蔵前バイオ通信 第36号 2015年10月15日

*******************目次 ***************************
1.政策研究会(米谷)
2.Kシステム開発プロジェクト(清田)
3.藻研究会 バイオエネルギーは今-藻からの油脂生産現状-(廣谷)
4.熱エネルギー研究会(進藤)
5.竹林プロジェクト(篠崎)
6.バイオチクプロジェクト(渡辺)
7.新入会員の紹介
8.ホームページによる情報発信
9.世界のバイオマス情報
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1.政策研究会(米谷)
バイオマスのエネルギー利用を取り巻く環境は急激に変化している。我々は、木質バイオマスのエネルギー利用の促進及びその燃料となる未利用材などの集材・搬出の効率化を図るべく、技術的な面でサポートすることを目的として活動しているが、実現していくには、国や行政の方針や施策が大きく影響する。本研究会では、次々と出される方針や施策について、内容の検討を行い問題点の指摘を行っている。
今年改訂されたエネルギー基本法に基づく木質バイオマス発電の需給見通しの数値の妥当性、FIT開始後急増する発電事業に関する多くの問題、なかなか進まない未利用材の搬出、地産地消の小規模発電と熱利用の促進、等の課題は増える一方です。
直近では、熱利用の促進に関し、イギリスに滞在する会員から送られてくる最新のイギリスのRHI(Renewable Heat Incentive)状況の検討を行っています。

2.Kシステム開発プロジェクト(清田)
林業のプロに使ってもらっています。7月末に行った箱根湯河原の現場は今まで経験したことのない地形での作業になりました。600m程の谷から架線集材された木を引き継いで、Kシステムで2つの山を超えて集積土場まで180m程を搬出する作業です。100m程の斜行する谷越えではチェーンの張力を上げて殆ど架線集材になりました。山越えでは地曳きになるので、前回の経験を活かして、切り株を削ったり、立木とチェーンラインの間隔を離したりなどでスムーズな集材が出来るようになりました。山と山との小さな谷では、先端が山に突き刺さることがあり、先端の柔らかい枝葉の方から牽引する方がスムーズに集材できることが分かりました。このような複雑な地形でもKシステムが適応できることが分かり大きな収穫でした。

3.藻研究会 バイオエネルギーは今-藻からの油脂生産現状-(廣谷)
日本は原油を輸入しエネルギーなどに利用しています。原油は約30億年前に地球に出現したシアノバクテリアが炭酸ガスから太陽光を利用して造りました。そのシアノバクテリアから多少進歩した藻を活用して油を造る試みが現在、アメリカを中心として行われ、日本でも沢山の大学、企業が連携して試みています。
日本では太陽光は傾斜で照り、季節により不安定、夜間、雨天の時は利用できません。教科書によると藻活用によるBDF(Bio Diesel Fuel)製造は47-140t/ha/yです。太陽光利用理論効率限界は7%ですが、実際は3%が限界で、日本ではBDF34t/ha/y以下と推定されます。この条件下で、コスト低減を考える必要があります。現在、日本のコストは300-500円/Lと推定され、アメリカは100円/L以下になっています。
日本にはコストを下げる為には困った慣習、特殊な抵抗があるが、それを破って、更にコストを下げてほしい。

4.熱エネルギー研究会(進藤)
2015年度から2MW未満の木質バイオマス発電(未利用材燃料)について、FIT価格が40円/kWhとなり、地産地消費型の小規模発電が推進されている。当研究会においても、
地域の木材資源を利用した小規模発電(約100~500kWe程度)の調査・検討を行ってきた。小規模発電には、ガス化発電や有機ランキンサイクル(ORC)発電の適用が考えられるが、ガス化発電やORCでは海外技術が先行している。但し、ガス化では原料となるペレット品質、ORCでは熱源の確保などの課題がある。小規模では、一般に発電効率が低いので、燃料効率の向上には、排熱利用として地域に合った熱需要先の検討が必要となる。

5.竹林プロジェクト(篠崎)
9月3日(木)、茨城県つくば市のつくば研究支援センターで「竹炭シンポジウムin茨城」をNPO法人竹もりの里と共同で開催しました。約50人が参加して活発な討論がなされました。竹炭普及会を結成して啓蒙と普及の活動を継続する予定です。

6.バイオチクプロジェクト(渡辺)
竹パルプから製造される「竹ナノセルロース」を、植物由来の「バイオプラスチィック」と融合させる新素材の試作開発を進めています。これは『バイオチクナノ』と呼び、既存のプラスチィックを代替できる素材として利用可能で、「強度向上」と「炭酸ガス排出削減」に貢献できます。現在、複数社の企業の協力を得て、試作品の完成に取り組んでいます。

7.新入会員の紹介
新会員森本さんは、バイオマスの利用促進、具体的には小規模木質バイオマス 発電の導入に関心を持たれています。

8.ホームページによる情報発信
吉澤有介さんに要約して頂いた専門書と再生可能エネルギー関連情報です。
2015年10月2日「左利き」は天才?デイヴィッド・ウオルマン著 吉澤有介[社会・経済・政策]
2015年9月30日「ウィキペデア革命」ピエール・アスリーヌ他著  吉澤有介
2015年10月2日荒川英敏のロンドン便り 10月号[社会・経済・政策]
2015年09月19日荒川英敏のロンドン便り 9月号 9月号[社会・経済・政策]
2015年09日10日「私たちは今でも進化しているのか?」マーリーン・ズック著 吉澤有介[社会・経済・政策]
2015年08日26日「石と人間の歴史」蟹澤聡史著  吉澤有介[社会・経済・政策]
2015年08日18日「続・100年予測」ジョージ・フリードマン著 吉澤有介[社会・経済・政策]
2015年08日06日「わたしの森林研究」直江将司著 吉澤有介 [林業・農業]
2015年07日31日 「常識哲学」なだいなだ著  吉澤有介[社会・経済・政策]
2015年07日26日 「日本発掘」ここまでわかった日本の歴史 文化庁編2 吉澤有介 [社会・経済・政策] 2015年07月24日 スイス式「森のひとの育て方」浜田久美子 吉澤有介 [林業・農業]
2015年07月21日 [歴史はべき乗則で動く] マーク・ブキャナン著 吉澤有介「科学技術」

9.世界のバイオマス情報
1.進む藻関係基礎研究
ExxonMobilがとくに効率的な光合成を中心にミシガン州立大学と藻を使った先端燃料の実用化に必要な基礎科学の共同研究を開始した。また、遺伝子技術の重鎮John Craig Venter創立のSynthetic Genomicsと先進藻バイオ燃料の開発技術と、量産するための技術の経路の研究を続けている。http://www.kuramae-bioenergy.jp/column/?p=1865
ニューカースル大学とスコットランド海洋科学協会の共同研究では、人を指紋で識別するように藻をプロテオームで識別する技術の開発が進み、新サブグループや新種発見の可能性が広がる。http://www.kuramae-bioenergy.jp/column/?p=1864
2.環境改善への応用
東北大、筑波大の共同研究により、藻を原料としたらジェット燃料、自動車燃料の新しい精製技術が開発された。それと並行して、藻を利用して都市の下水の浄化技術の開発を行っている。http://www.kuramae-bioenergy.jp/column/?p=1862
3.木質バイオママスの生産と生態系の調和が必要
EUのバイオ燃料目標達成に必要な原料植物を域内で調達できることは分かったが、栽培を無計画に強化すると、人の健康と食糧の生産を脅かすことがある。
http://www.kuramae-bioenergy.jp/column/?p=1852

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