西武線小さな山旅(その6)
今回はハイキングよりもっと軽いウオーキングです。
先月、林業研の皆さんとKシステムの実証実験を行った、駿河台大学の森に続く加治
丘陵の一般コースをご紹介しましょう。
西武池袋線の仏子(ぶし)駅の飯能寄り改札口を出て、住宅の間をすこし歩いて車
道の信号を渡ると、そこが武蔵野音楽大学の入り口です。
近道はちょっとわかり難いのですが、電車を降りた音大の女子学生のあとをついて行
けば間違いありません。
武蔵野音楽大学は、古くから
と楽器博物館だけ残して、主力をこの仏子の森に移しました。
確かにここならどんなに音量をあげても安心です。しかも自然豊かな深い森の中です
から、音楽的環境としては最高でしょう。
10数年ぶりのことで記憶は薄れていましたが、案内板に従って音大の塀沿いに車
道をゆっくりと登ってゆくと正門があり、そこからは林の間の静かな舗装道路に
なります。キャンパスの最奥にあるゼミなーハウス横を過ぎると、もうそこは中
神方面への峠の頂上で、南側の左手一体が突然新興住宅団地になっているのに驚
かされます。
いくら低山とはいえこんなに山の尾根まで開発されてしまったのですね。
この峠を挟んで北側は鬱蒼とした自然林で、その尾根伝いの境界に続く歩道を東
に行けば、
地元の人らしい高齢者たちが、こんにちわと挨拶しながら次々に通り抜けてゆき
ます。峠まで戻って再び音大の敷地に沿って右回りのコースに入りました。
ここからはどちらをみてもヒノキやコナラの森で、地面にはびっしりとヤブが茂
っています。
道はほぼ平らですが尾根は意外に痩せていて、左右は覗きこんでも人跡未踏とも
いえるほどの深い谷です。
ここが仏子駅から歩いて僅か30分ほどの低山とはとても思えません。
暗い森の続く地形はかなり複雑で、展望もないので次第に方向感覚も怪しくなっ
てきます。
ただ全コース簡易舗装してあるので、高齢者でもつまずいたりする心配はありま
せん。それで物足りない人には、すぐ横に平行して古い山道が通っています。
そちらを歩けば気分は満点といえるでしょう。
この日は晴れてはいましたが、気温10℃前後の冷たい空気の中をたくさんの高齢
者が元気に歩いていました。コースはこんな形です。
やがてすこし森が開けて、このコースの最高点「桜山」(189m)に着きまし
た。それまで全く人工物のなかった自然の森に、突然コンクリートの立派な
展望台が現れたのです。これは前に来た時にはなかったのでびっくりです。
しかしここからの展望はさすがに見事なものでした。
所沢のはるか東には新宿副都心、その左には建設中のスカイツリーらしきタワ
ーも霞んでいます。
西のかなたには丹沢から高尾山、間近かには奥多摩の山々が続いていました。
北側に移るとそこには
ここは
有間山から武甲山や二子山、高山不動奥の院などの大パノラマが展開していまし
た。隣にいた常連らしい人に、「ここはいいところですね」と話しかけると、そ
の方は定年後に
ことでした。
飯能の体育館のあたりからも登れるのだそうです。
この加治丘陵にはいくつものバリエーションルートがあるようでした。
コースに戻ってさらに北に向かうと小さな神社があり、そのあたりからようや
く広葉樹の明るい林も現れてきました。
しかし紅葉する木々はほとんど見当たりません。
せっかくの近郊樹林帯ですから、栄養不足のヒノキに替えてモミジなどを育てた
らどんなに美しいコースになることかと勝手なことを考えました。
(右下は音大構内です)
いよいよ歩道も終わりに近いところで、見覚えのある高さ5mほどもある裸婦像
が見えてきました。
どうやらここにFRPの工房があってその作品のようですが、その巨大なお尻はや
はりいささか場違いの感じです。
FRPの製作ではエポキシ樹脂の匂いが強いので、人里離れたこのような山中でやっ
ているのでしょう。
ここからは10分ほどでもう音大の入り口に戻ります。
加治丘陵を南北一周してだいたい2時間、コースの全長は7~8kmといったところ
でしょうか。
もとは地元の人しか知らない隠れた名コースでしたが、10年ほど前に雑誌の「山と
渓谷」に小さく紹介されたことから、一躍多くの人たちが訪れるようになりました。
皆さんの軽い山歩きにこんなところもいかがでしょうか。
「了」