバイオものづくり技術の開発」乾 将行 氏、 「脱炭素社会に向けたJOGMECの取り組み」下内 真 氏 の2件です。詳細は開催案内をご覧ください。
2.技術情報検討会(吉川)
東京大学や森林総合研究所を含む日米欧の研究チームの調査によると、地球全体の森林が吸収する炭素の量は、この30年間ほぼ変わっていないことが明らかになりました。森林の種類ごとに吸収量は大きく異なり、違法伐採などによる森林破壊が深刻な熱帯の原生林では、30年間で吸収量が31%減少しました。その結果、ロシアや北米、北欧などの寒冷地の森林でも36%の減少が見られました。一方で、中国の大規模な植林によって温帯地域の森林は30年間で30%増加し、熱帯でも再生した森林の吸収量が29%増加したことで、寒冷地などの減少分を補っていると考えられます。
これとは別に、地球環境研究センターが実施した世界森林資源調査によれば、1990年から2020年の30年間で、世界の森林面積は年間およそ590万ha(全森林面積の0.15%に相当)の速さで減少していると推定されています。また、全球の炭素循環に関する研究によると、最近10年間に化石燃料の消費などによって放出された二酸化炭素(CO2)は炭素換算で96(±5)億トンにのぼり、その約半分にあたる52億トンが大気に蓄積されています。残りは海洋または陸域の生態系に吸収されており、陸域生態系の「正味の吸収量」(光合成による吸収量から呼吸などの放出量を差し引いたもの)は、年間平均33(±8)億トンと推定されています。
森林の炭素吸収量は極めて大きなスケールであり、大気中の二酸化炭素を除去する技術の実用化が困難であることを考えると、人類は当面の間、植物の光合成に頼らざるを得ません。大気中のCO2蓄積量をこれ以上増やさないようにするためには、CO2の排出量削減と同時に、森林資源の保護・育成に努めることが不可欠ではないでしょうか。
3. アルジェ研・・EVの発展・その対応・・・(廣谷)
日本はテレビ、パソコン等を造っているが、中国の登場、米、中国の激しい競争もありやりにくくなっています。そこで日本政府(経産省、国交省)は、車の現在の世界シェア3割なので、世界で勝てるのは車しかないと考えました。そして日本車を2030年に4,100万台、2035年に6,400万台にしようとし、世界の車の30%は日本車に、その30%はEV一般(EV,HV,PHV,FCV)となる事を目標としました。その車の利益15兆円に上ると考えました。
政府はメーカー、商社と共に、世界の日本車使用者とインタ-ネットを繋いて意見を聞きます。メーカーではトヨタ、ホンダ、日産が参加しています。相談するのは1)ソフトの改善、2)運転指導で、それを会社に繋ぎます。また、半導体のメーカーへ、政府がお金を出し支援します。政府が世界の利用者にインタ-ネットを繋ぐのは始めての事でしょう。それだけ自動車産業に期待しているのです。
4.熱エネルギー研究会(進藤)
ペロブスカイト太陽電池(PSCと略)は、脱炭素化に欠かせない太陽光発電のさらなる拡大において、切り札となる技術といわれています。薄くて軽量で曲げることができるため、ビルの外壁や工場、体育館の屋根といった、従来のシリコン系太陽電池では設置が難しい箇所への普及が期待されています。経産省は2024年に策定した新たなエネルギー基本計画で、PSCを中心とした次世代太陽電池について、2040年に約20GW の導入を目標とし、家庭の電力使用量の約1割を次世代太陽電池で賄うとしています。政府がPSCに期待を寄せる理由は、シリコン系太陽電池では、中国企業が世界シェアの8割以上を占め、シリコンの製造から太陽光パネルの組み立てに至るサプライチェーンをすべて押さえ、低コストでの供給体制を構築している現状にあり、これに対してPSCは日本で生産技術を確立しており、挽回のチャンスがあると見ているからです。特に積水化学ではPSCの技術開発や投資を加速し、量産化を目指した製造ラインを構築し、市場開拓をリードする計画を進めています。今後、PSCの課題である大面積化と耐久性などを実証により解決して、大量普及を目指す事が期待されます。
5.林業システム研究会(篠崎)
(1)エコプロの成果から発展:田中優子さんの紹介で展示ブースを相互訪問した日本工業大学NITとの勉強会を開催することになりました。日時は3月10日(月)14時開始、場所はNITの埼玉キャンパスです。当方は田中さんと篠崎の二人、およびNPO法人竹もりの里の鹿嶋理事長が訪問します。それに加えて、鹿嶋さんの竹林関係知人が参加してくれることになりました。竹林整備、ポーラス竹炭とその活用について発表してきますが、先方の発表内容についても興味津々です。
