京都の亡霊を引きずるCOP16

New York Times DE  December 1, 2010
http://dotearth.blogs.nytimes.com/2010/12/01/the-ghost-of-kyoto-visits-cancun/

平穏に進むと思われたメキシコで開かれているCOP16が、排出大手の中国とアメリカが
協力しないなら、京都議定書で定めた排出制限を2012年以降に延長するつもりはないと
明言した日本代表の発言で、波乱含みとなった。
また途上国を潤しているクリーン開発メカニズムによる金の流れが持続しなくなれば、
途上国が新しい合意に署名しない危険もある。
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今回の[COP16]の開催の冒頭において、日本の代表が強い口調で、
日本の主張を述べたことを、世界の国が驚きを持って受けた、と伝えら
れました。
日本のマスメディアには、あまり採りあげられませんでした
が、
感じる点がありましたので、コメントをさせて頂きます。
・日本人には、「和を持って貴しとなす」という気質があり、強い口調
で反論する
事は、控えるべきであると言う思い込みがあります。
・しかし、これが、国際的には日本は何も主張しないで、後からついて
くるものと
「ジャパン、ナッシング」に繋がる風潮を生みだしている、
ことにつながります。
・国民の利益と世界の流れを見て、明確に反論するべき段階では、それを
「ハッキリという必要がある」場合もあることを、今回の[COP16]
では
日本政府は打ち出している。
・日本のマスコミは、いつも政府の悪口を言うことが習慣の様になってい
るので、
この様な場面について、面くらっているので、何も解説ができな
いでいます。
私見ですが、京都議定書の延長問題について、知りうる範囲でのコメント
を付け加え
ます。
・[COP16]では、アメリカと中国の削減に対する目標設定が必要で
あるのに、
国際交渉の場では、どちらも削減の義務を負うことは、国内事
情もあって、
ほぼ不可能な状況になっている。
・欧州諸国EUは、各国にまたがった「排出量取引制度」を、先行して実
施して、
既に多くの案件を抱えて大量の資金が動いている。
・もしも2013年以降の排出枠の目標設定ができなかった場合には、この見
込み
発車した【排出削減事業】の「排出量削減枠」が、取引価格が暴落す
る懸念が
大きい。
・この暴落が引き起こす、金融業界の損失と混乱は、予測がつかない状況
で、
ただでさえ、ギリシャやアイルランドなどの金融破たんで混乱、停滞
している
経済に大きな悪影響が懸念される。
・したがって、アメリカや中国の参加がなくても、欧州諸国としては、20
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年以降の排出削減目標を、なんとしてでも国際交渉の場で設定しておく
ことが、国益、
欧州益につながる。
以上の様な理由で、[COP16]においては、地球の気候変動問題に対
する
国際交渉の場という意義をほとんど失って、欧州益をどのようにして
守るかの
場面に変質してしまっている。
日本は、このような欧州の都合に合わせる必要はないと判断して、京都議
定書の
延長には、絶対反対の立場を固めたので、冒頭の様に強い口調で主
張している。
以上が現状までの[COP16]の事情といえます。
その結果、日本は早速、環境NGO団体から、「化石賞」のトップ受賞を
受け、
途上国からは[COP16]の会議を混乱させる、「悪者国家」の
烙印をおされ
そうな状況になりそうです。
外交、国際交渉についての利害得失は、戦略的な背景もありますので、こ
日本の姿勢が、長期的にはどう影響するかは解りかねますので、差し控
えます。
    渡辺 雅樹
  <追記>本年の講演会のCO2排出量25%削減と、経済、環境問題について』の講演者である斉藤鉄夫元環境大臣は、講演のなかで、「日本にとって、京都議定書の単純延長は最悪の選択である」と明確に述べていました。 

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