イギリスの初夏はスポーツデイ(運動会)のシーズン 2012年7月1日 荒川英敏

  ロンドン便り その14

 イギリスの初夏はスポーツデイ(運動会)のシーズンです。この時期は6月前半の雨をしっかり吸い込み、よく刈り込まれ、目にしみる緑の芝生のフィールドで子供たちが思いっきり飛び跳ねることが出来、またこの時期は雨の降る確率が低く晴れた日が多いと言われており、スポーツデイには最適なシーズンとなります。

 一昨日、金曜日は二人の孫が通う小学校のスポーツデイだったので娘夫婦と共に応援に行って来ました。場所は小学校ではなく、すぐ近くのクリケット(イギリスや大英帝国時代に支配された国々で、今でも盛んに行われている野球の元祖と言われている球技です)グランドで行われました。

 スポーツデイは日本の運動会を想像しますが、紅白戦やクラス対抗はなく全て個人競技です。種目は50m徒競走、50mハードル、幅跳び、やり投げ(実際はプラスチック製の槍)、砲丸投げ(実際は砂袋)、1分間の左右横跳躍回数の6種目を低学年が午前中に、高学年が午後に全ての種目をこなします。開会式は教頭先生が簡単な競技の説明し、あとは子供たちを鼓舞するだけでした。 前述の様に全て個人競技であり楽しみながらの体力テストの感がします。スポーツデイの実施は学校側の基本計画に沿って、先生達と多くの父兄のボランテイアによってその準備、運営、後片付けが行われています。

 当日はあいにく晴れ、曇り、シャワー(短時間の雨)と、天気が目まぐるしく変わりましたが、生徒も父兄もまったく動ぜす、とにかく楽しむことだけを主眼とし、ポップミュージックのGMが流れるなか、日本の運動会の様なデイスプリン(規律)もなく、”これで本当に全員6種目こなせるのかな”と思っていましたが、各競技の成績は時々刻々に先生と父兄によって集められデータセンターのコンピューターで集計され、ちゃんと時間通りに終わっていました。

 成績の良かった子供たちや、振るわなかった子供たちに対しても先生や父兄も子供たちの名前を呼びながらWell done !(良くやった)、 Excellent !(素晴らしかった)等の褒め言葉をふんだんに使いながらコミュニケーションを取っていたのが印象的でした。

 昼食の時は、私達の子供の頃の運動会の楽しみの一つが母親が準備した重箱に詰まった手づくり料理を食べることであった様に、こちらも母親手づくりのサンドイッチ、チキンの唐揚げ、パイやりんごにチョコレートやポテトチップスを応援の家族と一緒に腹一杯食べて、低学年は午前中の競技で失ったエネルギーを補い、高学年は午後の競技に備える様はいずこも同じ感がしました。この後、低学年で親の参加ができなかった子供たちは担任に引率され学校に戻り、親が引取りにくるまで滞在し、高学年の兄弟がいる子供たちは  午後の競技見学したりと、親が選択している様でした。

 イギリスの一般的な公立の小学校は小ぶりな中庭が遊び時間用にありますが、日本の小学校の様な大きな校庭はありません。従って、この様なスポーツデイのイベントや体育の時間には、近隣に沢山ある公共の手入れの行き届いた公園の芝生のフィールドやサッカー場やクリケットグランドが使用され、公共施設が有効活用されている様です。

 今回のスポーツデイの観戦で感じたことは、転んでも怪我をしない見事な公共施設の芝生のフィールドで、ほとんど無いに等しい規律の中、服装も自由で本当に楽しんでいるようでした。このことは何気なくすぐそばにある公共施設のインフラのすごさと、学校側と父兄が一緒になって楽しみながらスポーツデイを実施する様はイギリスの教育制度の一端が垣間見え、日本の教育制度での運動会のあり方との比較は興味が尽きません。

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         スポーツデイの会場となったクリケットグランド

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   座って教頭先生の話を聞く低学年生         小学3年生達

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  低学年の砲丸投げ            高学年の50mハードル

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     芝生に座っての高学年の閉会式

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