2019年2月5日、2月度例会後に勉強会を開催しました。
講師 岩谷宗彦氏(炭やきの会役員) 演題「炭の種類とバイオチャーの動向」
司会者による講師紹介の後、岩谷氏は用意したパワーポイント24枚のスライドで解説されました。
最初に「炭」とは有機物の炭化物、「木炭」とは木を蒸し焼きにして炭化させて作る炭であるとの基本事項から始めました。次に木炭の種類が材料・製法・形状の三つによって分類されることが解かりました。材料による分類ではクヌギ炭、マツ炭、カシ炭、竹炭、オガ炭と分類され、「竹炭」がその中にあることが解かりました。しかし製法分類の中には白炭、黒炭、および半白炭がありましたが、「消し炭」が無いことが判明しました。また、形状分類の中に長炭、粉炭、塊炭がありましたが、粉炭と塊炭の中間の大きさである「粒(状)炭」が無いので、私共が開発した「ポーラス竹炭」が含まれていない、ということが判明しました。
炭に関する国内の団体は現在、全国燃料協会、炭やきの会、木質炭化学会、日本バイオ炭普及会の4団体があり、その他に炭に関する研究報告を日本木材学会、日本森林学会、炭素材料学会などの学会が行っています。
日本国内の炭の規格について8種類解説されましたが、日本農林規格JAS「木炭」は平成9年に何故か廃止されていました。残る7種類の規格はすべて生産者規格であり、「木炭の規格」、「新用途木炭の規格」、「竹炭の規格」、「新用途竹炭の用途別基準」、「オガ炭の規格」、「燃料用木炭の規格」、および「土壌炭素貯留用バイオ炭規格」があることが解かりました。つまり、生産者である私共が「ポーラス竹炭の規格」というものを作る必要があることが解かりました。
英語で言うバイオチャー(biochar)は原料が生物材料であれば何でも含まれますが、その効果は二酸化炭素固定効果、炭素貯留効果、保肥能力の増大、石灰(アルカリ性)効果、土壌の生物相改善、作物の生産性向上、栄養素の遅効性効果、保水性改善、栄養素の流出防止効果など、一般によく言われている効果が含まれます。しかし、最近問題になっている放射性元素の作物への移行係数についてはまだ考慮されていないようです。
なお、調理用薪・木炭の使用指針については林野庁が次のURLで示されるガイドラインを定めています。
http://www.rinya.maff.go.jp/j/tokuyou/shintan4.html
また、土壌改良資材として施用する場合は、放射性Cs(セシウム)が400Bq/kg以下となっていることが、岩谷氏著の「関係法令・規格集」に記載されています。
大気中の二酸化炭素固定効果を表す言葉は次の三つに分類されています。
①Carbon negative:バイオ炭
②Carbon neutral:薪、風力、水力、太陽光、潮流、地熱
③Carbon positive:石炭、石油、天然ガスなどの化石燃料
2011年から2019年まで開催された、バイオチャー関連会議に参加された岩谷氏の世界各国への参加状況を披露して頂き、その時の印象を語ってもらいました。欧州は関心が高いのに、定めた規格が厳重過ぎて運用しにくいこと、中国はCd(カドミウム)やPb(鉛)などに汚染された土壌を回復させる研究が盛んであり、政府がバイオチャー製造施設を大規模に建設するなど積極的で、若くて優秀な研究員が多い。またオーストラリアは農業系廃棄物を原料とした木質バイオマスボイラー(ガシファイアー)の活用が盛んであり、ニュージーランドと一緒になって規格化を進めているということでした。
最後にIPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)はバイオチャーを有力な手段と見做しており、日本の環境省も同様の立場ですと締めくくられました。
懇親会では最後まで残った参加者で記念撮影をしました。左から3人目が講演者の岩谷氏です。これからもよろしくご指導ください。
<完>