蔵前バイオ通信 第46号 2017年7月15日

K-BETSメールマガジン第46号をお届けします。
今回も、私たちの活動状況と自然エネルギー利用の有益な情報をご案内いたします。
是非ご活用ください。
蔵前バイオ通信 第46号 2017年7月15日

*******************目次 ***************************
1.       技術情報検討会(進藤)
2.       事業化推進検討会(清田)
3.       アルジェ研究会(廣谷)
4.       熱エネルギー研究会(進藤)
5.       林業システム研究会(渡辺)
6.       Kシステム開発プロジェクト(米谷)
7.       竹林プロジェクト(篠崎)
8.       バイオチクプロジェクト(渡辺)
9.       ホームページによる情報発信
10.    世界のバイオマス
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お知らせ
5月16日に本NPO法人の通常総会を開催しました。議案の審議、決算報告など行い、総会で承認されました。決算報告書類がホームページのK-BETSの概要⇒組織概要 のページに掲載していますので、ご覧ください。

バイオマスセミナー開催案内
東工大蔵前会館において2017 年7 月25 日(火)に「バイオマス産業創造と森林資源の活用」をテーマに、セミナーを開催します。政府が進めるバイオマス産業政策と企業側の森林資源の活用事例について講演をして頂きますので、ふるってご参加ください。詳細は下記をご覧ください。

蔵前バイオマスセミナー開催予告

新理事長就任挨拶 米谷栄二(吉川 前理事長の後任 6月1日就任)
K-BETSがNPOとしてスタートし昨年で11年になりました。当時、世の中ではバイオマスについては化石燃料に替わる輸送燃料としての利用が主なテーマでした。しかし、私たちは、美しい環境を子供たちや孫の代に残すため、荒廃が進む日本の森林・林業の再生、森林の手入れによる環境保全を目指して、森林資源の活用のために、急斜面でも安全に集材できるシステムの自主開発、木質バイオマスの小型ガス化発電設備の開発支援などの活動を行ってまいりました。現在の活動は、本メールマガジンで報告している通りです。
さて、3.11の原発事故を契機として、再生可能エネルギーの利用拡大が大きな課題となり、藻類、木質などのエネルギー利用に大きな期待がかけられています。さらに、セルロースナノファイバー(CNF)などのマテリアル利用が進んでいます。
こういった変化に対応しつつ、藻利用、バイオマスの熱エネルギー利用、技術・社会動向など再生可能エネルギー全般について、情報収集、分析を積極的に進め、技術支援、そしてバイオマスセミナーをはじめ、各種講演会、勉強会など啓蒙活動を行っています。
これらの活動をさらに充実させ発展させていきますので、これまで以上の積極的なご参加とご支援をお願い申し上げます。

総会時、例会時に勉強会を開催しました。
5月16日 :「竹炭を使った野菜と花づくり」 講師 福島 巌
「ここ4年ほど竹炭を使った有機栽培を行っている。その成果について報告した。ゴーヤ、キウリ、カボチャなどには根の張り方などに有意差が見られた。荒れ地と違い豊かに仕上げた土壌では竹炭の有り無しで生産量や品質に大きな差異は認められなかった。花の鉢植え栽培では夏場の保水効果が認められた。今年は竹炭と竹粉の混合栽培の調査をしている。」
7月4日 :「日本の古代史について」 講師 福島 巌
「最近のY染色体DNA分析により人類の歴史が説明できるようになってきた。倭人は米作技術を持ってやってきた弥生人であり半島にも日本にも大勢住んでいた。魏志倭人伝に書かれている倭国、邪馬台国、倭の五王など全ては伽耶国(=倭国)の話題である。直近の韓国金海と高霊の史跡見学結果を踏まえて説明した。」
これからも毎回、有益な勉強会を開催して参ります。多数の会員の方々の参加を期待しています。

