森林の崩壊         白井裕子著  新潮新書 

著者は早稲田大学建築学科卒、ドイツの大学に留学にした工学博士
・一級建築士である。

現在は野村総研研究員、早稲田大学客員準教授などを勤めている。
日本各地の森林の現場をよく見ており、さらにドイツやオーストリア
の現地調査を通じて、日本林業の実態と問題点を的確に指摘している。
特に日本の林野行政における補助金制度についての鋭い分析は熟読し
たいところです。
補充金交付の条件が、すべて現場を無視した中央官庁の画一的なマニ
ュアルに合わせなければならないこと。
そのマニュアルがメニューで細かく指定されている。
地方行政の職員や森林組合はその分厚いファイルを読むだけで手
いっぱいである。
内容まで理解している人はほとんどいないという笑えない話まである。
中央の指示するままに従っている内に、地域では自分で考える
こともできなくなっている。
このため森林組合はやる気を失い、現場はどんどん荒廃している。
その点でオーストリアの現場主義が良い参考になる。
 筆者は国産材の利用について、在来工法による木造建築の
復活に向けて熱い提言をしている。
小さな新書ですが内容は豊富です。

             記  吉澤 有介

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