「論理的思考力を鍛える33の思考実験」 2024年10月⒓日 吉澤有介

北村良子著、彩図社、平成29年5月刊  著者は、1978年生まれのパズル作家です。(有)イースファイア代表で、WEBで展開するイベントや、企業のキャンペーン、本や雑誌などに向けたパズルを作成しています。
著書は「パズル作家が明かす腦にいいパズルはどっち?」(コスモ21)などがあります。 思考実験は、誰でも楽しめます。論理的思考能力を鍛えるので、突然に事故や災害に遭遇しても、思考停止には陥りません。本書からいくつかの例をご紹介しましょう。
・「暴走トロッコと作業員」 これはイギリスの倫理学者が、1967年に提示した有名な思考実験です。あなたの目の前で、石を積んだトロッコが暴走してきました。その線路の先には5人の作業員がいて、全く気付いていません。このままでは5人とも死んでしまいます。しかし、あなたの傍に切り替えスイッチがあり、すぐに切り替えれば、トロッコは別の線路に進みます。ところがその線路にも1人の作業員がいました。あなたが切り替えれば、その一人は死んで、5人は助かります。さて、あなたはどうしますか。85%の人は、スイッチを切り替えて、一人を犠牲にして5人を助けるとしました。しかし、少数の人は、切り替えしないとします。もともと5人は死ぬ運命だった。もう一人は無関係だから、助かって当然である。あなたが操作して、この一人を殺してよいのか。ここには正解はありません。あなたがどう思うか。その主観が問われているのです。
・「完全平等な臓器クジ」 あなたはある病院の医師です。この病院には臓器提供を待つ5人の患者がいます。その臓器提供者は、一般人からクジ引きで決めます。当たった一人を安楽死させて、5人に移植してその命を救うのです。クジで当たる人は完全平等なので、大統領か医師か、あなたかも知れません。臓器提供を待つ5人の死を待つか、当たった一人を殺すか。この設定は、一人を犠牲にして5人を救うトロッコ問題と同じですが、大方の答えは真逆でした。いつ自分がクジに当たるか、その恐怖に耐えられなかったのです。
・「モンテイ・ホール問題」 アメリカのテレビ番組で有名になりました。A,B,Cの三つのドアがあります。3つのドアのうち一つに豪華な車があり、当たればもらえます。他の二つのドアははずれで、ヤギが入っています。あなたはAの前に立ちました。正解を知っている司会者のモンテイが、残りのBとCのうち、ヤギのいたCのドアを開けます。そこであなたに「選ぶドアを変えてもいいですよ」といいました。Cがヤギとわかったので、残るドアはA,Bの二つです。さて、あなたはどうしますか。多くの人は、変えずにAを選びました。確かにA,Bのどちらかが車ですから、Aの確率は1/2で、変える必要はない。
ところが、マリリンという女性が、Bにすれば確率が2倍になると言ったので、そんなはずはないと抗議が殺到しました。その中には多数の数学者もいました。しかし、マリリンが正解だったのです。その理由は、AもBもCも確率はともに1/3でしたが、もしBCを一体とみたらその確率は2/3です。Cが脱落してもBの確率は2/3のまま残るのです。
Bが正解は明らかでした。数学者までが、直観に頼ってうっかり騙されていました。本書には、興味深い問題が満載されています。アタマの体操に、いかがでしょうか。「了」

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