よく機能しているEUの排出権取引制度

”世界のバイオマス関連セレクション”よく機能しているEUの排出権取引制度
European System For Cutting Carbon Dioxide Emissions Is Working Well
ScienceDaily June 12, 2008

http://www.sciencedaily.com/releases/2008/06/080610154749.htm
EUには世界最大規模の排出権取引制度の運用と排出量の上限設定では、すでに3年の実績がある。MITが行った分析によると、キャップアンドトレードシステムの実施を急ぎすぎたために発足当初にはいろいろ問題があった。しかしEU経済に実質的な悪影響をもたらすことなく、順調に運用されているといってよい。二酸化炭素の排出をキャップアンドトレードでコントロールするという考え方は、前例がほとんどない。現在EU ETSは、すべての面でアメリカに比べて計画規模がはるかに大きい。アメリカの二酸化硫黄の観測地点が3,000あるのに対して、EUは11,000を数える。予算規模もアメリカが40億ドル、EUは800億ドルである。ETSが第一段階を終わり以下のような教訓が得られた。
1)排出の削減は3年間の試行期間の主目的ではなかったが、実際にはマクロ経済にはほとんど影響を与えずに、二酸化炭素の排出は減った。
2)EU ETSの3年の期間内に、ある年の認可量を翌年に繰り越したり、翌年の認可量を今年に前取りしたりするのを認めることである。
3)市場のスムーズな運営と排出の削減目標を達成するためには、信頼できるデータを揃えることとコミュニケーションのよさが重要なこと
4)排出許可量の割り当て方法には議論の余地が多く残っており、キャップアンドトレード方式は二酸化炭素の排出削減には、いまだに多分に政治性が高い方法であることが明らかになったこと。キャップアンドトレードシステムの優れた点の一つは、排出を減らせば割り当て許可の売却利益が増えることになる仕組みである。
EU ETSは基本的に中央による集中管理だが、各国の上限、許可証の発行、取引の統括と監視などはそれぞれに権限を委譲している。Ellermanは、20年、30年後にも排出権問題が議論されるだろうが、そのときにもEUの試みは、地球規模の気候変動対策の基本的アーキテクチャとして残っているだろうと語った。

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