世界の陸地に存在するバイオマスのストック
その量は重量にして約2兆トン弱あり原油に換算して8000億Kl (キロリットル)弱と評価されている。
毎年のバイオマス一次生産量は約1300億トンと見積もられている。
これをエネルギー換算すると原油約520億Kl /年にあたり、世界の年間一次エネルギー消費(約70億Kl )の7~8倍に相当する。
この再生産される範囲内でバイオマス資源を利用する限り継続的にエネルギーの使用は可能である。
このバイオマスの90%は地球に広がる森林から発生するもので無秩序な森林破壊や砂漠化などが起きない限りその恩恵を享受することができる。
バイオマスのエネルギー利用
植物は太陽のエネルギーを光合成により生体内に有機物として蓄える巨大な貯蔵庫である。
このエネルギーは物理的、化学的な変化を受け、大気や土壌、動植物の間を循環した後低温の熱となって放出される。
このエネルギーを利用するには技術的あるいは経済的な面から難しい問題があり極めて限定されたものになっている。多くの利用方法が開発できれば莫大な利益を人類に与えてくれる可能性があり将来に輝く希望の星である。
バイオマスの利用優先度はまず食料である。
次に建築用材や紙、肥料等付加価値の高いものに資源として向けられ、残りをエネルギーとして使われるべきである。資源として使われた物も何年か後には廃棄物としてエネルギー源に戻ってくる。
木材のエネルギーとしての価値
木材の成分は種類によって多少異なるがおよそC:50%、H:6%、O:44%の比率である。
発熱量は15%の含水率で1m3当たり針葉樹1500Mcal(メガカロリー)、広葉樹で2000Mcalとみられている。
一方灯油の発熱量は8700Kcal/lであり木材は3700Kcal/Kgとなるので重さから見ると約半分の発熱量である。
表―1 各種エネルギーの熱量単価比較
燃料種類 |
発熱量 |
価格 |
熱量価格(/Mcal) |
プロパンガス |
24 Mcal/m3 |
560 円/m3 |
33.5 円 |
都市ガス |
11 Mcal/m3 |
250 円/m3 |
22.7 円 |
電気 |
860 Kcal/kwh |
25 円/kwh |
29 円 |
灯油 |
8760 Kcal/l |
55 円/l |
6.3 円 |
石炭 |
6300 Kcal/Kg |
6.5 円/kg |
1.0 円 |
ペレット(水分15%) |
3888 Kcal/Kg |
20 円/kg |
4.9 円 |
表―2 木材の搬出費用と熱量価格(含水率30%)
集材・搬出費用 |
発熱量 |
熱量価格(/Mcal) |
12000 円/m3 |
1180 Mcal/m3 |
10.2円 |
8000 円/m3 |
1180 Mcal/m3 |
6.8円 |
6000 円/m3 |
1180 Mcal/m3 |
5.0円 |
4000 円/m3 |
1180 Mcal/m3 |
3.4円 |
表―1と表―2から他の燃料と比較してみる。
林地残材などの搬出コスト次第であるが6000円/m3以下で運営できれば灯油などの化石燃料に充分対抗できることになる。
日本のバイオマス資源の量
日本の国土面積は3,700万haである。
農業などに使われる耕地面積は500万haで残り2,500万ha、約7割は森林である。
蓄積森林資源は50億m3と世界トップクラスのストックを保持している。
国内の木材需要も8,600万m3と世界3位を占めている。
国内木材の年間成長量は人工林(35%)だけで1.4億m3を越え、薪炭林を加えた利用可能な山林(約50%)合計では広葉樹を含めて約2億m3達するものと推定される。
これをエネルギーに換算すると原油換算で
2億m3x400kg/m3x3.45MCal/kg=3100万klに相当する。
日本の一次エネルギー使用量は約6億kl/年(2004年度)であるのでほぼ5%に相当するとみられる。
実際に利用される木材は建築用の資材やパルプの原料として利用されて燃料にまわるのは林地残材や製材所などから発生する廃材が主力ですが役割を終えるとこれらも再びエネルギー資源に戻ってくることになる。
農業系では稲わらや麦わらなど、畜産系では牛豚鶏の糞尿、食品廃棄物や汚泥等多方面の資源が存在するが量的に多いのが木質系である。
環境エネルギー研究所のデータによると建築廃材は年間1440万トン発生すると仮定しているが過去8,000万m3/年の木材が種々な形で使用されてきたわけでこれだけの量が最終的に熱になって使われるのは納得できる。
記 福島 巖