森林におけるシロアリの繁栄とその秘密
セルロースはグルコース(ブドウ糖)単位の重合したものでありなかなか分解されない。
セルローズを分解できればエネルギー源としての栄養を独占できる。
これを分解できるのはシロアリだけで生物の中で一人占めに成功した。
シロアリは温帯から熱帯林にかけて生息している。
シロアリの腸の中で生息する微生物がセルロースを分解して酢酸に変える。
この原生動物はシロアリと消化共生の関係(寄生と宿主)を作っている。
セルロース / 酢酸 /シロアリの栄養源 がその仕組みである。
熱帯にはシロアリを餌として食べる昆虫、小動物が多い。
アリ塚の話:
アフリカやオーストラリア、筆者の経験ではブラジルにも巨大なアリ塚が無数に点在する。
地上に出ている部分だけでも大型車より大きい、直径にして10m規模のものがある。
地下には大きな道が四方に伸びていて50mにも及ぶようだ。
地下から持ち出した土をシロアリの唾液で固めてあるので堅固そのもの。
50年くらいは残っているらしい。
2m規模の塚で300万匹が生息している。
女王が変るたびに塚を作るのでもし日本だったら大変なことになる。
豆科植物の窒素固定共生
根粒にバクテリア共生して窒素を固定する働きをする。
ダイズ、インゲン、クロ-バー、カラスのエンドウ、ツルマメなどの豆科植物は根粒を作る。
中心部は赤くヘモクロビンと似た蛋白質でできている。
宿主と根粒菌
宿主はフラボノイド化合物を出す。菌はその存在を知ってオリゴ糖を生産する。
この共生関係があるため稲、麦、トウモロコシなどの植物は窒素肥料なしで育つ。
窒素を固定するのはエンドファイト
(共生する微生物、カビや細菌で病害抵抗性を持つものが多い)。
ブラジルのサトウキビは肥料を与えなくても毎年良く育つ。
茎に窒素固定する細菌がぎっしり生息しているため。
化学合成した農薬を病虫害や雑草の防除に使うのでなく微生物を生かした農薬を
積極的に使っていきたい。
地球レベルの窒素循環
大気中の窒素をバクテリアによって根粒に固定。
バクテリアによって硝酸、亜硝酸、アミノ酸、アンモニアなど形態を変えて植物に
吸収され蛋白質など成長の栄養源になる。
窒素は大気と地中を循環してバランスをとっていたが近代になって工業的に作ら
れた窒素肥料が使われるようになってこれが崩れてきた。
肥料の生産量は8千万トンで大気から生物圏で固定される窒素の量とほぼ等しい。
過剰な窒素が河川、地下水、海を汚染した結果乳児のチアノーゼなどの健康被害
を起こすようになった。
また環境中の硝酸濃度の上昇がオゾン層の破壊と地球温暖化を起こす要因にな
っている。
炭酸ガスだけでなく窒素の動向にも注意する必要がある。
記 福島 巖