「エイリアン」—科学者たちが語る地球外生命—2023年7月18日 吉澤有介

ジム・アル・カリーリ編、斎藤隆央訳、紀伊国屋書店2019年9月刊
編著者は、理論物理学者で英国サリー大学教授。英国科学協会会長、王立協会フェロー。専門は量子力学、量子生物学。「サイエンス・ネクスト」など多くの著書があります。

今日、地球外知的生命探査プロジェクト(SETI)が、本格的に始動しています。本書では、天文学、物理学、生物学、化学、心理学など、様々な分野の専門家が議論を展開しました。
まずその発端となったUFOの接近遭遇ですが、不確かな情報の多い中から、信憑性のあるいくつかの事例が挙げられています。1947年、アイダホの実業家、アーノルドはレーニア山の近くで飛行中、時速1900㎞で移動する9個の光る物体の列に遭遇しました。のちに空飛ぶ円盤と呼ばれた皿のような物体で、地球外からのものとしか思えませんでした。
1961年、ヒル夫妻がニュウハンプシャー州で夜道をドライブ中にUFO に追われ、停車すると30m先に浮かんだ円盤から誰かがこちらを見ていることに気づき、慌てて急発進して逃げました。夫妻は意識朦朧となりながら帰宅すると、衣服は汚れて破れていました。その後、夫人は鮮明な夢で、UFO に誘拐されて身体検査された様子を見ました。精神科医が診断すると、誘拐者とのテレパシーが再現し、レチクル座ゼータの連星系に行き着きました。
1980年、英国サフォーク州にある米軍基地でパトロール隊が、赤い光とともに動くUFOに遭遇し、無線が使えなくなりました。物体は浮上すると猛烈な速度で消えてゆきました。
心理学者は、これらの遭遇記やその他の多くの目撃報告を4つのカテゴリーに分け、それぞれの誤認の可能性を論じましたが、宇宙に他の生命がいるかどうかはまでは、わからないとしています。この間に、スピルバーグの映画「未知との遭遇」は大ヒットしました。
ここ20年にわたる発見により、惑星は天の川銀河に満ち溢れて、それぞれに衛星も回っていることがわかってきました。それらの系外惑星や太陽系にも、生命がいる見込みがあります。しかし、宇宙のどこかに生命がいる見込みを推定する場合には、根本的な問題がありました。それは私たちが、自分たち自身というただ1種類しか知らないことです。その生命は物質の流れ、エネルギーの流れ、そして情報の流れを必要としていました。異星の生命も物理法則に従うはずです。ところがその生命の定義も、まだ確定していないのです。どのように生まれたかもまだわかっていません。まるで違う生命もあり得るのです。それでもまず知っていることから始め、利用できる限りの手段を使って探索することでしょう。
エイリアンを探すSETIのプログラムは、成功の見込みがいかに低くとも、大きな価値があるのです。地球外生命探査のビジョンとして「ドレイクの方程式」がありま。今日の宇宙生物学のもとになりました。私たちのいる太陽系は、その実験室なのです。生命の素材には、有機分子が構成要素になっています。電波望遠鏡は、宇宙空間に潜む冷たいガス雲に、大型の有機分子を観測し、そのアミノ酸も炭素も、ともに隕石に含まれていました。最近の分光分析技術の進歩で、系外惑星の大気の組成までわかるようになっています。探査には、AIによる通信技術も有望でしょう。宇宙物理学者たちは、いよいよ確信を深めています。「了」

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