(2)AIの活用:林業研究会の議事録としてAIによる要約を付加するようにしました。第205回からですが、研究会の報告や検討の生き生きとした雰囲気が生まれます。ただし、AI companionによる要約は固有名詞や同音異義語の間違いが多いので、必ず添削をする必要があります。でも添削作業は短時間で済みますので大歓迎です。
6. 地熱研究会 「特許の肝」 (清田)
特許の中心となる部分を説明用の図を中心として、ご理解頂けるよう説明した。地下15km程度の深さでは400~450℃程度の温度になっている。この付近まで500m長ごとに作業階を構築し、各階に蓄熱レンガで造った蓄熱室を設ける。センター立て坑の周りに配置したサテライト立て坑(9mφ)の中に、地上で組み立てた500m長の熱媒管ユニットを運び込み組立てる。熱媒管ユニットの上下には集合管がありそれぞれ蓄熱室に引き込み、下から上がって来た熱媒と上から降りて来た熱媒が蓄熱室の中で熱交換を行う仕組みである。こうして地下深くにある地殻熱を地上まで汲み上げる仕組みが「特許の肝」である。分かりづらいというご意見があったので図と解説を付けた議事録をメンバー宛にお送りした。
7.Kシステム開発プロジェクト(米谷)
(1)Kシステムの試用の候補地の南都留森林組合は現地の都合で計画が延期となっています。これからも南都留の状況をフォローしながら他の候補先を探していきます。
(2)最近、放置された森林や竹林の崩壊や、流失する木や竹の河川汚染の被害が問題になってきています。地産地消に適したエネルギー資源として、温暖化ガスの吸収として、そして災害防止の観点から森林や竹林の持続可能な維持管理が進められるようになってきています。特に従来の方法では伐倒・集材が困難な森林に有効なKシステムのPRを進めていきます。
8.竹林プロジェクト(篠崎)
(1)ポーラス竹炭の三態:現在はこの奇妙な現象について研究しています。炭の真比重は2以上ですので水に沈むはずです。しかし、ポーラス竹炭を実際に水に落とすと意外にも、浮いたり、水中を漂ったり、あるいは沈んだりの三態が現れました。これはどうしたことでしょう。時間をかけて現象を観察すると、小さい粒子は沈降するが、大きい塊は水面に浮く、その中間のサイズでは水中を漂う、ということが判明しました。その理由は何でしょうか? それを現在確認中です。次回にお知らせいたしますので、楽しみにお待ちください。
(2)大雪対策:数年前からポーラス竹炭に融雪作用があると研究成果を学会発表しています。今年の大雪警報頻発を考えると、豪雪で死人が出ないようにできないものかと考えてしまいます。屋根に雪が積もらないようにすれば雪下ろし作業で人が死ぬことは無くなるでしょう。それにはどうしたら良いのでしょうか?山登りの好きな方は槍ヶ岳(3180m)に雪があまり積もってはいないことを知っているでしょう。また、日本の積雪記録は伊吹山(1377m)が持っており、それは何と11mです。我々の大雪対策検討は緒に就いたばかりです。今後、進展があれば随時報告いたします。ご期待ください。
9.ホームページによる情報発信(編集部)
会員吉澤有介が要約した一般図書。会員の活動報告・評論・提言・主張および情報紹介です。
活動報告⇒サロンの話題、活動レポートなどで公開しています。
(ダブルクリックでリンク先情報が表示されます。)
「人類と時間」—時計職人が綴る小さくも壮大な歴史– 2025年2月14日 吉澤有介
「バイオミメテイクスは、未来を変える」—生物をきっかけにつくられた技術—2025年2月12日 吉澤有介
「最強登山家 プルジャ」—不可能を可能にした男— 2025年2月8日 吉澤有介
「全文完全対照版「菜根譚」」2025年1月31日 吉澤有介
「スピン流は科学を書き換える」2025年1月26日 吉澤有介
「天変地異の地球学」—巨大地震、異常気象から大量絶滅まで—2025年1月24日 吉澤有介
「ヘビ学」—毒・鱗・脱皮・動きの秘密—2025年1月18日 吉澤有介
「昆虫の哲学」 2025年1月10日 吉澤有介
「個性幻想」—教育的価値の歴史社会学—2025年1月8日 吉澤有介
「台湾で活躍した土木技師八田與一の人物像」について講演 宮地 会員
「土と内臓」—微生物がつくる世界—2025年1月3日 吉澤有介
「怪異の政治社会学」-室町人の思考をさぐる-2024年12月22日 吉澤有介
「重ね地図で読み解く京都の「魔界」」 2024年12月15日 吉澤有介
特定非営利活動法人 蔵前バイオエネルギー(略称 K-BETS)
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