KIYOTA式 木寄せシステムのはなし(6)

9. 大規模集材か小規模集材か 

大規模、小規模に拘わらず適応できます。
最小限2人のチーム編成から大人数のチーム編成まで能率的な作業が出来ます。
2人の場合は事前に間伐を行い、集材スポットに木を集めておきます。
準備が出来たら鎖とハーフパイプを敷設し、作業道上に一人、集材スポットに一人を配置し、腰に付けた操作ボタンを使って鎖を運転停止し木寄せを行います。

ksis7_edited.JPG大規模に行う場合は、作業道上に重機(グラップルまたはプロセッサー)を配置します。
複数の集材スポットでハーフパイプの間を空けて、それぞれ木を鎖に繋ぐための要員をおきます。
その他の作業者は木を伐採しながら集材スポットへ木を集める作業をします。ハーフパイプとハーフパイプの間を空けて、木を鎖に繋ぐ作業場所を複数確保し、複数の人が同時に作業できるようにしてやれば、全体のバランスが取れて能率が向上します。 

10. K-システムは森に優しい「筋状間伐」

 K-システムは鎖とハーフパイプを使い、木を搬出するシステムですから、列状間伐や重機を使った間伐方法に比べて森を傷めることが極めて少ない間伐方法です。
鎖を使いますので鎖の通る部分は木の搬出に必要な面積の木を切る必要があります。
つまり、木一本を縦に通すための道はどうしても必要です。
K-システムも列状間伐の一種だとは思いますが、重機を使わず非常に細い面積で間伐出来るので敢えて「筋状間伐」と命名しました。
間伐後、森を見ても木を引き出した跡さえほとんど分からないレベルであると思います。 

11. 設置作業が簡単

トラックが現地に到着したところから設置作業が始まります。
トラック上の駆動装置から繰り出した鎖のループを地上に下ろし、木を引上げる位置の山の上部にある頑丈そうな木を選び滑車を取り付けます。
ksis8_edited.JPG
山の傾斜と作業道との関係で、場合により鎖が作業道の路肩を傷めることが予想されます。
そのような場合には、図のように副木丸太を使って滑車を上下に備え、路肩を守ることが出来ます。副木の上部にワイヤーを取り付けておいてさらに上部の木の根元に緊縛すれば、鎖を掛ける木の保護にもなります。タワーヤーダと同じメリットが得られます。
トラックが動かないように、トラックの数箇所にワイヤーを取り付け、ワイヤーの先を、適当な近くの木の幹に緊縛し、レバーブロックなどを使ってトラックを固定します。これで作業は完了します。慣れてくれば、おそらく20~30分ほどで準備作業が終わります。 

12. 作業道の節約「疎密度路網」 の実現と傾斜地の救済 

木寄せの作業距離が伸びるということは、必要な作業道が少なくて済むということです。
現在機械化林業を進める上で前提となっている高密度路網を作らなくても済む可能性が出て来ます。

 ksis9_edited.JPG

次の図は、Kシステムで想定する作業道の開設想定図です。基幹道からの取り付け道路と登坂道を開設する必要性は、高密度路網と同じですが、作業道については、1/4程度に減少出来ます。
作業道開設には大きな労力と費用が掛かりますので、メリットは大きいものになります。

 ksis10_edited.JPG最近、K社ではスィッチバック式のフォワーダを開発し、売り出しています。
スィッチバック式で運行できれば、Kシステムとの併用で今まで手の出せなかった急傾斜地での伐採・回収も可能性が出て来ます。
長尺の木材搬出も安全にできます。 

13. スィングヤーダとの比較 

木寄せ作業に威力を発揮する高性能林業機械として普及しつつあるスィングヤーダとの比較をしてみます。
 スウィングヤーダは作業場所に生えている木との間にワイヤーを張り、キャリアの往復運動で木寄せを行います。
Kシステムとの違いを一表に纏めてみました。

ksis11_edited.JPG左記のほか、集めた間伐材をフォワーダで運ぶ距離も高密度路網を戻らなければならない為、運搬距離もスィングヤーダの場合は長くなります。
高密度路網は、100~120m/ha程度と言われていますが、Kシステムでは、25m/ha程度です。また、スィングヤーダの操作には熟練作業者が必要になりますが、Kシステムでは高度な熟練技術は必要ありません。 

14. Kシステムの特長 

 冒頭、Kシステムの長所について述べましたが、ここで改めて纏めてみますと次の表のようになります。

ksis12_edited.JPG つまり、今まで経済的に成り立たないため、「切り捨て間伐」に甘んじてきたわけですが、Kシステムの活用により間伐材でも利益を出せる可能性が出てきます。 

 15. 手軽で能率よく利益が出せる?

  Kシステムによってどの程度の経済利益が得られるものか一つの事例を基に試算してみます。 ksis13_edited.JPGha当たり3,000本の木が生えている山林を3回に亘って間伐を行い、最終的に550本の木を残すこととしました。
つまり、一回あたりの間伐本数は817本/ha です。
一本あたりの平均材積を0.212m3(15cmΦ×12mL)として細かい計算過程は省略しますが、直接費は、基幹道路付近の土場渡しで3、200円/程度となりました。
間接費・経費は800万円/年を計上し、山主さんへ立ち木代10万円/haをお支払いしたとしても4,200円/m程度で収まります。
木材市場の丸太価格は11,000~12,000円/m程度です。搬出費用が下がるので、大きな利益が期待できます。 また、木材として利用できない端材部分を、燃料として評価するとどうなるでしょうか。 木質燃料の代表的な材料である、「木質ペレット」は外国産の最も安いもので 20,000円/トン、国産の上質物で40,000円/トン位です。
換算では 水分15%での比重を0.68とすると13,600~27,200円/mになります。ペレットへの加工代を含めても十分に利益が出せる筈です。 
ペレットへ加工しないで、チップのまま直接燃料として活用できる方法があれば、さらに経済的利益は大きくなります。  今まで採算が取れず、進まなかった間伐材の利用を促進し、「切捨て間伐」を止めることが出来ます。森に捨てられていた間伐材が、地域の燃料として有効利用できれば、その分、地下エネルギーの消費を節約できることになり、地球環境の改善に大きく貢献出来ます。また何よりも、日本中の里山の保全や、地域経済の振興にお役立ち出来ます。 Kシステムはそんな可能性を秘めた方法であると信じます。
                    (完)

カテゴリー: K-BETS知恵袋(Q&A), 木材の収集システム パーマリンク

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