2017年正月の例会後の勉強会は上記テーマで荒川講師が行いました。その要約は以下です。
今回のEU離脱を問う国民投票は、英国の国論を二分した離脱派、残留派の論争となったが、これはもう互角の状態であった。つまりEU第2大国、英国の国民の半数がEUに対して 不満を持っていることが、どの世論調査よりも明確となった。EU本部は英国のこの事実を真摯に受け入れ、英国民がこんなに不満を持っているなら他の加盟国の国民にも不満があるのではと考え、根本的にEU政府のやり方について、不満派の視点から見直さない限り、EUの未来はないと考えるべきである。
そもそも国の歴史も言語も民族、文化、風俗習慣、社会の成り立ち、その上、国力や産業構造や、経済力等、様々な項目で異なる28の加盟国を政治、経済、通貨、往来の自由、 さらにEU軍を作り統合しようとしている、EU政府の方向自体が無理な話でなかったのか、 その無理さ加減を最も理解していたのが英国人であると思う。だから巡って来た国民投票のチャンスに離脱を選択したと考えるべきで、決して感情的な選択ではなく、理性で判断をしたのだと思う。
EU離脱後の英国の選択肢も様々で、一つにNAFTA(北米貿易協定)がある。トランプ新大統領も英国のEU離脱を支持し、英国のNAFTAへの加盟の言及は興味深い。また、英国の英連邦への連携強化も極めて現実的で無理のない選択肢と考えられる。英連邦は加盟国53か国、人口23億人(世界の32%)で内、エリザベス女王が16か国が元首を務めており、カナダ、オーストラリア、ニュージランド、南ア等のエネルギー大国があり、成長著しいインド、パキスタン、マレーシア等のアジア諸国、更に18か国もの英連邦があるアフリカ諸国は、アジアを上回る経済成長をしている国々だけに、大いに期待が持てそうである。
国民投票から6か月が経過、離脱によって経済の混乱、為替の下落、株価の下落に失業者の増大が前政権や国際機関等から警告があったが、経済の混乱もなく、ポンドも株価も 投票直後の下落からあっという間に回復し、失業率も4.8%とドイツの4.2%とに次ぐ低いさとなっている。
今後は、メイ首相が3月末にEU向けに正式な離脱表明、向こう2年間に正式な離脱に向けての交渉が開始される。聡明な英国人です、きっと混乱を最小限にして、EUとの新たな 二国間貿易協定を結ぶものと期待しています。一方、英国のEU離脱を問題としてメデイアは騒いでいますが、彼らは、小鳥のさえずりの中、庭の花を愛でながら、紅茶とスコーンと言われる小麦粉で出来たお菓子を食しながら、「そのうち時間が解決するよ!」と悠然と構えているでしょう。「だって、我々は大英帝国のDNAを引き継いでいるんだよ!」とでも言っている様です。(了)
勉強会終了後参加者の集合写真 CIC8階談話室にて 1月6日 撮影者 篠崎正利