地球環境が変化すると動植物が変化し、絶滅するものがあれば変化
に対応してうまく乗り切っていくものもある。
サイエンスライター金子隆一氏が各種参考文献から最近の有力な説をまとめ
た著書「大量絶滅がもたらす進化」(サンエンスアイ新書)を参考にして過
去の地球上の生物が進化してきた過程を振り返ってみた。
環境が変化したらそれに合わせて生物が時間をかけて適合、進化してきたの
が歴史。
現在はその進化に要する時間を生物に与えないまま環境変化だけが超スピー
ドで進んでいる。
恐竜が絶滅したのは巨大隕石の衝突がその原因である?
ユカタン半島の先端に隕石が落下した。直径10kmほどの大きさでできたクレ
ーターが直径180kmほどのチュチュルブ・クレーターと呼ばれている。
地球表面にはないイリジュームの濃集物があったことから衝突が実証された。
この情報が世界を走り恐竜の絶滅原因として広く報道された。
しかし事実を見ていくと衝突で一瞬にやられたものでなく数10万~数100万年
かかり序々に滅亡が進行していっているのが事実である。
イリジュームもハワイの火山から地殻濃度の10万倍の量が検出されている。
地球の核には重い元素のFe、Niと共にイリジュームが集まっているのでマン
トル底部から直接上昇するマグマに大量のイリジュームが含まれている。
大量絶滅と地球環境変動
過去の生物大量絶滅は大規模なものが5回発生している。また絶滅の発生時
期はランダムでなく約2600万年の周期で繰り返し発生していることが中国で
の調査(リーバウ、1933)などから明らかになっている。
なぜか地球磁場の南北逆転もこのとき生じているという。
5大絶滅の時期は次の通り。
① オルドビス紀末 (4.3億年前)
② デポン紀末 (3.6億年前)
③ ペルム紀末 (2.5億年前) 超大陸が分裂して大西洋ができた
(P-T境界)
④ 三畳紀末 (2.1億年前)
⑤ 白亜紀末 ( 6500万年前)
大絶滅の絶滅率は80~90%に達する規模になっていると推定されている。
この後新しい環境に合わせて生物の大進化が進行し、新しい生物の誕生を
引き起こしてきたのが過去の歴史であった。
この大規模な地球環境変化の原因として有力になっている説が「プルーム
テクトニクス」である。
ペルム紀(二畳紀後半)にはシベリアトラップを形成した大噴火ありー火
山灰による日照、有毒ガス、酸性雨で植生を痛めつけた。
この後哺乳類の特長を備えた恒温動物を生み出した。
三畳紀末には地球環境が回復して酸素濃度アップ(19%)し、生きのびた獣
弓類と爬虫類が爆発的に繁栄した。
三畳紀には爬虫類が全滅、ジュラ紀以降は鳥(恐竜系統)と獣弓類から哺乳
類がでてくる。
鳥は肺から骨格の窪みを通して全身に至る「気嚢系」と呼ばれるガス交換シ
ステムを発達させた。
プルームテクトニクス
プレートテクトニクス理論が完成して地球表面の諸現象が理論的に説明でき
るようになったが地殻の下にあるマントルの内部構造は未知であった。
CTスキャンと同じ原理である映像解析、地震波トモグラフィ-を適用するこ
とによって地球内部構造を最近明らかになってきた。
マントル内で日本海溝等から沈み込んだプレートの周辺は低温の部分(コー
ルドプルーム)になっている反面、南太平洋(タヒチ)や南アフリカの地下
には巨大な高温度マントルの上昇流(キノコ型、スーパーホットプルーム)
があることが分かった。
超巨大噴火の跡(デカン高原、シベリアトラップ、ジャワ海台など)
海溝から沈み込んだプレートの残骸は境界地(670km辺)に漂っている。
高温・高圧下で段々密度の高い物質に変化して行き下部マントル密度より大
になると下に落下し外殻付近に達する。
この冷塊が落下することで高温部分が上昇する回転運動が発生する。
これがホットプルームで巨大な火山活動が発生し、超大陸が地表に出現した
理由である。
「マントルオーバーターン仮説」と言われ現在最も有力な説になっている。
この現象は約1億年周期で繰り返されてデカン高原、シベリアトラップなど
世界各地に巨大火成岩台地を残している。
太陽光遮断による冬、大量の有毒ガス中毒や酸性雨によって生物の絶滅を引
き起こしたと考えられている。
地球磁場の誕生
マントルオーバーターンは冷塊が落下し、外殻の一部を冷却することで外殻
に存在する液状鉄の対流を引き起こし地球の自転と相まって磁場を形成する
ことになった。
27億年前のことで宇宙からの放射線を防ぎ生命誕生の舞台を作ったことにな
った。
海水のマントル注入(7.5億年前)
海溝からプレートと一緒に入った水がマントルを溶け易くして火山活動を引
き起こした。
同時にマントルの粘度を低下してプレートの移動を促進した。
引き込まれる海水量が多く海水面が低下して陸地面積が増した。
結果として陸地の浸食が大きくなり海底に土砂が蓄積し堆積岩が盛んに作ら
れた。
有機物が腐ると分解に必要な酸素を使うが埋もれてしまうので酸素を必要と
せず空気中の酸素濃度をアップする結果となった。
オゾン層と古生代生物の陸上進出
光合成だけでは酸素濃度は増えない。腐敗で酸素を消費して炭酸ガスをだし
てしまう。
酸素が増え紫外線による光化学反応でオゾンO3ができる(地上20~30km)
と紫外線のバリアができて生物が地上に進出することができた。
このシステムができたのは4.3億年前である。
シダ類が進出森林を形成していたが前に書いた陸地の浸食で発生した土砂で
大量の有機物(森林)が埋もれてしまい酸素濃度が35%にもなった(石炭紀
3.5~2.9億年前)。この埋没物が現在の石炭や石油になっている。
原始の大気
CO2 10気圧
N2 1 気圧 の構成であったが岩石から海水にNa,Caイオン
が溶け出し海水を中和した。
そのうちにCO2が海水に溶け込むようになり石灰岩を大量に作るように
なった。この結果N2だけが残り空気中の主成分となった。
シアノバクテリアの働きで酸素が次第に増えてきたのが現在の大気になっ
てきている。
記 福島 巖