今年の残暑は格別のようですね。同じ都内でも私の住む練馬区は、いつも都心より2℃は高くて、内陸の熊谷あたりといい勝負をしています。その猛暑の中で毎日のようにテニスをしているのですから、アタマはすっかり茹で上がってもう何も考えられません。そろそろ一度冷やさなければと、久しぶりに奥日光のハイキングに出かけました。
日光湯元から刈込湖・切込湖を巡って光徳牧場に出る4~5時間のコースで、ここは50数年前に学習院山岳部OBの友人と歩いたことがありました。いつも愛用のT観光のバスツアーにこのコースがあったので、これ幸いと申し込みましましたが、かっての状況は記憶から全く抜け落ちています。高原の初秋にはすこし早いけれど、もうそろそろ涼しいだろうと見込んでいたのに、この日の湯元の空は10時30分からカンカン照り、これでは都内とあまり変わりません。なにしろこの夏最高気温の日だったのです。
湯元温泉街のはずれの薬師沼の源泉から小峠までの登りで、もう一汗も二汗もかいてしまいました。こんなはずではなかったのにと悔やんでも、もう後戻りはできません。それでもタケカンバの美しい1672mの小峠を越えて、やがて深い針葉樹の間から刈込湖が見えてくると、ようやく汗は引いて人心地がついてきました。さすがにここは別天地、エメラルドの湖面は静まりかえって、時折カワウらしい野鳥が遊んでいるだけです。
刈込湖 切込湖
さらに進むと狭い水路の先が切込湖です。いずれもすぐ南に聳える三岳1944mの噴火による溶岩の堰止湖で、流れ出る川がありません。それでもカワウが来ているのは、サカナがいるのでしょうか。きっと人がヒメマスなどを持ち込んだのでしょう。
このあたりはモミやコメツガの木々が鬱蒼として涼しく、やはり来てよかったと快適なハイキングに、前後して歩くツアーのオバサンたちもご機嫌です。その先にひろびろとした草地が展開していました。涸沼です。いかにもクマやシカの遊んでいそうな草地ですが、ひとつも花がありません。古いガイドブックには、ヤナギランの一面に咲く花園とありましたが、これは一体どうしたことでしょう。あとで光徳牧場で聞いたところ、やはり増えすぎたシカにすっかりやられたとのことでした。せっかくの美しい草原なのにまことに残念なことです。
涸沼 山王峠から男体山
さてここからが山王峠1739mへの最後の急登です。高だか200mほどの登りですが、やはりこれは厳しい。フウフウいいながら漸く登りきると、木々の間から大きな男体山が迎えてくれました。ここからはミズナラやカラマツの林をもうひたすら下るだけです。ツアーのオバサンたちにどんどん抜かれて 最終組でゴールイン。お目当ての光徳牧場アイスクリームを舐めながら15時50分、ようやくバスの客となりました。ひと夏のハイキングとしてはすこし厳しいコースだったでしょうか。「了」