蔵前バイオ通信 第50号 2018年4月15日
*******************目次 ***************************
活動トピックス
- 技術情報検討会(吉川)
- 事業化推進検討会(岸本)
- アルジェ研究会(廣谷)
- 熱エネルギー研究会(進藤)
- 林業システム研究会(渡辺)
- Kシステム開発プロジェクト(清田)
- 竹林プロジェクト(篠崎)
- バイオチクプロジェクト(渡辺)
- ホームページによる情報発信
- 世界のバイオマス
1.活動トピックス
本年5月22日に、当法人の 総会を開催します。昨年度の活動報告と今年度の活動計画の審議承認を行います。会員の皆様の積極的な参加をお願い致します。
例会時に勉強会を開催しました。
3月6日 「過熱蒸気熱分解装置について」山形県のエムエスデー株式会社 武田社長との意見交換会を開催しました。
同社は環境機器関連装置の開発・製造・販売事業へ参入しており、我々の思いと通じるところがあります。過熱蒸気熱分解装置はその製品の一つで、有機物を過熱蒸気を使用して、炭化させて約1/10に減容するもので、興味深いものでした。
4月3日 :「我がバイオ:バイオとの出会い」 講師 廣谷 精氏(K-BETS理事)
廣谷氏のバイオマスとのかかわりとバイオマスに対する下記4項目を軸に、熱い思いを語っていただきました。その熱意に、全員が感動しました。
1. 戦争中のバイオ燃料
2. 協和でのバイオテクノロジーとの出会い
3. 味の素との争い
4. 遺伝子組み換えの問題
5. バイオジェット燃料の問題
その後の懇親会でも余韻が残り、楽しく、盛り上がりました。
2.技術情報検討会(吉川)
我が国の『水素基本戦略』が閣議決定されたので、その内容について討論しました。主要なポイントとして、水素コストの低減、サプライチェーンの開発、電力分野での利用、FCVと水素ステーションの普及等が挙げられています。方向性はさておき、シナリオとして2030年の予測と将来目指すべき姿が示されていますが、2030年の予測がこの程度では将来は心許ないのではというのが、メンバーの感想です。この他、先日ビックサイトで開催された「スマートエネルギーWeek2018」で収集された新しい技術に関する情報の紹介あり、有用性について多角的な検討が行われました。
3.事業化推進検討会(岸本)
① 横浜市のNPO法人との連携について、横浜市のNPO法人“よこはま里山研究所~NORA”の松村理事長を4月23日に訪問し、活動の情報交換、連携の可能性等について調査を行うことが報告されました。
② K-BETS 10周年史制作について 本事業完成予定を過ぎているが、完成に向けて改めて福島理事を中心として制作を推進することが確認されました。
③ K-BETS HPへの竹炭PRについて 篠崎理事より、竹炭について改めてPRする必要があるため、HPの広告スペースを利用して竹炭をPRしたいとの提案があり了承されました。同時に竹炭の名称についても新たに分かり易くイメージしやすい名称を検討することとなりました。
4.アルジェ研究会 廃食油からのバイオジェット燃料 (廣谷)
2020年になるとEUの上空は、飛行機はバイオジェット燃料10%以上添加した燃料でないと飛ぶ事は出来ない。日本の飛行機は管理の問題もあり、必要なバイオジェット燃料は58万klと見ている。
日本は藻で油を造り、それでバイオジェット燃料を造る太陽光藻池システムの一本ヤリで、そのやり方で良いのだろうか。藻はどの程度出来るのだろうか。教科書では47~140トン/(ha・y)となっているが、それは実験室での話で屋外で出来るのは20~30トン/(ha・y)である。太陽光の効率は4%程度で、コンタミも起こる。琵琶湖の3分の1の池が必要になり、そんな事が出来るのだろうか。
外国は種々のやり方を検討しているが日本は2020年には外国から買えば良いと考えているのだろうか。しかし思う価格で売ってくれる企業が有るのだろうか。
廃食油再生が可能性が有ると思っている。 EUではその企業があり、その例はNeste Oil(フィンランド) 198万トン、Enl(伊) 116万kl、Preem(スエーデン)100万klであり、大量製造実績が有る。中国では北京で廃食油を集めて処理する会社が有る。東京では廃食油が有る事は分って居るが、役人が真剣に検討すれば出来るはずだ。種々権益を持った人が居てもその人々を利用し、メタノール処理、水素処理等安価で簡単に出来るはずだ。
5.熱エネルギー研究会(進藤)
木質バイオマスによる熱利用の取り組みについて、富山県南砺市での熱供給の
実施事例を検討しました。市内の森林素材生産事業者、製材業者・工務店・バット製作所等の28の地域関係者が事業協同組合を組織し、この組合員が、間伐材、端材などを利用し、チップ・ペレット製造や薪を製造する施設をつくり運営しています。 製造されたペット及び薪は、市が運営する公立病院、温浴施設(ペレットボイラ5か所、薪ボイラ4か所)の給湯・暖房などの熱源として利用され、更に市役所等の公共施設や個人所有のペレットストーブや薪ストーブの熱源として販売する予定をしています。官民一体となり市内の再生エネルギーによる地域内のエネルギー自給と技術の育成に向けた取り組みの参考となる事例です。
