「天変地異の地球学」—巨大地震、異常気象から大量絶滅まで—2025年1月24日 吉澤有介

藤岡換太郎著、講談社ブルーバックス、2022年8月刊  著者は1946年、京都生まれ、東京大学理学系大学院で理学博士、専門は地球科学で、現在は、静岡大学防災総合センター客員教授です。著書の「山はどうしてできるのか」、「海はどうしてできるのか」、「川はどうしてできるのか」、「三つの石で地球がわかる」、「フォッサマグナ」(いずれもブルーバックス)の要約は、すでにお届けしました。
人類は、700万年前に誕生して以来、常に天変地異に見舞われ、多くの命を失いながら辛うじて生きのびて、文明を作り直してきました。人類史とは、天変地異による壊滅と、復活の歴史だったのです。著者はその原因を、天文・気象現象(天変)と、地学現象(地異)の地球科学的な現象とみて、これを地球科学者の視点で、包括的に展望しています。
天変地異による災害は、地球や宇宙がシステムとして存在することに原因があるので、宇宙開闢以来、これを避けることはできません。このシステムには、物質やエネルギーのやりとりがあって、そこには長短さまざまなサイクルが存在します。いくつかのサイクルが重なったときに巨大なエネルギーが発生し、「天災が束になって」やってくるのです。
短いサイクルでは、潮汐運動があります。海水だけでなく、岩石のある大陸でも起こっていました。気象異常には、太平洋の「エルニーニョ」と「ラニーナ」も、数年おきに起こります。またインド洋には、「マツデン・ジュリアン振動」があり、ともに世界に厳しい冷夏や旱魃、洪水などを起こしています。台風の集中にも関係がありそうなのです。
固体地球の自然災害では、噴火と地震にサイクルがあり、連動することもありました。プレートが、年間10㎝移動すれば、千年で100m移動します。歪の蓄積や解放は必然でしょう。太陽黒点の増減にも周期があり、黒点が全部消えると、極端に寒冷化しました。
これらの記録は、造礁サンゴや、樹木の年輪、湖底堆積物の年縞などに残されています。
より長期のサイクルには、地球自身に起因しる内因と、地球外の宇宙に起因する外因があり、相互に影響しています。「氷河時代」は、約7憶年の間に、三つの氷河時代があり、その第四期では、欧州や北米で、70万年間に7回の規則的なサイクルがありました。
1930年代にミランコビッチは、地球の寒冷と温暖は、2,3万年、4,1万年、10 万年の、三通りのサイクルがあるという仮説を提唱しました。それぞれ地球の歳差運動、地軸の傾き、公転軌道の変動から求めており、他の指標とよく合致しました。しかし、他にも大きな事件がありました。3300万年前に、南極大陸が超大陸から分離して南極環流が生まれ、180万年前にはアフリカ大陸が北上して、地中海が干上がったのです。気象が激変して旱魃になり、人類はアフリカを出ました。ヒマラヤは、モンスーンを発生させています。
ウィルソンは、超大陸の形成と分離に3憶年の周期があるとしました。マントル内部のブルームに、3憶年の周期が見られて一致しました。生物は古生代に出現し、カンブリア紀に爆発的に増え、多様化して上陸しました。しかし、これまでに5度の大量絶滅が起こっています。海洋無酸素や火山活動、隕石衝突など、様々な要因が重なったのです。地球は、あと2千年で、寒冷化を迎えることでしょう。災害は必ず襲ってくるのです。「了」

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