西武線小さな山旅(その5)
9月26日、飯能市の第5回森林文化講演会は、森林総研の林知行先生の、「いまさら人に聞けない
木のはなし」というテーマで大盛況でした。
この講演会もすっかり定着したようです。
正午に閉会して外に出ると空は抜けるような快晴でした。
せっかくの機会を逃す手はありません。K-BETSの清田さんをお誘いして、飯能市民一番のお勧め
コースの、天覧山から高麗峠を越えて巾着田へのハイキングに出かけました。
ちょうど巾着田では曼珠沙華が満開と聞いていたからです。
吉川さんも午後に直行してこのコースで合流することになりました。
天覧山下でバスを下りるとすぐに飯能市郷土博物館があります。
ここには古くからの林業の様子が再現されて、なかなか見ごたえがあるのですが、
今回は割愛して直接天覧山に向かうことにしました。
落ち着いた白壁の古刹、能仁寺の右手をまわって山道に入ると、やがて山腹に5代
将軍綱吉の生母、桂昌院が奉じたといわれる十六菩薩があり、まわりは広葉樹に針
葉樹が混じる豊かな自然林になっています。
このあたりから岩の出た急坂をすこし上がると、そこがもう標高195mの明るい頂上
でした。
バス停から30分くらいでしょうか。
ここからは飯能市街はもとより、駿大の森や奥多摩の名峰大岳山まで一望する、素晴らしい眺め
を心ゆくまで楽しむことができました。
天覧山頂上 奥多摩の山々
樹林の中の緩やかな小路をしばらく下ってゆくと、突然立派な国道299線に出ます。
西武秩父線のガードをくぐり、向側にわたって高麗峠道に入りました。
吉川さんはすでに峠に先着しているとのことです。樹々の間からは下の谷合いに静かな池も見え
て、深山の気配が漂ってきます。
よく踏まれた心地よい山道に沿ってヒノキの老樹が続いているので、ここはきっと古くから人々の
行き交う、大切な峠道だったのでしょう。
広葉樹の木漏れ日の中をのんびり歩いてゆくと、お休みのベンチに吉川さんの笑顔がありました。
そこが30年前の私の記憶にあった高麗峠(標高177m)でした。
天覧山からここまで約1時間、豊かな広葉樹に囲まれた奥武蔵自然歩道のハイライトです。
古い峠道 3人揃いました
巾着田から逆コースでくる人たちと、「こんにちわ」と挨拶を交わしながら
下ってゆくとやがて高麗川に出ました。
ここに巾着田への入場券200円の関所があります。
数年前から有料になったのですが、これから現れる曼珠沙華の大群落を見れば、皆さんも納得することで
しょう。高麗川には嬉しいことに近道になる真新しい丸木橋がかけられていました。
とにかくもうたいへんな人出です。その人たちをかきわけるようにして対岸に渡ると、
そこは一面の赤い毛氈を敷いたような満開の曼珠沙華の饗宴が展開していました。
満開の曼珠沙華
蛇行して流れる高麗川の河畔の疎林を埋め尽くして自生している100万本の曼珠沙華
は、これだけ咲き揃っているとそれはそれは見事なものです。
一本一本よく見ると、赤い花被片は6枚で反り返り、雄蕊と雌蕊が花の外に長く突き出て実に不思議
な形をしています。
また根にあたる鱗茎にはアルカロイドという毒があるそうです。ちょうどお彼岸の頃に咲くので、ヒガン
バナと名付けられました。そのせいかよく祖先の霊の花といわれています。
そういえば今日の森林文化講演会で林先生が、大気中のCO2の炭素原子には、火葬によ
って放出された祖先の炭素が含まれているという話をされました。
人体を構成する元素の18%が炭素だそうです。
それをアボガドロ数で計算すると、一人の体内から750*602*10の21乗の炭素原子が出ます。
とすればそのうちのいくつかが、今も私たちのまわりに漂っていることになるのです。
ご先祖さまがいつも見ているよという、親たちのお話は科学的だったのですね。
真っ赤な群落から外に出ると、一転して見渡す限りの爽やかなコスモス畠が拡がっ
ていました。この対称の妙にはだれもが驚くことでしょう。
高い秋空に見事に映えています。
日和田山も近くです
西武秩父線
途中の里山の民家の庭先では、今年の猛暑がまるでなかったかのように、さまざまな秋の草花が咲き誇っていました。
このコースは四季を通じて楽しく歩くことができます。
皆さんもどうぞお気軽にお出かけになってはいかがでしょうか。
「了」