世界エネルギーの見通し

”世界のバイオマス関連セレクション”世界エネルギーの見通し
International Energy Outlook 2008 (IEO 2008)
アメリカエネルギー省 June 2008
http://www.eia.doe.gov/oiaf/ieo/highlights.html/

世界のエネルギー需要は2004年から2030年までに57%増える。うちOECD非加盟国の需要が95%増えるのに対し、加盟国の増加率は24%である。非加盟国の増加が激しい主な原因は急速な経済成長である。非加盟国全体のGDP (購買力平価条件) は年間平均5.2%増加する。液体燃料のシェアが高いことも変わらないが、2005年の37%から2030年には33%に低下する。主な理由は原油価格が今後とも比較的高い水準にとどまるためである。値上がりの原因はいくつかあるが、中でも主なものは急増するアジアと中東のOECD非加盟国の需要、2005年以降のOPEC諸国の生産伸び悩み、石油の探査と開発コストの上昇、一般的な商品相場の上昇、ドル安などである。IEO2008の予測期間中も、需要の中心が輸送用と工業用であるため、液体燃料がエネルギー源の中心であることは変わらない。。しかし2030年までの期間には、液体以外の燃料の利用が増えるために、液体のシェアは継続して低下する。
オイルサンド、超重質原油、バイオ燃料、液化石炭、液化ガスなどの新しい液体燃料が徐々に増えると考えられる。これらの新しい資源は2005年の1日わずか250万バレルから、2030年には970バレルとなり石油換算で全体の9%を占める。アメリカにおけるバイオ燃料生産の増加に伴い、バイオエタノール、バイオジーゼルのシェアが高くなる。IEO2008の標準ケースでは、2,030年にはアメリカが1日120万バレルで、世界のバイオ燃料の約半分を占めると予測する。燃焼による二酸化炭素排出量が石油より少ないので、排出規制が実施されれば天然ガスへの転換が加速する。製造業は天然ガス最大の消費市場で、2030年の需要の43%を占める。電力市場では燃料効率が比較的高い天然ガスへの転換が進み、2030年には天然ガスの35%が発電に使われる。
石油と天然ガスの値上がりが続いているため、アメリカ、中国、インドのように石炭を国内調達できる国では石炭発電が経済的に有利である。
原子力発電所が普及しない原因には、発電所の安全、放射性廃棄物処理、原子力兵器の拡散など多くの理由があり、多くの国でこれが近隣住民に不安感を与え、これが新しい動力用原子炉の開発を妨げている。そのほかに設備費、管理費が高いことも拡大の妨げになっている。このような状況にあってもなお、IEO2008の予測では2025年の見通しが、5年前のIEO2003よりも31%高くなっている。
標準ケースでは、予測期間中は石油と天然ガスの高値が続くため、再生可能の燃料の開発が促進される。環境的に好ましい再生可能エネルギーは、二酸化炭素の排出削減を推進している国で特に著しい。国が政策的に再生可能なエネルギー源で発電を行うことを計画しているところでは、経済的に化石燃料に競合できなくても、再生可能エネルギーの開発が促進されることが考えられる。
OECD非加盟国で再生可能エネルギーの利用が増えるのは中ないし大規模の水力発電が増えるためで、アジアと中南米の諸国では水力発電の新設が増えている。OECD諸国では風力とバイオマスを利用した水力以外の再生可能発電が期待される。
世界の二酸化炭素排出量は着実に増えて、2005年の281億トン、2015年の343億トンから2030年には423億トンになる。増加量の多くが、高度の経済成長が続き化石燃料への依存度が高いOECD非加盟国によるものである。2005年には非加盟国の排出量が加盟国の排出量を7%上回った。2,030年にはこれが72%になると予想される。

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