天然ガスと炭素税について   2012年11月6日  渡辺雅樹

  情報:   「シェールガスがエネルギー地図を書き換える」

頁岩は全米に存在しこれから回収できる天然ガスでアメリカのエネルギー需要を数十年は賄える。温室効果ガス82%を排出してきた石炭発電に代替すれば、排出は半分になる。良いことずくめの天然ガスだが、採掘に伴う環境問題や新たなインフラ構築のための財政負担などの問題がある。アメリカではCO2排出を有料化し、天然ガスを次世代エネルギーへの懸け橋とするよう大統領に働きかける動きがある。
http://prod.www.technologyreview.com/featuredstory/415725/natural-gas-changes-the-energy-map/
***************************************************************

天然ガスに関する最新情報は、温室効果ガスの排出削減に対し、大変に意義にある「具体性のある挑戦課題」が明確になって来たと思います。世界の気候変動問題に後ろ向きであった「アメリカが前向きになる」大きな転換が起きる徴向が見えてきています。

1997年末に、京都議定書の締結が行われた折に、アメリカは、削減の数値目標を合意していました。しかし、産業界と共和党は真っ向から拒絶して、京都議定書の批准を拒否し、実行不可能を主張して、葬り去ってしまいました。

確かに、1998年時点では、アメリカにとっては、技術的に不可能な課題ばかりで、拒否する理由は山ほどありました。2012年になって、天然ガスの大量生産が可能になれば、アメリカも削減交渉を拒否する理由は、ほぼ、なくなりますので、おおいに期待したいところです。この記事で、【編集者として、どんな切り口で天然ガスを扱ったらよいのか】と、読者に問いかけていますが、技術的な成功が世界の気候変動対策に朗報であるとの、スタンスに立つ、大きな転換期だと受け取るべきでしょう。

1998年時点での「日本の気候変動問題の活動団体」は、2030年頃までは、石炭、石油の利用を控えて『天然ガスへの大転換』を、優先的に進めるべきと主張していました。もちろん、再生可能エネルギーの技術進化を最大限に推進するのが、最重要であるとの主張が最前面にありましたが、当時の技術水準では、2030年頃までは、本命の代替エネルギーになる見通しは、ほとんどありませんでした。経団連をはじめとした産業界は、「京都議定書の締結」は、外交の誤りだとして、天然ガスへの転換促進も図らず、再生可能エネルギーは、「ゴミの様に扱い」、どちらの優遇政策も全く拒否の姿勢を貫き通していました。

それでも、小泉内閣の時に京都議定書の批准が【ギリギリのところで成立】して、産業界は、原発の増設による[CO2排出]削減効果に依存する姿勢になってしまい、この時から【原発の安全神話】は、強化される一方になったのです。

あとは説明の必要もない【エネルギー政策崩壊の道】を突き進んで行ったのです。さて、今後の重要課題で、前面に出す必要がある課題は、通称『国際炭素税の創設』が、あげられます。天然ガスといえども、[CO2排出]は、かなりの量を占めることになり、あくまでも、「中継ぎの代替エネルギー」の役割です。『本命の再生可能エネルギー』が、「経済的な競争力」を備えるまでの間は、経済的に化石燃料エネルギーよりも割高では、普及促進が不十分です。そこで、炭素含有量の多い燃料ほど「高い環境税を負担させる」との趣旨の「炭素含有量に応じた税」を徴収し、その税源によって「再生可能エネルギー」の「技術開発促進」と、「事業普及拡大」の政策的な誘導策の財源とする。
この趣旨の税金の創設は、1995年頃から「日本でも炭素税研究会(市民団体の活動)」によって、具体的な課税方法も研究されて、提言活動をしていました。しかし、自民党政権時代は、産業界の拒否姿勢によって、国会で取り上げられたことはありませんでした。民主党は、政権交代のマニフェストの中に、「温暖化対策税」の構想として、この「炭素税の考え方」を採用して、政権交代後に地道に政策実行を進めていました。この税制度は、2102年から発効して、はじめは軽微な税率で課税し、3年で本税率に引き上げます。

消費税増税騒動の影に隠れてしまい、一般の人たちは、ほとんど知らないのが現状です。

だめだ!ダメだ!と言われる政治でも、日本の一部では、着実に温暖化対策の実行が行われていることも、きちんと認識しておいて欲しいモノだと感じます。
以上

カテゴリー: 技術者の主張と提言 パーマリンク