これまでに、滞在先のロンドン西部イーリング地区の周辺を散歩中に見かけた、珍しい風物をご紹介致します。
1)傾いている郵便ポスト
散歩で見かける、郵便ポストが写真の様に、ほとんどが傾いているのには驚きます。 きっと昔から傾いていたので、投函する人も、集配に来る郵便局員も、誰も気にせず周りに溶け込んでいる気がします。なにしろ、郵便制度がスタートしたのが、1500年代、ヘンリー八世の時代で、それから約140年後のチャールズ一世の時に、一般庶民向けに開放され、今日の郵便制度の原型が出来上がり、370年以上の歴史があるわけです。もちろん散歩で目にするポストは、その頃の物ではありませんが、それでも、ビクトリア時代の紋章入りのポストもあり、どれも100年以上は経っていると思われる、代物ばかりです。
ポスト本体は一見すると、頭部と投函口部、胴体、台座と4つのパーツに分かれている様で、鋳物製と思われ、重量がありそうで、長い間に土台が沈降して、徐々に傾いて来たのでしょうね。日本も郵便制度は、明治初期にイギリスから導入したせいか、円筒形のポストでしたが、最近は箱型に変わって風情が無くなりましたね。
ビクトリア女王紋章入りのポスト これはひどい傾きですね! 傾いていますが、ペンキ塗りたてです
2)ガス灯
散歩コースの三叉路で見れる唯一のガス灯です。良く見ると製造は1895年とあり、眺める角度と後ろの風景によって、趣がかわりますね。もちろん今でも点灯しています。
イギリスでもほとんど見かけないガス灯ですが、これは1895年製でした。
3)巨木の切り株に咲くチューリップ
公園の入り口付近にある、直径80cm近くの巨木の切り株に咲くチューリップです。
きっと、ポランテイアによって、丹精こめて育てられていると思いますが。眺めていると何となくユーモラスで、心も和みます。
巨木の切り株に咲く、色とりどりのチューリップ
4)往年の名テニスプレーヤー フレッド・ペリー (Fred Perry)居住の家
イギリス人なら誰もが知っている、往年の名テニスプレーヤーのペリーが居住していた家が、散歩コースに在りました。たまたま、この家の生垣の手入れをしていた、現住人のアイバさんとお会いし、ペリーについて話を伺いました。ペリーはイギリス北部の労働者階級の出身で、当時、テニスは上流階級のスポーツでした。ペリーは元々は卓球選手で、20歳の時、1929年の世界卓球選手権のシングルスで優勝しています。
この地に来た頃から、テニスに興味を示し、近くのテニスクラブに通うようになり、腕はめきめきと上達し、ウインブルドンのシングルスで1934年から1936年の三大会連続で優勝しています。それ以来、今日までイギリス人男子の優勝者は出ていません。ちなみに昨年は、イギリス人のアンデイ・マレーが惜しくも準優勝でした。
この家は、今ではEnglish Heritage (イギリス重要文化財)に指定され、外壁には、Fred Perry 1909~1995、Tennis Champion lived 1919~1935と書かれたエンブレムが掲げられています。その近くに、ペリーがテニスの練習に励んだ、ローンテニスクラブが、今でもそのままの佇まいで、多くのプレヤーがローンテニスを楽しんでいます。このローンテニスクラブの建物もEnglish Heritageに指定され、正面の外壁に、Fred PerryPlayed Here 1919~1935と書かれたエンブレムが掲げられています。
ペリーの住居と現住人のアイバさん English Heritageのエンブレム
ペリーがテニスの練習したテニスクラブ クラブハウスのEnglish Heritageのエンブレム
5)Sheep Gate (羊の門)
近くの公園のゲートがあまりにも不思議な構造なので、イギリス人に聞いて見たら、これはSheep Gate(羊の門)と呼ばれるもので、本来は羊牧場にあるゲートだが、時折、
普通の公園でも見られるとの事でした。大人が公園に入る時は、扉を押して開け、高さ1mの横木があるので一旦、中の溜りに留まり、扉を閉じてから公園の中に入構造になっています。子供は扉を押して開ければ、背が低いので横木の下をくぐって、そのまま、ストレートに公園に入ることが出来ます。つまり、羊は止まることなくストレートに入れるが、羊飼いは、中の溜りに留まり、羊の数えたり、コントロールできると言うものです。
扉を開け、高さ1mのバーは子供(羊)は通れるが、大人(羊飼い)は溜りに留まり扉を閉めないと中に入れない。
6)教会がマンションに変身
散歩コースに幾つかの教会がありますが、その内の一つの教会が、一年ほど前から工事をしていたので、改修工事をしていると思っていたら、何と20戸のマンションに変身し、静かに売りだされているのには驚きました。イーリング駅前の不動産屋さんに尋ねたら、あの教会は古く、改修費の目途が立たず、売りに出したら、大手不動産会社が購入し改修工事を済ませ、マンションに変身させたと言うものでした。この時、当局からの改修条件は教会の外観をそっくり維持することでした。結局この教会は直ぐ近くに、小振りの教会を新築していました。ちなみに、マンションは既に完売しているとのことでした。(了)
1620年建立の教会だが、外観はそのままでマンションに変身!