ロンドン便り その7 DIYで滞在先の玄関ドア、玄関窓のペアガラス化に挑戦!
DIYとはご承知のように、”Do It Yourself”の略で“他人に頼らず自分でやる”ということですが、日本語で言うと”日曜大工”の事でしょうか。今では日本も各地に広がったホームセンターのおかげで自分でやることが好きな方にとってはなんとも嬉しいことではないでしょうか。
イギリス人の男性は自分で出来ることは自分でやると言う精神が旺盛で親の代からの大工道具の老舗ブランドStanleyのこぎり、かなづち、かんな、壁塗りこて、ドライバー、ペンチ等、そしてペンキ、ペンキ塗りの刷毛等々必要な工具一式を揃えガレージに保管し、そこが作業場にもなるのです。 イギリス人の男性でDIYが出来ないとまず結婚は無理ではないかと思われるくらいに大事な事になっています。 イギリスは緯度が高いので(樺太と同じ緯度)日が長くなる4月から9月まで、特に6月の夏至のころには朝3時半ごろから日の出が始まり、日没は夜の10時半頃になるので、仕事を終えて帰宅してからはまさにDIYに精を出すイギリス人をたくさん見る事が出来ます。彼らを見ているととにかく器用で何でもやってしまう感じがします。
ペンキ塗り、壁紙の張替え、タイルの張替え、水周りの水漏れの処理、棚を作ったり、玄関入口の歩道のコンクリート敷きや、ボイラーや電気製品の修理、カーペットの張替え、雨樋の整備や交換等々、玄関口のコンクリート敷きのやり変えはセメント、砂、砂利をDIY ショップで購入し、ミキサーはレンタルショップで借りあっと言う間に終わらしてしまいます。 車の整備や修理も例にもれず、DIYで行うのはお手のもので、エンジンの交換まで自分で行ってしまいます。これも中古の整備済みのエンジンを購入して、300kg近い重量物のエンジンを持ち上げるホイストをレンタルショップで借りてやってしまうのです。しかし最近の車は電子化が進んだのか、故障も少なく、この光景も減って来ている様です。 この事は、ホームセンター、レンタルショップやカーパーツ専門店等で作業ごとに細かく解説されたDIYマニュアルや、さらに車も車種別に詳細な修理マニュアルが売られていること、つまりDIYに必要なインフラが整備されているから,やる気も起こるのか知れません。 私もイギリス人に負けじと、昨年の夏、滞在先にある18枚のガラス窓(面積18㎡相当)の15枚分(面積16.2㎡相当)はDIYでペアガラス化を済ませていたのですが、今回は残っていた、玄関ドア・玄関窓の3枚分(面積1.8㎡相当)のペアガラス化に挑戦して見ました。
そのときの様子を写真で記録しましたのでご笑覧ください。
ペアガラス化に挑戦した玄関ドア・玄関窓
(この玄関ドア・玄関窓は建物が建築された1958年当時からのもので、私が入居した1976年から3年毎にペンキの塗り替えを行って来ています。) ペアガラス化に必要な材料 *材料名及びインターネット通販での購入価格
1)アクリル板(厚さ3mm)3枚(合計1.8㎡相当) 44.50ポンド(約5,340円)
2)ゴム磁気テープキット(S極・N極対 アクリル板側、窓枠側)
49.50ポンド(約5,940円) 合計 94.00ポンド(約11,280円)
①ドアガラス枠にS極のゴム磁気テープを貼る。 ②保護フィルム付のプリカットされたアクリル板(ゴム磁気テープを貼る場所はしっかり付く様に塗料をはがし、ドアの木がむき出しになっている。)
③保護フィルムをはがし、N極のゴム磁気テープを貼る。④左がN極ゴム磁気テープを貼ったアクリル板右がS極ゴム磁気テープを貼ったドアガラス枠
アクリル板を張る前の玄関ドア・窓 アクリル板を貼ってペアガラス化が完了した玄関 アクリル板側に貼られたN極のゴム磁気テープは接着面が白なので、窓枠の白との違和感もなく仕上がりました。またS極・N極で強力に引合い完全密着なので湿気の進入もなく、メーカーの話では寿命は約20年との事でした。
さて、玄関ドア・玄関窓1.8㎡相当にアクリル板を張る前と、アクリル板を張ってペアガラス化した場合の1日の熱損失がどの様に変化するか、試算して見ました。
・計算条件:
3mm厚ガラスの熱貫流率 5.9(w/㎡k)
3mm厚ガラス+15mm厚空気層+3mm厚アクリル板の熱貫流率 3.7(w/㎡k)
外気温度 5℃ 玄関ホール室温 18℃
熱損失(Wh)=熱貫流率(w/㎡k)X ガラス面面積(㎡)X温度差(℃)X 24h
・アクリル板を張る前(ガラス3mm厚1枚)の一日の熱損失
5.9 X 1.8 X (18 – 5) X 24 = 3,313wh
・アクリル板を張ってペアガラス化した後の一日の熱損失
3.7 X 1.8 X (18 – 5) X 24 = 2,078wh
ペアガラス化した効果は
・一日の熱損失が3,313wh – 2,078wh =1,235wh で37.3% 減少。
・電気代は一ヶ月で1.235kwh/日 x 6.43p/kwh x 30日= 238p(約286円)の節減。
・CO2は一ヶ月で1.235kwh x 0.34kg/kwh x 30日 = 12.6kg の削減となり、少し
イギリスのCO2削減に貢献出来そうです。
今回のペアガラス化への投資額は94.00ポンド(11,280円)で、仮に暖房期間を11月から翌年3月までの5ヶ月とした場合の電気代節減額は2.38ポンド(約286円)/月x 5ヶ月で、11.90ポンド(約1,430円)となり、投資金額の回収には7.9年かかる計算になります。 一方、専門業者に頼んで現行の玄関ドア・玄関窓を最新の高性能な断熱ドア+ペアガラス(熱貫流率1.9 w/㎡k)に交換すると約1,800ポンド(約216,000円)掛かります。
このときの熱損失は以下の様になります。
断熱ドア+ペアガラス使用時の熱損失:1.9 X 1.8 x (18 – 5) x 24h = 1,067whとなり熱損失の削減は 3,313wh – 1,067wh = 2,246wh 、68% 減となります。この場合の電気代の節減は暖房期間で 2.246kwh/日 x 6.43p/kwh x 30日x 5ヶ月= 21.66ポンド(約2,600円)となり、投資金額の回収には83年もかかる事になります。 この様に、DIYで行うことがベストなコストパフォーマンスを得ることが出来る訳で、イギリス人が夢中になるのも理解できる様な気がします。
日本人の男性もDIYにのめり込めば、家計も助かるし、家族から喜ばれるし、省エネにもなり少しばかりですがCO2削減にも貢献でき自身のDIYの腕も上がり老後の楽しみが増え、良いことずくめの気がします。