日和田山(ひわださん)305m 2010.4.14  吉澤有介

西武線の小さな山旅シリーズ(2)

今年の気象の異常さはただ事ではないようです。しかしその中でも木々は着
実に芽吹いてきました。
僅かの晴れ間を捉えて、高麗の日和田山を歩いてきたのでその様子をお知ら
せしましょう。
ここは外武蔵丘陵の最南端にあたり、日高市のシンボルとし
て多くの人たちに親しまれている小さな山です。

西武秩父線で飯能から二つ目の駅の高麗(こま)は、古代の帰化人が開いた
とされる高麗郷の玄関口で、巾着田の彼岸花が有名ですから、皆さんも良く
ご存じのことでしょう。
その高麗駅のホームから北の正面にある小高い山が日和田山です。

hiwada1_edited.JPGしかしここは小さい山とはいいながら、実
はこのあたりで一番の自然林の豊かな、本当に素晴らしい山なのです。
一般のガイドブックでは、ここから先の尾根伝いのハイキングコースの一部としか書かれていませんが、どうしてどうしてこの山だけで一日いても飽きない、本格的な山歩きが味わえるバリエーションルートがたくさんあることは、あまり知られていません。
私はシーズンごとに、また大きな山行きの前のトレーニングにここに通うことにしています。

 高麗駅の飯能寄りの踏切を渡って直進すると、そこには江戸時代にキリシ
タン禁制のお触れを書いた高札が、そのまま保存されていました。ここから
右折して里山の風景を楽しみながら鹿台橋で入間川を渡ります。
一般ルートはそのまま高麗神社に向かう道から山道に入りますが、その山道
は最近あまりにも整備されて、まるで市内の公園のようになってしまいまし
た。そのため私は専ら入間川沿いの日向の集落からのルートにしています。

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入間川はこの日まだ桜がきれいでしたが、嬉しいことに対岸の崖の梢にカワ
セミがいました。
双眼鏡でしばらく楽しんだあと、名残を惜しみながら山道に入りました。
ここからはチャートの小路になりますが、途中から右折すると深い自然林に包
まれます。
山道はふかふかして柔らかく、しだいに高度をあげてゆくと見晴らしの丘で一
般ルートに合流し、眼下に麓の高麗の里が広がります。
そこから快い岩登りになるところが楽しいのですね。
堅い岩肌の感触を確かめながら、一気に登りきって岩峰の上に出ると、そこか
らの眺めは見事で、巾着田の菜の花畑に、新武蔵丘ゴルフコースが手に取るよ
うに見えました。

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 ここには金毘羅神社が祭られています。一般ルートでは神社の右手から尾
根道を行きますが、私のおすすめは左手から行く自然林の道です。あたり一
帯は一斉に芽吹いた春の香りに満ち溢れていました。山桜にミツバツツジが
鮮やかです。この道はそのまま尾根のハイキングコースに続いていますが、
右上にひと登りすると305mの日和田山頂上に着きます。
登り始めて約1時間あまり、はじめ晴れていた空もすこし雲が出てきまし
た。それでも南の方はるかに新宿の高層ビル群が見えます。
双眼鏡で覗いてみると、何と建設中のスカイツリーもありました。
写真には写りませんでしたが、これは思わぬ収穫です。

 頂上に他の登山者は一人だけ、彼女に双眼鏡を貸してあげたら、わぁす
ごいと歓声をあげました。
こんな素晴らしい山なのに本当に静かで、期待した以上の贅沢な気分を満喫
して帰途につきました。

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下りはいつものチャートの小路を目指します。
ミツバツツジがだんだん多くなって目を楽しませてくれました。
あたりは全く深山の気配で、ここが里山の一角だとはとても思えません。
やがて谷筋のスギ林に下りますが、ここで日和田山のハイライトのチャート
の大岩に着きます。突然現れた30mほどのこの大岩は、もっとも都心に近い
絶好の岩登りのゲレンデとして、いつも多くの愛好者に親しまれているので
す。この日も10人ほどのグループがやっていました。
しかもその半数は若い女性だったのは驚きです。

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こちらも昔のクライマーですから、見ていてつい自分も登っている気分に
なっていますなおこの山は深いわりにごく小さいので、どのルートにいて
も、大きな声をあげれば良く聞こえます。
仮に何かあってもこのグループに声が届くので、だれでも安心して歩ける
でしょう。
しばらく見物したあと、皆さんどうぞ気をつけてと声をかけて、そのまま
先ほどの登り口に戻って帰ってきました。下りはゆっくり歩いたのに40分
くらいでした。

 日和田山は初めに駅から見たように、そのほとんどが広葉樹の自然林
です。とくにこの日に歩いた西側のバリエーションルートは豊かな自然に
満ちています。
ごく小さな山ですが、半日の山歩きとして皆さんもお出かけになってみて
はいかがでしょうか。
「了」

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