6.林業システム研究会(渡辺)
日本は世界有数の森林大国ですが、急峻な国土に阻まれて、十分な林地状況の把握が困難でした。最新情報では、航空からの3次元レーザー調査技術が進み、高能率で低コストの森林情報データの把握が可能になっています。この情報調査と連動した林業施業計画の実施と、高生産性を実現する林業新時代が近づいています。AI技術(人工知能)とドローン(多発型自立航空機)の進化が、次世代林業の実現を支えていくことになるでしょう。一方では、身近な里山の整備、竹林整備が、ますます必要になり、各地での住民の自主的な取組みが期待されています。
これらの活動支援には、今国会で成立見通しの「森林環境税」の財源を充当することが論議される状況にあります
7.Kシステム開発プロジェクト(米谷)
飯能市農林課のご協力で、飯能市上名栗の市有林で3日間、新Kシステムの試験を行いました。間伐で乱雑に伐倒された木をチェーンの動きを使って木寄せを行い、狭い立木の間を牽引して集材を実施しました。また、いろいろなチェーンの設置方法について試行を実施し、各々の優位性や問題点を把握しました。見学に来られた森林組合の方からは、是非使ってみたいとのコメントを戴きました。
8.竹林プロジェクト(篠崎)
NPO法人竹もりの里と協働で「竹炭シンポジウムin静岡」を静岡県立大学の協力を得て静岡市の後援もいただき同大学小講堂で開催しました。そこで得たのは下記に述べる悲しい現実でした。
これに対して、今後は我々の手で新しい竹炭「ポーラス竹炭」を知らしめることが最重要課題であると考えて、活動を展開して参ります。
①基調講演をしてもらった大学の先生が環境を無視した竹林駆除方法を発表したのです。しかもそれはご自身の研究成果ではありません。薬品会社の受け売りなのです。
②もう一人の基調講演者は、竹炭の性質を旧来の知識のみで判断し、我々の研究発表に対して間違ったコメントをしました。
③この事実からは我々の知見が大学関係者よりも進んでおり、しかしながら残念なことに一般に知られていないということでした。
9.バイオチクプロジェクト(渡辺)
植物由来のバイオプラスチックは、世界では普及が進み始めています。しかし、日本では量産コストが割高で、壁となって広がりを阻んでいます。その突破口として、「高付加価の商品開発」を普及の糸口にする検討が進められています。一方、一昨年に発表された「竹のナノセルロースを添加」した、新素材の開発が進展して、昨年には、成型が可能になった新材料が公表されました。今年には、その新材料を応用した商品開発が活発化されると、予想されます。
次世代に期待される「高付加価値プラスチック」の商品化アイデアが、提供されて実用化される時代が近づいています。各方面からのニーズと情報提供が期待されています。
10.ホームページによる情報発信
主に法人会員吉澤有介が要約した一般図書。および会員の研究ノートです。
「大人の時間はなぜ短いのか」一川 誠著 2018年4月9日 [人体・動物]
「あなたの体は9割が細菌」アランナ・コリン著2018年3月31日 [人体・動物]
「海藻の歴史」カオリ・オコナー著 2018年3月22日 [バイオマス]
「生きものは円柱形」本川達雄著 2018年3月18日 [人体・動物]
「もしも月が2つあったなら」ニール・F・カミンズ著 2018年3月8日 [気候・環境]
「木を知る・木に学ぶ」石井誠治著 2018年3月3日 [木の性質・役割]
「もしも月がなかったら」ニール・F・カミンズ著 2018年3月1日 [気候・環境]
「ミツバチの世界へ旅する」原野健一著 2018年2月25日 [人体・動物]
「風土記」 橋本雅之著 2018年2月21日 [気候・環境]
「進化考古学の大冒険」松木武彦著 2018 年2 月14 日 [人体]
11.世界のバイオマス情報トピックス
特別顧問 佐野 勇 による世界のバイオマスから抜粋したトピックスです。 ① 藻に対する米国政府の動き 新しい法案が、藻の栽培者もほかの農産物の栽培者と同じ利益を与える目的でアメリカ議会に提出された。この法案が議会を通過すれば、藻の栽培でもアメリカが世界のリーダーとなる条件が強化される。 ② バイオマス分解技術の進展 ウイスコンシン大学で水と共溶媒と液体触媒を使って、バイオマスを分解する技術の開発が進んでいる。バイオマスの分子を周辺の水と共溶媒と酸触媒の混合物の中で溶解し、数万個の原子をモデル化して触媒活動を活性化したときに触媒の周辺で原子が高速運動を始めることを利用した方法である。また、米国再生可能エネルギー研究所がセルロースを短時間で分解できる部位を突き止めることに成功し、10年以上も取り組んできた酵素の分子構造を解明する努力がようやく報いられる見通しになった。 ③ ブタノール生成バクテリアの発見 シンガポール国立大学で、キノコを収穫したあとの廃棄物から採取したバクテリアTG57に、セルロースをバイオブタノールに直接変換する性質があることを発見し、これを利用して高収率でブタノールを生成することに成功した。