1.技術情報検討会(進藤)
最近のトピックスとして報告されたナノエマルジョン燃料の技術情報について紹介します。重油などに水を添加・分散させてエンジン機関に使用するするエマルジョン燃料は昔から検討されているが、水粒子の粒径や分散状態で燃焼が不安定とされていていました。ナノエマルジョン燃料では、油の中に水粒子を極限のナノレベルまで微細化する事により、均一分散が可能となり、微細な水粒子が油膜を微細化しているので、エンジンで燃焼させると温度上昇の過程で油より先に内包された水が気化し体積膨張(約1700倍)して、油滴が更に微粒化され、表面積が大きくなることから強制的な空気との混合が行われ、効率の良い完全燃焼が可能になるとの事です。燃焼効率が改善され、燃費が向上し、CO2、NOx削減にもなります。この技術は、バイオ・ディーゼル燃料への適用可能性も期待されています。

2.事業化推進検討会(清田)
①         K-BETSの紹介カタログにある「技術者集団」という表現について、新たに会員になりたいと思っている人にとって、敷居が高いのではないかというご指摘があり、この扱いについて議論した。様々な意見が出されたが結論が出ず、今後さらに検討することになった。
②         会員が自主的に進めている「バイオマス燃料製造設備」の稼働実験について写真、動画による説明が行われた。この設備について質疑応答、今後の進め方について検討した。様々な意見が出されたが、さらに検討を深めることとした。
③         クラウドファンディングについてK-BETSも活用を検討してはどうかという意見があり、岸本からファンディングについての資料提供があった。メリット、デメリットについて議論が交わされ、起案者、支援者の負うリスクについて認識を深めることが出来た。
④         今後十分な検討と事前準備が必要であるということになった。
⑤         10年史編纂について原稿が概ね出そろいつつあるという報告がなされた。編集委員会を開いて「形を整える」作業を進めることとなった。

3.アルジェ研究会 昆布の工業利用(廣谷)
日本は海草を食べる本拠だと思っている。確かに海苔はおにぎりに使うし、ワカメは味噌汁に使うしメカブはご飯にかけて食べる。しかし昆布の登場が少なくなってきた。
昔は日本が中国に昆布の栽培指導していたが、生産量で抜かれ、今度は米国にも抜かれた様だ。B. Smithが創立したGreen Wave(海洋農場)が好調の様で、売上60億ドル(7000億円)で主として昆布であるとみている。日本は昆布は2400億円(2014年)であり、勝負は有ったとみている。
昆布から電池が出来る事が分った。オーストラリアのクィーンズ工科大学のD. Yangが米国化学会(ACS)で発表した。コバルト等金属を中心として昆布から抽出したアルギン酸を卵型にして有孔カーボンナノファイバ―とする。リチウム電池より良いものとなる様だ。車に使うと走る距離は倍となる様だ。日本得意な電気自動車であれば昆布生産が盛んになるであろう。昆布は工業原料にもなる。
日本は陸上の農業を若者がやりたがらない傾向がある。挑戦してみようと言う若者には、農業か工業か両方持っている仕事は若者向きだと思うが。

4.熱エネルギー研究会(進藤)
地産地消型の小規模発電は、地域資源を活用するので林業再生が促進されます。その事例として、長野県飯田市が環境保全に取り組む「かぶちゃんの里山応援プロジェクト」にて、木質バイオマス発電所が2016年9月に売電を開始しています。森林活性化事業の足かせとなっていた間伐材を利用して生活に供給する電気を森からつくる事を目標としています。長野県初のガス化装置による360kWの発電所です。発電設備は㈱ZEエナジーが納入し、発電効率は25%以上を目指している様です。燃料使用量は年間約4千トンです。 熱は、周辺地域からの間伐材のチップ乾燥とイチゴ農園に供給しています。発電設備からの排出炭(73Ton/年)は、かぶちゃんファーム耕作地で土壌改良材として利用しているそうです。

5.林業システム研究会(渡辺)
林業の実情は厳しい状況にあり、林野庁からは今後の「複層林への誘導」を、うち出している。特に、「針葉樹一斉人工林」においては、広葉樹の導入により、育成複層林に誘導する。これは、「拡大造林を全国的に展開した林業政策」を、「水源涵養、生物多様性保全」などの機能を重視し急傾斜地など立地条件の悪い育成単層林は、針葉樹広葉樹の混交林に誘導する政策に転換することである複層林への誘導は、気候変動に伴って「緊急の課題」であり、地域社会への支援と財政的な継続性が必要となっています。林業研究会では、技術的な課題と事業性の改善に貢献できる研究を、引き続き会員の皆様の総智を集めて検討していきます。

6.Kシステム開発プロジェクト(清田)
某メーカーからKシステム開発支援の話があり、今後契約内容や開発支援の条件などについて詳細な詰めを行うことになった。今回開発の主眼は、今までの実際的な体験から得られた実用的な課題に対処するものです。例えば ①牽引力を高める ②チェーン巻き上げ装置を備えて、チェーンの供給、撤収時間を短縮する ③操作を遠隔化する ④チェーンが地上を這うのではなく、地上から少し浮いた状態で木を牽引できるようにする ⑤滑車の重量を減らし作業負荷を減らす ⑥チェーンの張り、弛めの操作をやりやすくする  等々操作性、生産性の向上に更なる改良を目指しております。

7.竹林プロジェクト(篠崎)
①炭化炉DECAの実用新案特許を出願しました。
②生態工学会年次大会で炭化炉DECAをポスターセッションで発表しました。
③いすみ竹炭研究会の竹林整備イベントに参加しました。40人が楽しく作業していました。完成前の炭化炉「炭之助」を使って竹炭を上手に製造していました。
④7月11日~15日、タイのカセサート大学でConferenceに参加し、「炭之助」とDECAを紹介し、タイにおける竹林整備問題を調査してくる予定です。

8.バイオチクプロジェクト
2017年1月から市場に提供した「ブレスパイプ」(樹木医の樹勢回復ツール)は、認知度が低く、これからの地道な広報と、実績作りが必要な段階です。ブレスパイプに内蔵される「竹炭と竹パウダーの相乗効果」は、着実に広める活動によって、「CO2吸収効果と炭素の地下保存」で、「パリ協定」に貢献します。また、現段階ではパイプ部分が「石油由来のプラスチック」のため、容器の全てを「バイオマス由来のプラスチック化」を図る構造として、新設計を完成させました。射出成型用の量産金型の準備に取り掛かっています。この完成によって、「樹勢回復用のツール」が、市場に提供されます。

9.ホームページによる情報発信
主に本会会員吉澤有介が要約した一般図書。および荒川英敏による報告です。
2017/07/07住宅向けRHI再生可能熱インセンテイブの現状 [再生可能エネルギー]
2017/07/03英国陸上風力の記録的な伸び![再生可能エネルギー]
2017/07/02「動物たちの武器」ダグラス J エムレン著 [人体・動物]
2017/07/01再生可能熱インセンティブ制度の利用状況[気候・環境]
2017/06/23イギリスとEUの離脱交渉始まる [社会・経済・政策]
2017/06/17ロンドンの高層住宅大火災[社会・経済・政策]
2017/06/15「超デイーブな深海生物学」長沼 毅・倉持卓司共著[人体・動物]
2017/06/15「タンパク質とからだ」平野 久著」 [人体・動物]
2017/06/15電気自動車(EV)の普及が 2016年に世界で 200万台に達す![社会・経済・政策]
2017/06/15イギリスで EVタクシー専門工場が稼働[社会・経済・政策]

10.世界のバイオマス情報トピックス
特別顧問 佐野 勇 による世界のバイオマスから抜粋したトピックスです。
詳細はhttp://www.kuramae-bioenergy.jp/world/をご覧ください。
①  生態系を乱すほどの巨大な規模で行わない限り、植林だけでは化石燃料の燃焼に伴って発生した大気中のCO2を削減するための効果的な選択とは言えないことが分かった。

②  ウイスコンシン大学マディソン校で、食用にならないバイオマスから化学製品や燃料を作る技術を開発した。次の目標としてコスト低減に取り組む。また、トウモロコシを原料とした第一世代エタノールには、化石燃料に比べてとくに大きな温室効果ガスの削減効果はないという評価があったが、今回の研究により、第二世代バイオ燃料製造の場合には、管理の行き届いた木と多年生の草を使用すれば、原料から燃料までの全工程に伴う環境負荷を削減できることが分かった。

③  チリで生産されている藻ベースのDHAを使って育てられた銀鮭が、初めて店頭に上った。肉質は味と色が上質である。この方法を使えば、オメガ3脂肪酸のレベルを落とさずに魚油の使用を減らすことができる。

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